第55話 春はあげぽよ。シャンシャン重光山岸

「春はあげぽよ。シャンシャン重光山岸」


『枕草子初めて読んだ人みたいな感想やめろ』


「枕草子初見って大体こんな感じで聞こえないかマイワイフ」


『マイワイフの部分も聞き間違えならどれほどよかったんだろうな』


いつになく穏やかな空気に包まれ、俺たち兄弟の会話もいつも通りの微笑ましい、穏やかな空気に包まれている。


まさしく、春はあげぽよ。シャンシャン重光山岸である。


「ほら、ナケネもあんなに穏やかそうな顔して…」


俺はベッドの隣にいる生首の猫畜生に声をかける。

プシャッ…


その瞬間、ナケネは血反吐を吐いた。


「平和だなぁ」


『いや、思い切りナケネが血反吐吐いたんだが!?なんで顔もそらさず素で言えんの!?』


妹はこう言っているが、仕方ない。春。それは挑戦する季節。学生はその独特陽気に誘われて、いろいろなことを挑戦したくなる年頃。


それはともかく俺は春の陽気のせいで頭が必要以上にとろけている。何もかもゆったり聞き流してしまうことはあるあるだろう?


『これなんかの病気か…?医者のところへ………』


「いやいや、ナケネはそもそも生物形ではないんだから、医者に連れてっても無駄無駄」


『ちくしょう…ここだけ正論っぽいこと言いやがって…おい製作者に聞きにいくぞ働け』


なんか新婚の嫁の愚痴みたいでほっこり春っぽいものだ。だが、愛する妹の頼みでも働くのだけはマジ勘弁。


「断る。なぜなら昨日もモンスター討伐をしたから無理」


『モンスターどもと麻雀しようとしてたのはどこのどいつだ?おおん?』


「だってあいつらモンスターのくせにフランクでいいやつなんだよ…それを討伐するなんて…できないっ…!(乙女チック)」


キュルルンキュルルンキュルルーン!作者が投稿めちゃくそサボっている(内部事情)間に春になったり、無駄に女性っぽくなったあざと仕草を鏡の前で披露して1人でニヤニヤ笑っていると、妹にキモいって言われた…


もうマヂムリ…リスカしよ…


「うるせぇ。もう体乗っ取ったからさっさといくぞゴミカス兄貴」


『ああああああ!シュゴイノォォォォ!私が私じゃなくなるぅぅぅ!!』


「キモ…」


『ああああん!罵倒気もぢいいいいいい!』


最近は体を入れ替わる際にこんなことを言うと妹にキモがられるので、プライドを捨てられる方はおススメです!


          ♣︎


いつぞやの百合学園は、桜で彩られ、学内も学外も学園も全てがピンク色に染まっている。


「あ、イアちゃん。今日昼、一緒にどう?」


『ぜひ、昼だけでなく夜もお願いしま…』


「断る!!」


最近の雪は、学園の女の子に恐怖心を感じているようである。何故に、そんなに怯えているのか、兄である俺でも知ることはない。


「おぉい!クソ生徒会長出てこいや!オラァァァァ!」


「3メートル先の野生の女の子の怒号を聞きつけただ今参上!どうも汚職と正義のヒーロー生徒会長ことクラウスです!」


雪が急に咆哮を上げたと思ったら、クラウス生徒会長がヌルッと心なしか気持ち悪い効果音をつけながらやってきた。


ヌルッと現れたことになんの反応もなく、雪はそのままの口調で話し始める。


「あんたんとこの研究者に、ちょっと聞きたいことがある。ちなみに拒否権はない。デートにも行かない」


『じゃあ俺が交代して行ってくる』


「黙れ死ね」


わあ、兄に対しては語彙力が死んでる…興奮しちゃうね!


「はいはーい、マイン改・天・ファイナル・ソードさんですね。ご案内しますよ〜」


何やら今日は生徒会長もご機嫌である。春だからか…これなら、ご機嫌なマイン・改・天・ファイナル・ソードさんを見られるかもしれない。


「おい誰だそのクソゲーをリメイクしたような名前のやつは」


『妹、ファイナ○ソードを愚弄するとは許さんぞ』


「お前はファイナ○ソードのなんなんだよ…」


そんなこんなで、生徒会長の案内のもと、俺たちが連れてこられたのは、いつもの地下室…ではなく…


「な…マインさんが…外にいるだと…!?」


驚くべきことに、外で!紅茶を!飲みながらゆったりと桜を眺めていた。


「僕を引きこもりかなんかだと思ってたの?もしかして…」


青髪のロリっぽい顔を膨らませて睨む。可愛い。結婚しよ…


「はい!自分の研究のために平気でコキ使って、自分は一切外出しないクソ上司退廃ニート生活を勤しんでるかと思ってました!」


「ねぇ生徒会長。僕ってもっと出かけた方がいいかな…」


日々兄貴で磨かれている罵倒のスキルは、こういうところにも遺憾なく発揮される。


さて、無駄話はこれくらいにして…


「というわけで、ナケネがなぜか宿屋で血反吐を吐いたんだが…これってなんかの病気?」


今までポーチに隠していた生首猫をマインの前に差し出す。


「……うぅん?いや、ただの花粉症だね…ほら、血霊だから、体液全てが血なんだ。だから、花粉症で出る鼻水も…血になる」


…………………


『「え、ええ…?」』


          ♣︎


あまりにも早すぎる診察。癌だと思っていたらただの花粉症と診断されたような気分で、俺たちは帰路についていた。


「ハァ、ほんと、お前は無駄足引っ張らせやがって…」


『まぁまぁ、こんな時は、枕草子でも唱えろってほい、春はあけぼの〜』


「春はあげぽよ。シャンシャン重光山岸」


妹は桜の木を見ながら、感慨深く呟いた。


『え、何言ってんの妹よ………』


「しばくぞ。ボケ」



♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎


ついに、短編みたいな感じでしか投稿できなくってしまった…


というのも、最近、新しく連載を始めようと思っている小説の影響がありまして、ここまで投稿が遅くなってしまいました。すいません。


そして、これからも、気が向いた時に投稿する短編のような感じになってしまうことをお許しください。


また、新しく連載を開始した、『不明世界につながる異世界ゲート』。異世界ゲートを作り出した少女と、ストーカーの男と、謎の異世界少女のコメディ+シリアス物語です。ぜひこちらもよろしくお願いします!


以上、謝罪と宣伝でした。

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愛しの妹と異世界で(精神的に)合体したようです!ふざけ倒す兄と、怒りすぎている妹との異世界転生 金鶏 @22360679NANA

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