第9話 スキルの高額転売はおやめください!

「雪…俺のスキルがクソ地味なことが判明した…」


悲報、俺のチートスキル。周回用のスキルであることが判明。


それが、エイルのいわゆるユニークスキルで判明。俺としては、性癖を勝手に誤解を招くような文に改変されていたことより、そちらのことの方が堪える。


『プププ…』


おいこら、何笑てんねん。


しかも、絶妙に役に立つスキルというのも腹が立つ。どうせなら派手なのが良かったし、それが無理ならもうどうせならない方が良かったよ…


俺は天に向かって、俺たちを合体させた挙句、よくわからない能力を与えやがったナァロに向かって、天に、「神様の行き遅れ野郎ーーー!!」と、日本語で思い切り叫んでやった。


きっと今頃、ナァロさんは、赤面した様子で天から逆に怒鳴り散らしているのだろう。


良かった、良かった。


「ど、どうしました?いきなり訳の分からない言語で叫び出して…」


俺の突然あげた怒りの篭ったメッセージに、エイルは困惑気味な表情を浮かべながら呟く。


「すまない…ちょっと機関にこの国の住人では理解できない言語で通信していた」


「ちょっとなに言ってるか分からないです」『何言ってんだテメェ』


わお。手厳しい。


『おい、あのエイルの《図鑑》私のこと見てもらいたいから変われ』


なにを思ったのか、雪が唐突に変われと言われて、雪に変わる前に服を脱いでやろうとしたところで雪に主導権を奪われてしまった。


「なぁ、エイル…もう1度俺を図鑑で見てくれないか?」


『おい、雪、演技するならもっとちゃんとやれ。俺はそんなトーンじゃなくて…もっとバカっぽいぞ』


そんな、後で「自分で言ってて悲しくならない?」と言われるようなことを言って、悲しくなったところで俺はふて寝をすべく、寝転がった。


「…?《図鑑》鑑定結果は変わりませんよ?」


「まぁまぁ、頼むから…」


「……はぁ…」


_________________________________________


ユウキ・イア 


年齢 16歳 性別 女


暴力的な思考の持ち主。誰かを殴りたい思いいっぱいの、1番まともそうで、1番やばい人物。


《ユニークスキル》 ウェイト(自分のパワーが落ちる)


↑(正直、この人にはこれくらいのスキルがないと、犯罪を招く危険性がある)


今の心情「兄貴を殴りたい」


_________________________________________


『………プププ…』


いや、これを笑わずして、なにを笑えというのか。…雪に至っては、ただ単にチートがデメリットで、俺より酷いこと書いてあるし…


「よし、一旦この本を燃やさせろ」


「や、やめてください!」


段々と鷺堂悠のメッキが剥がれ落ちていく我が妹に、もう1度憐れみの失笑を送った。


『フッ…』


          ♣︎


「そ、そんなに…イラついているようなら…スキル屋にでも行ってみますか?」


暴走した雪が、エイルから本を奪おうとして、それを止めたせいか、髪の毛がボサボサになったエイルが疲れたように言う。


「『スキル屋?』」


雪も、俺もこのスキルが気に入りなかったからか、妙にキラキラした目でエイルの話に食い入る。


「はい、その名の通り、スキルを販売しているお店です。この街にもあるんですが…寄ってみますか?あまり安くはないですが…」


雪が直に忍ばせた、金貨をポケット越しに枚数を数えていると、「うん」と頷いた。


「んじゃ、案内してくれるかな?」


雪が言う。お世辞にも、雪には演技力があるとは言えない口調だった。


「……なんか…イアさん…急に紳士になりましたよね…」


『おい、俺はエイルの本をなんの躊躇いもなく燃やそうとした奴よりも紳士ではないと言うのか…』


もちろん、その声は聞こえるはずもなく、雪に意趣返しに鼻で笑われてしまうと言う始末だった。


全く、なんて日だッ!!


「さて、着きましたよ。ここがスキル屋です」


着いたのは、ボロい木造建築。よく言えば、古き良き、趣深い木造平家の建物だった。


「おはようございます。今日もいいスキルが届いていますか?」


エイルの話を要約するとこうだ。


スキル屋と言うのは、もう冒険者を引退する者からスキルを高額で買い取り、今度は、現役の冒険者に使えるスキルを売りつける。


もちろん店を開くには、それなりの人望、そして何より、スキルを他人に与えると言う、特別なスキルを持った人間にしかできないもよう。


そして、ここのスキル屋の店主。スキンヘッドで丸眼鏡をかけた、近所にいそうなおっさんみたいな人がエイルの声を聞きつけやってきた。


「ああ、今日もいいのが届いてる…と、言いたいんだがなぁ…」


「?」


「ほら、あれだよ。スキル転売ヤーが買い占めたんだ」


おっさんが申し訳なさそうな声でそう言う。


俺はある言葉に発作を起こしたかのように、胸の奥が熱くなった。


転売…ヤー…?


       ♣︎過去回想♣︎


「悠…俺は…もうだめだよ…」


そう、あれは雨の日、俺の親友コウキ…いや、コウタだったっけ…?


とりあえずそいつが俺の部屋に、(メンタルが)ボロボロの状態で駆けつけてきた。


「そんな…お前…」


「俺はもうだめだ…やられた…高額転売ヤーに…買っちゃダメだと思った時には、もう、カートに入れていたんだ…!」


コウキか、コウタは俺から目を逸らし、苦々しく口にする。


「もうだめだ…俺はもうイベントに行けるだけの…金がねぇ…」


思い出した、コウヤだ。コウヤは、最後、朽ち果てたようにピクリと動かなくなった。


俺は、その時に誓った。


親友の、1年の楽しみが消え失せ、もはや死体となっているコウヤの姿を見て、誓った。


「駆逐してやる…!転売ヤーもろとも、駆逐してやる…!」


      ♣︎過去回想終了♣︎


今度こそ、異世界で本当に殲滅してやるのだ。俺の手で…


コウヤの未練を果たすために…っ!


♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎後書き♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎


次はふざけるので、今日はちょっとおとなしめに…


まさかの次はこの続編です。そこまででも読んでいただけると嬉しいです!
















































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