第2話

「っ!誰だ!」


誰の声とも違う、無機質な声

まるでロボットのような声だった


「失礼いたしました、わたしはメリバと申します、

 今回のゲームの進行役です」


メリバと名乗った少女は、少し不思議な見た目だった


小学校低学年ほどの幼さで、

赤いワンピースで茶色い髪に黒い小さな帽子、そして狼の人形を抱えている

ここまでは普通の見た目だが、右目があるはずの場所には、

赤くて丸い石が埋め込まれている


「そして、お二人は、

 男性が朝地あさじ 律人りつと、研究員、

 女性が国立くにたち 有莉朱ありす、裁判官です」


2人を手のひらで示しながら、そう言った、

研究員と裁判官、この少女の情報は、信じてもよいのだろうか、

しかし、有莉朱さんの反応からして、多分本当なんだろう


「なんで、あなたがそんな情報を知ってるのよ」


「わたしはゲームの進行役ですので、この位の情報は知っていて当然です」


「ところで、ゲームって、一体なぁに?」


そもそもの質問だ、私もそう思った

晴は、相変わらずのふわふわした口調で聞いた


「ではゲームのルール説明をいたします」


メリバの敬語の大人しそうな口調の中に有無を言わせぬような圧を感じた


「皆様には、もう既に皆様の中に紛れ込んでいる狼を探していただきます。

 狼は、狼以外の参加者、羊を殺します。

 羊が殺された1時間後に狼投票を行い、一番票を集めた人間を処刑します。

 狼を殺せれば、脱出のための扉が開きます

 狼と参加者の数が同じになったら、ゲームオーバーです」


「もし、狼が誰も殺さなかったら、、?」


「狼が投票なしで処刑されます」


無機質な声で説明されたのは、ただのゲームじゃなく、デスゲームだった

もう既に狼が紛れ込んでいる、その言葉から、空気がとても重くなったのが分かる


狼が私達の中の誰かを殺す、そして、投票で誰かを処刑する

処刑も、この中の誰かを疑って殺すということ

どちらも、特に意味に変わりは無い


どちらも、自分に死の可能性がある

殺される可能性もあるし、行動次第で狼と疑われて処刑されるかもしれない

もちろん、私は狼じゃない


私は、死にたくない


「そんなの殺人罪だぜ?見つけたら現行犯逮捕だな」


「仁さん、警察だったよね、頼りになるねぇ」


仁さん、そうだ、私達の中には警察官がいる


「そうだな、本当に警察で羊ならな」


たしかに本当に、味方なのか?

狼なんじゃないのか?


だめだ、もう疑心暗鬼になっている

そもそも、こんなゲーム自体が、ウソなんじゃないか?


「本当に、そんな馬鹿げたゲームが行われるのか?」


「そうよ、ワタシは信じないわ」


「それは、時がたてば分かりますよ」


メリバは、そう1言だけ言い、どこかへ消えていった

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