第6話 宿屋にて…

昼飯も食い終わったので、そこら中の店を回りながら、宿を探して、ようやく腰を下ろした頃…


          ♣︎


6畳ほどの空間に、天井に備え付けられた照明に、鏡とベッド・机と椅子だけという簡素な空間で、俺は椅子に腰を下ろしていた。


「なぁ、雪…」


俺は鏡の前でたたずみ、もうひとつの人格である雪に声をかけた。


目の前に映るのは、本来なら間抜けヅラを晒して、変顔の練習をしている野郎の姿なのだが…


そこには美少女である俺がいた。


肩まで伸びた純白の髪に、日本人似の黒目。学帽みたいな帽子をかぶっている。


見た目は15くらいの、愛くるしい見た目の少女だ。俺たちを合体させた挙句、金までよこしたナァロさんの面影があり、その淡い若草色のワンピースはとても似合ってはいるのだが…


「…なんでおっぱいがねぇんだ…!?」


『お前、何言ってんだ?』


俺は床に手をついて項垂れていると、雪の予想通りといった冷たい反応が帰ってきた。


「だっておかしいだろ!?俺は童顔で背丈が小さかったし、それが遺伝したとも考えられる。性別が女の子なのはまぁ、雪のことだろうけど、雪はおっぱいがあったじゃねぇか!!なんでそこは遺伝しねぇんだよ!?」


俺は手で、この小さいおっぱいを頑張ってかき集めながら魂の叫びを上げる。


正直、公共的な場所で出していいくらいの音量ではなかったが、これを叫ばずして、他になにを嘆けば良いのか…


『し、知らねぇよ…ていうか、私たちが同じ体に入ったのはアクシデントだったわけで…本来お前が入る体がそれだったんじゃねぇの?』


雪はいつにも増して、俺の本気のトーンに若干困惑したように言う。


その慰めが逆に俺の怒りを誘った。


ふざけんな…納得してたまるかよ…だったらせめて男に転生させてくれよ…


とメソメソ泣き始めた雪は、冗談抜きでバカな話になぜか同情的に慌て始めた。


『ま、まぁ…作者が、ほら貧乳好きで、幼く見える子が好きだからさ…必要な犠牲だったわけだろ…』


「作者の都合で消え失せる夢が有っていい分けないだろぉぉォォォォォ!!!!!!!!!!」


2度目の魂の叫びに、ついに俺の部屋まで苦情が飛んできた。


「おっぱいおっぱいうるせぇぞコラアァァ!!」


部屋の前まで来て怒鳴るおっさんにもはや狂気といった叫びを上げ、拳を振り上げた。


「テメェもうるせえってんだよォォォォォッ!!」


         ♣︎


〜今回のあらすじ〜


宿に入って雪とおっぱい談義をしてたらクレーマーが来たので一発ぶん殴った。以上!


酒場で同僚に慰められているようなことがそれから数十分過ぎ、3人押し寄せてきたクレーマーとなんやかんやあって、ようやくそれも落ち着いた頃。


「今日買った、《マジックアイテム》とやらを試してみるか…」


もうめんどくさいからと言って、無理矢理主導権を奪った雪がそんなことを言う。


フローリングの床に、一面のよくわからない道具、《マジックアイテム》とやらが並べられた。


どうやら、ナァロさんは随分俺たちに恵んでくれたらしい。


これだけ買っても、まだ宿に3日は暮らせる上に、3食やっていけるほどの銀貨が残っている。初期設定からチートではなく、金がもらえる異世界転生はあまり聞いたことがないな…


というより、俺たちにチート能力というものはあるのだろうか…血気盛んな、脳内はいつでも中2の俺は、チート能力とやらは使うところがなくても、ぜひ欲しいものである。


まぁ、それは働く気が起きなければ、意味はないが…


『おい、雪。その例のライトみたいなやつ試してみようぜ』


「……なに企んでる?」


俺は精神界で某猫の例のライトに目を向けると、雪は懐疑的かいぎてきな目でライトから目を逸らした。


『この体の胸を大きくしてやろうと…』


「却下な」


『なんでだよ!』


「うるせぇ!どうせ体だけが大きくなるってだけだろ。胸だけ大きくなるものか」


ひ、ひでぇ…せめて夢でも見せてくれてもいいじゃねぇか…


………結局あんま役に立つものはなかった…


「冒険者になるってんなら、ある程度装備を整える方が良かったかな?」


この街で買い出しのほかに、探索もばったり済ませてきた。


その際に、《冒険者ギルド》の存在も既に確認済み。こういう際の面倒な契約とかはしていないが、明日にでも取りに行こうかと考えている。


流石に、このままあるだけの金で生活するのはかなり厳しい。それなら、今のうちにでも仕事は探しておいた方がいいという、雪の至極真っ当な意見により、俺もさらに“渋々“賛成した。


『ってなると名前だよなぁ…』


「名前?」


「ほら、俺たちって思いっきり、日本名じゃん。この世界にちなんだ名前をつけておくといいかなって。あと俺たち一応1人だし…2人の名前を呼ぶのは…アレだろ?」


実際、独り言をぼやいて、変な目で見られたのは、1度や2度ではない。あんまり目立ちすぎるのもアレなのでこの体の名前をつけておこうと考えて、雪もそれに同意してくれる。


「んじゃ、ユウキ…は?」


なるほど、ユウキ。雪と俺の名前の悠を合わせた感じの名前だ。


「それは姓の方がいいな。んじゃ名前は…」


『イアってのは、どうだ?』


「おお、いいな。クソ兄貴しては、随分とまともな意見じゃねぇか」


誰がクソ兄貴だ。そんな兄貴に迷惑かけるクソ妹が…


ちなみに、主にかける迷惑は、雪の暴力沙汰の仲介である。


「ちなみに由来ってなんかあんの?」


え?そりゃもちろん…


『EカップからAカップになったから、EとA…EA。ちょっと無理矢理だけど《イア》って…』


「よし、やっぱ改名しよう」


こうして、俺たち鷺堂悠、鷺堂雪、もとい、イア・ユウキの物語が幕をあげるのだった!


________________________________________


        後書き


次から、章が変わります!


冒険編になっても、自分なりにボケマックスでやっていくのでよろしくお願いいたします!


ちなみに、僕はロリコンではありませんのでロリコンではありません。











































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る