第4話


「美味しいです!!」

「美味しい」

 明るい声が聞こえるのに僅かに福沢の目尻が緩んだ。今日は敦と鏡花が福沢の家に来ていた。二人に挟まれてぽつりと太宰が座っている。二人がやって来てからずっと二人に挟まれ二人が話しかけるのに交互に二人を見ながら答えている。今もそうだった

「太宰さん、これ美味しいですよ」

「これも美味しい。食べて」

「うん」

「これとかどうですか、きっと太宰さん好きですよ」

「これ、少し甘くて美味しい」

「こっちは塩気が効いてて美味しいよ」

 二人が次々に勧める合間に太宰がうんわかったと答えている。それを見ながら福沢が僅かに目元を細めた。先ほどから彼らはやたら食べ物の味について話している。太宰は味が分からないのだしあまりそう云う話はしない方がいいのではないかと思っていたのだが、違うのだろうか。きゃきゃと話す彼らを見つめ福沢は疑問を聞いていた。キョトンとした二人の目が福沢を見つめる。じっと見つめてくる敦と鏡花は首をかしげて聞いてないのかと云ってくる。

「何をだ」

「太宰さんの味覚障害を治すのにできる限り食べているときに声がけした方がいいって与謝野さんが……」

「何」

「甘いとか辛いとか伝えた方が良いって」

「…………聞いてないが、兎に角会話を増やすようにとは云われたが……」

 あーー、と云う顔を二人はした。微妙な顔をする彼らは探偵社で乱歩と与謝野に散々云われていた福沢を思い出した。

「え、他のこととか聞いてないんですか」

「他……何も聞いてないな」

「亜鉛を取らせるようにって僕らは云われてるんですが……」

「……そうか」

 沈黙が四人の間に走った。福沢の会話が圧倒的に足りないのは確かで云われるのも分かるが、重要なことは教えておけと怒りがわく。顔に出そうなのを抑え込みながら太宰を見る。三人が話している間も太宰は黙々とご飯を食べていた。

「太宰。美味しいか」

 問いかければ褪赭の瞳が見上げてくる。もぐもぐと口の中のものを頬張っている。太宰が口に詰め込んでいたものを思い出す。

「それは甘辛かっただろう。辛すぎたりはしなかったか」

 咀嚼を続ける太宰はふと動きを止めた。何かを考えるように黒目を動かし、飲み込む。もう一口箸を伸ばして同じものを口に入れる。もぐもくと噛み締め飲み込んだ太宰は不思議そうに首をかしげた。

「舌何か……変。何か……変な感じ」

 分からないと口にする太宰に三人は固まった。え? えっという顔をするのに太宰の目がそれぞれ三人を見つめる。

「……他はどうだ。なにかあるか」

 福沢が問いかけるのに敦と鏡花が少し輝いた目をする。太宰は三人を見てから夕飯を並べられた机の上を見る。食べてたものとは違うものを口に入れて咀嚼する。そして首を振った。

「なんにもないよ」

「そっか」

「……そう」

 しょんぼりと二人がする。それを見た太宰がきゅっと目を細めた。悲しそうに見えるそれに福沢は太宰の頭を撫でる。福沢自身も残念に思いながらもそれは表面に出さず僅かに目元を緩めた。見上げてくる太宰がほっと息を吐き出す。

「美味しいか」

「分かんない」

「なら好きか」

「んーー。……あんまり?」

 嫌と云う訳ではなさそうだが微妙な顔をする太宰に鏡花と敦はそれぞれすぐにおかずを勧める。

「これとか食べたらどうですか甘いし口直しに良いと思いますよ」

「これもいい。さっぱりしていて美味しい」

「うん」

 勧められたものを口に入れる太宰を見ながら、次から辛いものは減らすようにしようかと福沢は考えていた。



「ああ、それは味覚とは関係ないね」

「ええ!! そうなんですか!?」

「ああ、辛味を感じるのは味覚じゃなくて痛覚なんだよ。だから味が分かったんじゃなくて痛みがわかっただけなんだ」

「何だぁ」

 はぁああと肩を落として敦は唇を尖らす。少しでもわかるようになったのかなって思ったのに。残念そうに呟かれるのに福沢も内心同じように肩をおとした。話を聞いていた全員がみんな落ち込んでいるような様子を見せる。敦から昨日の話を聞いてみな同じような期待をしたのだろう。はぁと息を吐き出すのにそんなに簡単には治らないよと与謝野が云った。

「まあ、のんびりやってくしかないさ」

「はい」


  *********


 きょとんと太宰が目を瞬くのに福沢は首をかしげた。

「どうした」

 問いかけるのにじっと太宰が見上げてくる。夕食の時間。帰ってきたときから太宰はずっとそわそわして様子がおかしかったが、今は輪にかけておかしい。きょろきょろと辺りを見渡しては何度も首をかしげ目を瞬かせていた。見上げる太宰が不思議そうな顔を見せる。

「今日は誰も来ないの?」

「ああ、……その事か」

 きょろと周りをみた太宰に福沢は納得の声をあげる。夕飯を探偵社の者が食べに来るようになって十三日目。昨日で二周目を終え、今日は一旦やめておこうかと云う話になったのだ。福沢の会話スキルが上がったか計るためで乱歩と与謝野の二人に無理矢理盗聴器を仕掛けられている。

「今日は皆は来ないことになった」

「そうなんだ……」

「皆がいないと寂しいか」

「寂しい??」

「あーー、こう物足りないと云うか、心細い……………楽しくないか」

 見上げてくる目に何とか伝えようと言葉を探すが上手くいかず福沢の眉間には小さな皺が寄る。絞り出した言葉に太宰が考えるように目を動かした。黒目が上を向く。んーと口を尖らせた。

「みんなが来るのは楽しいけど……、でも疲れるからたまには、こんな日があるといいな」

「疲れるのか」

「うん。少しだけど。ずっとお話ししてるのは疲れる」

「そうか。今日は私がお前とお話ししたかったのだが止めた方がよいか」 

 きょとんとした目が見上げる。瞬きを数回繰り返してから小さな頭が横に振られた。

「ううん。大丈夫だよ」

「そうか。ありがとう」

「なんの話をするの?」

「そうだな……。まずは今日の話をするか。どうだった今日は。何をしたんだ」

「えっと。午前中は与謝野さんとお勉強して、お昼は乱歩さんと駄菓子屋に買い物行ったよ。途中迷子?? になりかけたけど何とか乱歩さんの案内できたよ。みんな褒めてくれて」

「…………」

「どうかしたの?」

 無云になり皺を寄せた福沢を太宰が覗き込んだ。いや、何でもないと声を絞り出しながら心のなかで何をやっているのだあれはと乱歩に怒りを向けていた。太宰とでかけた事は聞いていたがまさか子供に道案内させていたとは。鏡花や賢治でさえいかがなものかと思っていたのに、いくら太宰とはいえ七歳前後の子供になどお前はいくつだと怒鳴りたい。どうにか怒りを静めようとしていると覗き込んでいた太宰の顔がしょんぼりとしたものになる。

「駄目だった?」

 少し潤んだように思える瞳が見つめてくるのに福沢は固まる。

「いや、良くやったな。偉いぞ」

 何とか怒りを沈め太宰の頭を撫でた。幼い子供は僅かに固まりそれから笑みを漏らす。えっへへと嬉しそうに笑うのに福沢の口許も緩んだ。

「他には何かしたか……」

「うーーん。あ、そうだ、鏡花ちゃんと折り紙ってやつしたよ。国木田君やナオミちゃんが教えてくれたの。一枚の紙から色んなもの作れたんだ」

「ほう。何を作ったんだ」

「んとね、犬や猫とかの動物や蛙や蜻蛉、虫や、後お相撲さんとかを国木田君に教わったよ。ナオミちゃんからはねお花とかを教わったの」

「なるほど。上手く作れたか」

「うん。器用だねってみんな云ってくれたよ。だから折ったのはみんなにあげたんだ」

「そうか。私には何かないのか」

「えっ。…………じゃあ、また明日何かおるね」

 固まった太宰。困ったように視線がさ迷うのに冗談だと福沢は云おうとした。開こうとした口が固まる。微かに笑みを浮かべて云われた言葉に福沢が笑う。

「ありがとう」

「何がいい? 猫さんかな。乱歩さんが福沢さんは猫が好きって云ってたよ」

 やはり明日乱歩を怒ろう。そう決めながら福沢は太宰に話すための言葉を考えた。



「乱歩さんなら今日は来ないよ。嫌な予感がするからってわざわざ長期任務選んで出ていたからね」

 ぴくりと福沢の米神が動いたのにまあ、そのうち帰ってくるよと与謝野は簡単に云った。他の周りはみんな少し離れた所で二人を見ていた。その顔にはどれも怯えながらも苦笑めいたものが浮かんでいる。

「ああ、社長に云っておいてて伝云頼まれたんだけど、社長もだいぶ子供と話せるようになったね。その域だよだってさ」

「そうか。分かった。乱歩が帰ったら何がなんでも私のもとに来るように伝えてくれ。逃げたら今度こそ承知せんと云ってな」

「了解」


 *********


「お、おい、……どうした」

 戸惑った声が落ちるのに周りにいた探偵社社員は全員そこから目をそらした。

 そこ。

 声をあげた国木田の目に写るのは調査員の机でどんよりと座り込む二人の人影。仕事にも手をつけていない彼らに普段なら怒鳴るところであるが、そうするのを躊躇われる程に負のオーラが漂っている。

「敦、谷崎」

 丸まっている二人の名を国木田が呼ぶ。どうしたと問いかける答えは返ってこなかった。ただ涙目になった二人が振り返ってくる。どよよんとした目は国木田ではなく何処か遠くを見つめた。

「お、おい、本当にどうしたんだ!?」

 二人の様子に慌てた声をあげて国木田は周りを見渡す。目をそらした周りがみな苦笑を浮かべるのに首が傾く。

「太宰さんが……」

 ポツリと周りの一人が呟いた言葉に二人の肩が震えた。しくしくと泣き声まで聞こえ出すのにぎょっとした国木田は辺りを見回した。

「太宰? そう云えば太宰のやつはどうしたんだ」

「太宰さんなら与謝野さんと乱歩さんと今さっき出掛けていきましたよ」

「出掛けた? 今日は朝に出掛けていなかったか」

「そうなんですけど……」

 ちらりと二人を見る事務員。しくしくと啜り泣く敦と谷崎にその横では鏡花が自分も落ち込みながらも慰めている。

「太宰が何かしたのか。あいつは子供になっても迷惑かける気か」

「悪気はなかったんですよ。むしろ、善意だったと云うか……。悪いことをしたわけでもありませんし。でも……」

「? 何だ、何があったんだ」

 首をかしげるのに話していたのとは違う事務員がさっと差し出してきた紙。思わず受け取り国木田はそれを見る。あーーと云う顔を周りがするのに何なんだと思いながら目を落とす。それは仕事の報告書で幾つかの箇所に手直しがされている。制作者は谷崎。さらに幾つか渡されるのを見るとどれもこれも同じように直されていた。谷崎のだけでなく敦や鏡花、賢治のなどもあった。

 基本的に探偵社の調査員は若い者が多いからか報告書を苦手とする者が多い。一応慣れてきてそれなりには作れるようになっているのだが時おり間違いなどがあったりする。特に忙しいときが続けば疲れている分意味不明なものが出来上がったりすることもある。だから一度全員の報告書を国木田が見ているのだが、今手にあるのもは見た覚えがなかった。訂正を入れている文字も国木田のものではない。何処か書き慣れていないようないびつな文字は……。

「これは……」

「太宰さんです」

「は?」

「机から落ちていたのを太宰さんが拾って言葉の間違いに気付いて書き込んでしまったんですよね。

 そしたらこんなことに」

 こんなことにと云うのは正確なまでに直された報告書か。それともほぼ屍とかした敦と谷崎か。

「あーー」

 慰めの言葉を云おうとして何も出てこなかった。

「さすが、太宰だな」

 開いた口が何度も動いてそれからでたのは取り合えず太宰を誉める言葉。ですよねと事務員たちは小さく頷き。敦や谷崎からはわかっていましたけどと泣き声が落ちる。

 言葉も覚え、漢字も覚え、文法も覚えて何も教えることがなくなったとはつい先日与謝野から聞いた話ではあるが、まさかここまでだったとは誰一人思っていなかった。うわーんと本格的に敦が泣き出した。

「賢治君は凄いですねと云って元気に仕事に行ったんですけどね」

 事務員の言葉を聞きながらまあ、賢治なら出来るだろうと国木田は思った。だが、普通は無理だろう。国木田にだって無理だ。



「僕悪いことしちゃった??」

 不思議そうな目が見上げてくるのに乱歩は首を振った。

「別に悪いことはしてないでしょ。そんなこと気にする必要ないからほら食べなよ」

 机の上に並ぶ見るからに甘いケーキを口に含みながら太宰にも差し出す。乱歩を知る人が見たら驚愕する光景。現に隣にいる与謝野も今はそんなことを気にする場ではないと思いながらもあの乱歩さんがと感慨深く思っていた。

「食べな」

「でも……」

 いつもなら食べ物と見たらお腹一杯食べようとする太宰は今日に限って動かない。俯いて唇を尖らす。僕のせいでと言葉が聞こえてくるのに乱歩も与謝野もはぁとため息をついた。

「気にすることないってば」

「そうだよ。悪気があった訳じゃないだろう」

「それはなかったけど、……でも谷崎君や敦君が……」

 太宰を慰めようと二人が声をかけてくるのにそれでも太宰はしょんぼりと落ち込んだまま。

「賢治は喜んでいただろう」

「賢治君は喜んでくれたけど……」

「じゃあ、良いじゃないか」

 誉めても落ち込み続けるのにどうしたものかと二人は考え込む。悪いことしちゃったのかと悲しそうに呟く声がした。

「悪いことはしてないけどお前は幼いからね」

 少し考えてから乱歩は口を開く。落ち込んでいた太宰が目を見開いて乱歩を見上げた。不思議なことを云われたと大きな目がさらに大きくなっている。

「幼いとダメなの?」

「ダメって訳じゃないけど年下にお教えられたのが恥ずかしかったんだよ」

「何で?」

 きょとんと首を傾ける太宰。教えられたら嬉しいものじゃないのと聞いてくる。

「何でって、まあ下らないプライドとかかな」

 プライドと繰り返した太宰は首をかしげる。云われても理解できずに考えるがそれでもやっはり理解できそうになかった。大きな目が乱歩たちを見上げる。

「じゃあ教えない方がいいの」

「別に教えてもいいだろう。奴等だってなれるさ」

 問いかけてくるのにそんなことないと云えば少し安心したように息を吐き出した。

「本当」

「ああ」

「そうそう。国木田の負担だって減るし喜ぶよ」

「じゃあ、これからもしていいの?」

 きらきらとした目が聞いてくる。多分そうなれば敦や谷崎の精神が今日よりさらにやられることになるだろうと思いながらも二人の答えは決まっていた。柔らかな笑みを二人とも浮かべる。

「当然だろう」

「ああ」

 ぱあと太宰の顔が輝いた。二人とも太宰の頭に手をおいて撫でる。

「安心したかい」

「うん!」

 店に来た当初とは雲泥の差、明るい声で頷くのにだらしなく緩めながら良かった良かったと乱歩は云った。そんなーーと嘆く声が聞こえてくるきがしたがまあ、仕方ないよねと与謝野はそれらに蓋をする

「ほら、なら食べな」

「いいの」

「いいのいいの。いい子の太宰に僕と与謝野さんからご褒美だよ。みんなには内緒ね」

「ありがとう!」



「と、云うことで今日から太宰が敦たちの報告書を見ることになったから」

「えっ」

 予想していた通りの愕然とした顔をするのを見つめながらまあ、宜しくねと簡単に乱歩も与謝野も云った。

「よろしく」

 にこやかな笑みを浮かべて太宰も云う。悪げのない笑顔だがそれにより調査員大半の心がやられている。よろしくお願いしますなんてにこやかに答えているのは賢治ぐらいだ。

「良いんですか」

 駄目と云ってほしいと云う思いで谷崎は聞いたがこうして宣云しているのだからそんな言葉が聞けるはずもない。

「社長にも許可は貰ったよ」

「大丈夫。太宰も探偵社の一員だしね。太宰だって何かしたいんだよ」

 すんと敦や谷崎の顔が絶望じみたものになる。社長が許可したと云われてしまえば今さら彼らが何かを云って覆るとも思えない。

「ですが」

 二人のためにもなんとかと国木田が声をあげるものの……、

「国木田だって負担が減って楽になるだろう」

「ですが、……はい」

 乱歩に云われうっと止まる。それは確かにそうで、でもそれではと何かを云おうとするものの乱歩と与謝野がじっと見つめてくるのに口を閉ざしてしまった。他になにか云うことあると見つめてくる瞳は反論をよしとはしていなかった。



「本当にやるんですか……」

 不安そうな目で敦が与謝野と乱歩に問いかけたのは太宰が福沢と共に帰った後だった。冗談だと云うことにならないだろうかと考えていることは分かるが二人ともそうだよと首を縦に振る。集まっていた谷崎や国木田もああ、と云う顔をする。

「まあ、許してやんな。太宰のためなんだから」

「太宰さんのため??」

「そう。太宰のやつ今の自分が本当の自分の姿じゃないってことに気付いちまったみたいでね」

 えっと話を聞いていた全員が固まり与謝野と乱歩を見つめる。どう云うことですかと驚きすぎて声にならない声が問いかけるのにそう云うことさと乱歩が云った。

「あいつ最近よく笑うようになっただろう」

「あ、はい。まだすこしぎこちないですが前より笑うようになりましたよね」

 嬉しそうに敦は語る。周りも思い出してはすこし嬉しそうにした。大人だった頃と同じようにとまではいかないものの明るい笑顔を浮かべるようになったのも確か。その変化が全員嬉しかった。しかし乱歩からははぁとため息が出る。

「前より生きやすくなって感情が表に出やすくなってるのは確かなんだけど、でもあいつの笑顔の半分はまだ演技なんだよ」

 明るくなっていた事務室の空気が変わる。信じられないと固まるのに本当のことだからねと声がする。

「あいつみんなの様子とか見て自分が覚えてないだけでもっと前からここにいたこととかに気付いて、そんで自分が何らかの問題によって姿が縮んで記憶をなくしたってことにまで気づいちゃったんだよ。

 だからみんなが求める太宰を演じようしとして笑うようになったんだ」 

 そんな嘘でしょ。呆然とした声が落ちる。信じたくはないと思うけど、本当だよと云われるのに何とも云えない空気が流れる。

「だからまああいつ罪悪感めいたものを感じてるんだよ。それでみんなの役にどうにかたちたいって考えてるんだ。今はすこしでもあいつが何も考えずここで過ごしていけるようあいつのやりたいようにさせてやって」

 無云になりながらも全員乱歩の言葉に頷いた。


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