第13話 ユニークスキル 周回用スキル

【スキル《会心の一撃》を獲得しました】


俺こと鷺堂悠は、森の中、木に押しつぶされた状態で絶命しているクマさんの死体を見ながら、1息ついたところに、妙な声が流れ込んできた。


「な、なんだ…脳内に直接…」


生きてきて17年、雪も合わせれば32年、これほど生きていれば脳内に直接語りかけることで全く驚いたりはしないが、厨二病な俺は、いかにも初見といった風に驚いた。


『その発言の方がよっぽど厨二病だが』


はいそこ、うるさい。


「てか、これ、俺の周回用スキルの効果じゃね?」


周回用スキル 名称をつけるとするなら……めんどくさいからそのままでいいや。


んで…この【会心の一撃】って…どうやったら使えんだ?


「会心の一撃ー」


『なんだそのやる気のない掛け声。もっと腰入れろ』


「俺、体育会系って苦手なんだよね」


『私も苦手。だから真面目にやれ』


前文と後文が脈絡ないように感じるんですがねぇ…


「あ、終わったんですか?2時間くらい続いていましたから、様子を見に戻ってみましたよ…」


会心の一撃ー!と誰もいない中叫び周り、結局なんの成果も得られなかったことは置いておいて、エイルが様子を見に来てくれた。


「てっきり、死んだのかと…というより、なにをしているんですか?」


俺は泣きながら、エイルに駆け寄った。


「うぇぇぇぇぇぇぇぇん!雪にいじめられたよー!助けてーー!」


俺は、汗まみれの状態で、エイルの豊満な胸の中に飛び込んだ。


「ちょ、汗まみれで、気持ち悪いんですけど…」


エイルは泣いている俺を無碍に引き剥がさないのか、文句だけ言ってされるがまま。


いやぁ、天国です…


まるで裏山のエロ本見つけたような気分。


『都会育ちの私たちにとって裏山なんて縁もゆかりもないと思うんだがな』


もう数分この感触を楽しんでいようと、手を回して…


「すまねぇ。もう大丈夫」


無理矢理、人格主を交代させられた雪によって、阻止された。


『オイコラァァァァァァ!もうちょっと、もうちょっとだけサービスさせてくれてもいいだろうがぁぁぁぁぁ!』


精神世界に無理矢理引きづり込まれた俺は絶叫。


何秒かして、雪は無言で変わった。


『はい、どうした?続きをやれよ』


ちくしょう。こいつ…もう抱きつき離しちまったから、出来ねぇ…


“普通なら“もう1度おっぱいに顔を埋めるなど、できないはずだ。


『おいおい、どうしたぁ?まさかできねぇわけはねぇよなぁ?』


ここぞと煽る雪に俺は笑みを浮かべる。


「舐めるなよ。俺は空気の読めなさでは、日本一を誇れるレベルだ」


俺は精神世界でほくそ笑む雪に向かって宣言し、エイルに襲いかかった!


「え…きゃぁぁぁぁぁぁ!」


『馬鹿野郎ぉぉ!』


         ♣︎


「そうそう、そういえばエイルに聞きたいことがあったんだ」


エイルには引っ叩かれ、無理矢理、精神世界に逆戻りにされ、雪には心ない罵詈雑言を浴びせられた俺は、何の気もなく引っ叩いた張本人に話しかけた。


『お前…精神が強すぎんだろ…』


精神が強いというよりは、俺にとって都合の悪い出来事は左から右に聞き流されてしまう。


その結果、俺の妹が可愛いという事実が残る。


俺の中の永久機関が妹に勝てる秘訣である。


『お前は長生きするよ…』


雪は呆れたように言った。


「な、なんですか?」


汗でべっちょり汚されたエイルがやつれたように、聞き返した。


「いや、俺、ユニークスキル、とかよくわかんないんだけど…それについて詳しく聞きたいなーって…」


この世界では常識なのか、エイルはなぜそんなことも知らないのかという顔で渋々説明してくれた。


「はぁ、…ユニークスキル。それは誰しも1人1個以上持っている、自分特有のスキルのことです。発動条件、等は自身が潜在的に理解しています」


ふむふむ…


「また、そのユニークスキルは、生まれる段階で身につけていて、その人の人格を表しているそうです。あと、自分の趣味とか…」


「なるほど…だからエイルのユニークスキルは…性癖を覗き見するようなものばっかりだったんだな」


《図鑑》により、より詳しく調べたところ、より詳しく具体的な性癖事情を暴露され、ちょっと引かれ気味だったのを俺は忘れない。


「人聞き悪いこと言わないでくれます!?」


なるほど…人の人格成形…俺の周回スキルは、確率アップだから…


「ちなみに、スキルは、人の願望から生まれることもあるそうですよ?」


…………………………


「俺のスキルの由来はガチャじゃねぇか!」


願望。人格、周回用スキル。確率アップ。ここから導き出される結論、それはこのスキルは、俺のガチャ欲から起因しているのだろう。


何度願ったか確率アップ。0.3%の割合にどれだけの諭吉を溶かしたか…むしろ2倍くれいあってもいいんじゃないかと、悔し涙を流した日々を…


でも、なんだったて、異世界でその願いを叶えてくれなくてもいいじゃないかっ!どうせならもっとチョベリグなド派手なスキルをくれよ!


『よかったな。願いが叶って』


そんな傷心中の俺に対する雪の憐れみの笑顔に、勝負すら仕掛けていない俺は、大敗北を喫したのであった…


『めでたし。めでたし』





































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