第14話 え?混浴じゃなくても妹と風呂に入ってもいいんですか?

ただ今、冒険者ギルド。そこで俺たちは、クエスト達成を報告し、帰路に着く1歩手前というところだ。


1息ついた俺は、雪に体の操縦を任せてダラダラしようかと思案していると…


「ふう、汗かいたので銭湯にでも行ってきますかね…イアさんもどうです?」


エイルのニコニコした笑顔と、そんな素晴らしい提案に疲れなどは1瞬で吹き飛んだ。


「あ、はいよろこん…』


「イヤァ、ヤッパエンリョシテオコウカナー。アッホラ、アレガアレガでアレだし…」


クッソ!いいところだったのに!またしても、雪に邪魔されてしまった!


てかなんだよ。あれだしあれだしあれって…なんなんだよ!


ああ、行かないでくれ…マイエンジェル…俺が今すぐ迎えに行くから…


エイルは少し寂しそうに俯いた。


「…そ、そうですか…残念です。また暇な時にでも…」


「いや、多分1生入ることはないと思う!」


「ええ、ひどい!!」


『そうだぞ、人生に1度くらいは、裸のお付き合いというものをしておかないと…』


「うるせぇ、テメェは黙ってろ!」


「『ひどい!』」


この後、俺に言った言葉が、自分に投げかけられたと勘違いして泣き目になってしまったエイルを宥めるのは、当然、口の悪い妹だったという…


          ♣︎


宿屋の扉がガラリと開く。そして、ロビーのソファーにまるで抜け殻となった俺がドサリとベッドの上にダイブした。


『だらしねぇなぁ…お前…』


雪がおかんみたいな口調で説教するので、俺はベッドの上で駄々をこねることにした。


「なんもかんも雪がエイルとの混浴を邪魔するのが悪い。よって俺はなにも悪くない。QED照明終了」


『なにも証明してない…っと…ちょっとばかし体借りるぜ」


『ナチュラルに勝手に奪うなよ…なにすんだよ』


「風呂だよ。風呂に入るんだ」


『あはは、なんだーそんなことかーいやぁ、そっかぁ………えっ?』


「気乗りは一切しないが、流石に2日連続で風呂に入らないのは、どうかと思うからな」


雪は、苦々しく顔を歪めながらゆっくりとロビーから部屋に向かった。


…………………………………


つまり、あれか?ここから、実に数年ぶりに、妹の裸体を拝むってことかぁ…?


…………………………………


部屋まで向かう足取りの中、俺は精神世界で絶叫していた。


『ウッヒョーーーーーーアビナィァァぁぁぁぁアァァァァァァァァァァァァァァァァァァwwwwww』(お使いの端末は多分正常です)


「うるせぇ黙れ」


これが黙って置けるだろうか。いやできない。妹と高校生にもなって同じ浴槽…想像しただけでも笑いが込み上げてくる。


俺は彼女とは風呂には入らないが、妹の風呂なら容赦なく入る。例えその後殴られるようなことがあっても入る。命を燃やせ。


「ああ…クッソイヤだ…お前、この時だけ死んでてくれない?」


『兄は妹の可愛さで死んでしまいそうだよ…どうするんだ…この湧き上がる衝動は…どこにぶつけたら…』


……妹はフェードアウトを決め込んだ。


妹の風呂を入っているのを覗くのは、窓ガラスにガチのシャッターに、入口をガムテを塞がれ、2階から穴を開けられるのを危惧され、天井に鉄板を打ち付けられた時に断念したのだが…


まさか…異世界でその夢を叶えることになるとは…さいっこうだぜ!この異世界ライフ!


3日分予約を入れておいた宿屋に備え付けられた風呂場に雪は重々しい足取りで向かった。


脱衣所に向かい、早く汗を洗い流したいのか、衣服を少しずつ剥ぎ始めた。


『ウッヒョーーーーーーアビナィァァぁぁぁぁアァァァァァァァァァァァァァァァァァァwwwwww』(お使いの端末は多分正常です 2度目)


「うるせぇ!黙れ!」


そうして脱ぎ終わって、風呂に入る。雪が自然に視線を落として、その胸が…


湯気が立ち込める風呂の中、まるで出来たかのようなタイミングで俺たちの体、イアの肉体を隠していた。


『なんか…自分の体見て欲情するって…俺そろそろ末期?』


その小さい胸を眺めながら、俺はぽつりと呟いた。


……そうだった…これは今、俺の体でもあり妹の体でもあるのだ。つまり、俺は自分の体見て、自分で欲情して…


「安心しろ。妹に欲情してる時点でもう末期だから」


そうかーもう末期かーなら安心だなー


体を洗い流す。雪が視線を下に向けない影響で、全く見えない。


見せろ見せろと懇願するが、全く見せる気配がない。ちくしょうめ…


『見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ見せろ』


呪言のような見せろコールに雪は余計に頑なになって、見せてくれなかったのは、言うまでもない。


          ♣︎


夕飯は雪のチョイスである謎料理、ケバケバ・モグリア・アッ・ナッコフィッチを貪り、大体夜中10時ほどになった。


「はぁ、疲れた……これからお風呂に入るときもこんなになると思うと…気が滅入る…」


風呂から上がって、雪はのぼせたのと違う理由でベッドに腰掛けた。


『……なんだろう…これからは俺が1人で体洗うよ』


流石に、俺も自分で自分に欲情すると言うことはない。


こうして、俺が初めて妹と風呂に入っても嬉しくなくなった記念日として、妹は精神世界で満足したように眠り、俺は宿屋の枕をひっそり濡らしたと言う。










         

















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