第52話 ニートゴーストが1匹
専用武器を手に入れた俺は、もう無双状態。強いゴーストとか関係ない《オゲロゲロビーム》で一掃して、3日間の睡眠不足を振り切るようにゴーストを焼き払っていった。
どうやら、俺は寝ないと真面目になるらしい。
『もう寝ないようにエナドリ買い占めておこうかな…』
「俺はエイルの金切声が聞こえなかったらブートジョロキア(世界1辛い食べ物)を盛られた数秒のうちに寝れるぞ」
『宿屋でやってやるよ!内臓に穴が空くくらい食わせてやるからなァァ!』
実際コウヤが家に来た際に実践したら、まるで死んだみたいに寝れたんだよなぁ…
♣︎回想♣︎
「おじゃましまーす!」
「イギャァアァァァァアァァアァァアァァァアッ!!?アヒイイィァァァァァァァァ!ウビャァァァァァァァァァァァァア!ンキィィィィィィィィィイ!」
ブートジョロキアを食って、コウヤを迎えに玄関まで行こうと、俺は奇声を発して階段を転げ落ちた。
「え…えぇ…な、何事!?」
「アビャァァァァァァァァァアッ!!!うっ……」
そこで俺の意識は同時に目指していたNO睡眠ギネスをここで破れてしまった。
「ゆ、悠ーーーーーーーーーッ!」
……………………………………………………
「ん…なんだこれ?」
コウヤが目を向けたのは、ダイニングに置かれたパイに目を向けて、ゴクリと喉を鳴らして頬張った。
「うっ…グッ…」
それは、俺が作ったデナトニウム(世界1苦い物質)入りのパイだった。
ドサッ…
「コ、…コウヤァァァァァァァァァァァァッ!!!!?」
こうして鷺堂家の玄関に、死体が2体。帰ってきた雪に踏み潰されたとさ。
♣︎回想終了♣︎
「ウハハハハハ!ウハハハ!」
あんなに苦労させられた、今まで逃げていたゴーストが攻略法を見つけただけでこんな楽に討伐できるとは…
「さてと…マインの方に行くか…」
ひとしきり暴れ回った俺は、【察知】と、【会心の一撃】で急いでマインへと向かった。
♣︎
「顎ォォッ!」
おう、思い切り顎にクリティカルヒットしたぜ。けつが割れるかと思った…(?)
「え?何?誰か来てたの?」
壁とキスした形でマインと対峙して、その無様極まりない様子でマインは一歩引いていた。
ちなみに、俺が今までチューしたのは、そこら辺の草と、雪と(もちろん妄想)、この壁である。現在3又中。
『妄想でも不快だから今すぐ死んでくれ』
勝手に心を読まれた挙句、いつも通り辛辣な1言。興奮するじゃねぇか…
「ええと…どうやら、3階に沸いていたゴーストは全て殲滅したらしい。よって、これから4階で元凶に会いに行くよ」
いつのまにか、マインの後ろにいたエイルと、クラウスもうんと頷き、一緒に行動していたエイルとちょっとだけ話し合って、俺は4階に繰り出そうとしていた。
♣︎
「……4階には、ゴーストいないな…」
マインは、後ろの大量のキメラを従え、俺たちの周りを囲うように配置している。
『あの、これ。見た目がキモすぎるんですけど…』
「言うんじゃない。たしかにキメラはキモい。でも、この中に美少女が3人いるんだから、それでいいじゃないか」
「誰と会話してるか知らないけど、僕は男なんだけど?」
うるせぇ女子校に放り投げるぞ。
「一応、ここには僕の研究室があるから、もっとキメラ取ってこようか?」
………あの…
「キメラって、この学院内に何体くらいいるんですかね?」
「うーん…軽くこの4階埋め尽くすくらいのキメラは手懐けてあるけど…呼び出すには時間がかかるよ?」
どうせならこんなキモいキメラじゃなくて、もっとかっこいいか可愛い見た目が良かった…まぁ、こいつの感性は死んでるからどうせ全員キモいけど…
「それはいいや。じゃあ、ここにいると思われる元凶を探しに行こうぜ」
「うん」「ああ」『おう』
15分後…
「……明らかに、ここだよな…」
何故15分もかかったのかわからないが、俺たちの前には明らかに禍々しい妖気を放つ扉があった…
俺はビビって、雪に変わり、雪はなんの躊躇いもなく、その妖気あふれる扉を開けた。
「ッ———!!」
え?何ここは。
そこは、ゴーストが住んでいるとは思えないような、快適空間だった…
冷房完備に、ゲーム盤。ベッド。炭酸飲料水。ニートにとって夢のような空間が広がっていた……そして、今急いで隠れたゴースト。あれが多分元凶だろう…
「そ、そういえば…昔いや、結構新しい時代に…外に歩きたくなくて、学院内に泊まって、その間病死したっていう人がいたって…聞いたんだけど…この4階で…」
え?もしかして…
と思ったら、崩れてもいない普通の薄い女の子が俺たちの前に出てきた…
〈あっし…ここから、出たくないでござる…だから、誰にも見つからないように…4階を消したんでござる…んで、偵察兵のゴーストが勝手に生み出しまくったっす…〉
………
つまり、俺たちはこの人見知りニートにいっぱい食わされていたと?
………
〈それでなんか…気づいたら、《ゴーストキング種》になっていたんですござる…〉
「ゴースト化する際は、その人の思いで引っ張られるらしいし…もしかして、ニートの思いが強すぎて…?」
震え声のクラウス。その質問に、ゴーストキングは自信満々に…
〈はい、そうっす!〉
「テメコラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!お前マジで許さねぇからなあぁぁぁぁぁぁ!!お前、3日は寝れると思うなよ!?ぁぁぁん!?」
やべ…雪がヤンキー化した…
♣︎
「オラァァァァ!グラウンド3日間回り続けろオラァァァァ!サボったら永久に走らせてやるかなぁぁぁぁぁ!」
…なんだろう…同じニートとして、雪にこれ以上ないくらいのスパルタされてるあのゴーストさんをみると胸が痛む…
〈ヒアィィィィィィィィィィ!〉
「たるんでるぞコラァァァァァァァァァァァ!4日間追加されてぇかぁ!?」
〈ヒィぃァァァァァァァァァァァァァァっ!?ん…あ…〉
あ………
ゴーストキングさんが、あまりのニート生活からのスパルタに耐えきれず、天に召された。
こうして、日にちを跨いで問題を起こし続けたゴーストは、最後は体育会系に負けて、ひっそりと成仏しましたとさ…
ちゃんちゃん!
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