第10話 転売ヤー、許すまじ ※お食事中の人はご控えください。

前回のあらすじ


憎き宿敵に親友を殺された、そのことでさらに憤る俺は時空を越え、宿敵と最終決戦に挑むと決意した!


尚、スケールを広げすぎたと言うことは、自信を持って言える。


         ♣︎


「転売ヤー…そいつは、ムカつくな…」


雪は、店主の顔をじっと見据え、苦々しく言葉を吐き出す。


そう、なにを隠そう、雪も転売ヤーの被害者なのだ。そう、これは互いに罵倒で牽制し合っている、俺と雪の初めてに近い、共同戦線。


『おお…なんか考えるだけでムラムラしてきた…』


雪がなんでだよと言いた気に沈黙した。


「…それは困りましたね…私も、欲しいものがあったんですが…高額で売りに出されてしまえば、私の寂しい財布では払えませんよ…この前も、結構値が張る同人誌を買ったから…」


おい、その話を詳しく…


悲しそうな顔をするエイルに、雪は彼女に手を差し出した。


その手には、ピエロの不憫なおっさんに差し出したような光り輝く銀貨…


「エイル。お前に仕事をしてもらいたい。そのための、給料だ。これで、引き受けてくれるか?」


『おい、誰だよ。そのかっこいい奴!お前もう演技してねぇだろ!』


雪の言葉の節々についにキレた俺は雪に無言の圧力で屈服する。


「は、はぁ…それはいいんですけど…なにするんですか?」


怒りに満ちた雪の顔を見て、若干引いているエイルに、雪は…


「なぁに…簡単なことだよ…」


そう言って、兄の俺でもなかなか見れない陰湿な笑みを浮かべたように見えた。 


「スキル転売ヤーは、基本的にダンジョンの周りを移動販売している。見つけるならそこだ」


「了解」


雪の今まで感じたことのない剣呑な空気に俺は、主導権のことを譲ってくれと懇願するのも忘れていた。


ざわ…

ざわ…

      ざわ…


心なしか、エイルも店主も固唾を飲み込み、緊張した面持ちである。


さて、どうなる…


         ♣︎


「さて、見つけた。どうせなら、復讐は同じやつに払ってもらいたいからな…」


とある岩場の影に隠れながら、雪は地図と、特徴が書かれた紙と睨めっこしている。

雪は荷物を持ちながら、屋台のような移動販売の馬車を見ていた。


『なぁ、雪。一体なにすんだ?俺には教えてくれてもいいだろう?』


エイルもいないタイミングを見計らって、俺は雪に声をかけた。


単純に、殴る、蹴るなら、こんな装備はいらない。一体…どんな方法を取るのか…


「ふん、教えてやる。ゴニョゴニョ…」


ドヤ顔で語り出した雪の言葉に、俺はただひたすら笑うことしかできなかった。…wwwフハッ…想像するだけで笑えるぜ。


「よし、エイル。お前のスキル《図鑑》に着いて、もう少し、詳しい説明を頼む」


「はぁ、私のスキル《図鑑》は、スキル発動となる紙、相手に見せることで発動します。さらに質力を上げれば、ステータス。対象が紙に触れれば、住所などの個人情報なども引き出すことができます」


なるほど…そんなことまでできるのか…この異世界で気になった子がいればエイルにこのスキルを使ってもらおう。


「よし、OK!んじゃちょっと行ってくるわ」


雪は納得したように頷き、エイルから紙を預かり、そそくさ転売ヤーの元に駆け寄った。


「すいません。スキルを売ってくれませんか?」


ちなみに、今の主導権を握っているのは俺だ。雪は、表情を隠すのが下手だ。


こう言うところでボロが出にくい俺に変わっている。しかも、相手にさりげなく、動きを操るのは、『詐欺師』の異名を持っている俺の出番だ。


転売ヤーの男は軽薄そうな笑みを浮かべながら、スキル表を手渡す。どれも高額で、ナァロさんにもらった金がなければ、到底払える額ではないのが、俺でもわかった。


この男…なにかと汚いというのが分かった。


…結局、1個くらいしか買えないし…でもいいのだ。それがいい。その方が屈辱を与えられる。


「…これかな…」


俺は日本でも見たことのある効果の魔法を見つけ、そこに指さした。


「はい、これでスキルを身につけましたよ?このミラーで確認してください」


男は、魔法みたいな、物を掛けて、1枚の鏡を差し出した。


「はい、ありがとうございます」


そして、俺は、金を差し出す。もちろん、エイルの《図鑑》の紙をさりげなく触らせた。


「はい、ありやとーござーっした!」


男の適当な声を背に浴びながら、俺はゆっくり岩場に身を潜める。


図鑑の紙には、バッチリ、転売ヤーの住所が記されている。


「………これでいいんだな?」


『ああ…バッチリだ…』


俺は雪のその声に、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべて、この後の起こる未来を想像し、悦に入るのだった…


    ♣︎《転売ヤーの男視点》♣︎


夜8時ほど…


「ふう、これでかなり捌けたな…やっぱり、ダンジョンの前にスキル屋を置くのはかなり稼げるぜ…」


俺は皮袋に入った金を見ながら1人笑みを溢す。


ここは俺の自宅。嫌われ者の商売でも、うまくやればローンが組めるほどには稼げるんだぜ。


俺は1人で祝杯をあげるべく、ビールの蓋を開けた。


そして、グイッと、テーブルには肉料理を盛って、待ちきれず、席に座る前に飲んでしまう。


「アーーッ!最高!」


俺は叫んだ。そして、その瞬間、


「ギュルルルルル………」


突然、腹が下った。はて…?いきなり冷たい物を飲んだからだろうか…というか、かなり痛い。


俺はトイレに駆け込んだ。


……そこまでは良かった…


便座に座り、大を出そうと、踏ん張った瞬間…


________________________(音が汚いので自主規制)ッッッッッッッ!!!!!!!!!!!


「はぁ…?ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」


そう、普段用をたす音というよりも、爆音で走り抜けるような、汚い轟音がトイレに響き渡った…


その音が、鼓膜が破れそうなほどに、うるさく響き…


「おい!ブリブリうるせえぞ!飯食ってたのに、吐いちまっただろうが!」


苦情が来ても、しばらく玄関まで出迎えることができず、結局漏らしながら出迎えたことは、いう必要はないことだろう…


     ♣︎ユウキ・イア視点♣︎


そして時は8時間ほど巻き戻り…


「へ、へぇ〜…そんなことを…」


男の住所を突き止め、部屋にある細工をした帰路、雪はエイルに作戦のことを伝えた。


まず、俺たちは、エイルの《図鑑》で住所を突き止めた後、俺が無駄に磨いていたピッキングスキルで男の家に侵入した。


犯罪ということなかれ。これも、親友の未練を果たすためである。


部屋に侵入した俺たちは、あいつの部屋の飲み物、飲食物に、下剤を盛った。意外と、下剤が安かった。


そして、混入し終えた後、俺たちはトイレに駆け込むことを予想して、トイレにある細工をした。


そう、ここで以前、無駄に買いこんだ、マジックアイテムの出番である。(6話参照)


その中に、拡声器というものがあった。小型なもので、部屋全体に取り付き、その音を自動で大きくしてくれる。その拡声、最大、150倍。


もちろん最大に設定して、トイレに設置する。後は、男がトイレで用を足せば、住宅街である周りの家には、排泄音が響いてくる。


それで、食べ物、飲み物を全部パーにするのと同時に、なんだか他の人とも気まずくなるようにする。


名付けて、《排泄音150倍作戦》!


そのことを雪が、エイルに説明していると…


「よ、容赦なさすぎる…!」


思い切り引かれたとさ。めでたしめでたし。ちゃんちゃん。













































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