ゆめにっき

代表者 挨拶

マイクが一本立っている。

俺達は席を立って、その人が来るのを待っていた。

目の前にある二度とお目にかかれない炭酸のワイン。

俺は注がれたそれを早く飲みたくて仕方がない。

運動しやすそうな格好の男性が、亀のような駆け足で、拍手に包まれ登場する。

やっとマイクの前に立つと言い放った。

宣誓！！

我々、選手一同は、

日頃の鍛錬の成果、

並びに、培われた技術の結晶、

更には、蓄積された肉体的疲労、

及び、揺るぎない固定概念、

延（ひ）いては、朧げな経営理念、

或いは、植え付けられた損得勘定、

因（よ）って、胸の内に秘めたる精神的苦痛、

即ち、熟成された性的欲求を遺憾なく発揮し、

時に発揮され、互いに発揮し合い、

挙句下着を汚し、速やかに冷水で手洗いし、

一枚づつネットに入れて、洗濯機にかけると思いきや、

そのままベランダで自然乾燥するなどし、

スポーツマンシップに、則ることも辞さない構えで、

正々堂々と戦うことを、真摯に受け止め、

よく噛み砕き、粉末状にし、患部に塗り、ガーゼなどで覆い、

足を頭より高くし横になった状態で、

スポーツ新聞の定期購読、

或いは、スポーツ刈りの義務付け、

並びに、スポーツ選手との熱愛報道、

延いては、スポーツバー、

及び、ガールズバーの共同経営も視野に入れながらも、

スポーツ三昧の日々を過ごし、

汗と涙、また其れに勝るとも劣らない液体を夥（おびただ）しく分泌し、

時に分泌され、交互に分泌し合い、

夜な夜な枕を濡らし、速やかに自然乾燥すると思いきや、

近所のクリーニング屋に持ち込めるという喜びに、

心から感謝申し上げるとともに、

今後のご活躍ご健勝を心からお祈りし、

私からのお祝いの言葉とさせて頂き、

最後は万歳三唱とさせて頂くことを前向きに検討し、

メンバー全員で、悔いのない最後の夏という名の厳しい冬を乗り切り、

全力でプレイすることを誓うがごとく、

春の日差しが暖かく、とても晴れやかな今日この良き日に、

私達生徒一同は、広がる未来への期待で胸を膨らませ、

この学校を卒業する旨を証明すべく、

其方（そちら）の同意書に署名捺印し、

彼方（あちら）の席でおかけになってお待ち頂くか、

此方（こちら）の宛先まで奮ってご応募頂く旨を伝えた上で、

甲は乙と、賃貸借契約を交わすことを近々誓うかと思われます。

平成（へーせー）、31年、5月7日（なのか）、選手代表！！

或いは友人代表、及び大日本帝国代表、

延いては関係者各位には多大なるご迷惑をお掛けしたことを、

心からお詫び申し上げるとともに、

貴方様の選考につきまして、慎重に検討致しました結果、

誠に遺憾では御座いますが、今回はご期待に添えないことを、

末筆にはなりますが、今後益々のご活躍をお祈り申し上げた上で、

今後も当店のご利用をお願いしながらも、

最後は一本締めと致しますことをご了承頂きまして、

かんぱ～い！

俺は手に持っていたビール瓶を振り、近くの席の奴らと掛け合った。

純白のドレスの女も例外なく。

その勢いのまま、俺は炭酸のワインを煽る。

その辛さに咽（むせ）た俺は、布団の上でも暫く咳込んだ。

「写真」を立ち上げっぱなしで熱くなったスマホを閉じる。

俺は虚ろな目をしたまま、蟀谷（こめかみ）のドラマーに迎え酒した。

折角のスーツが皺くちゃだ。