第10話
ふとした瞬間に孤独を恐れ、不安な時間を過ごすことがあった。
アンジがいない昼間の部屋はこんなにも広々とした空間だったろうか。孤独に過ごす日中の情華はまるで抜け殻になったような虚無感に苛まれる。悪循環に嵌っているのは重々承知の上。この孤独がアンジに再会したとき爆発的な感情の悦びを顕すのだと自身を納得させてなんとか一日をやり過ごしていた。
『ゴーレム少女(仮)』の完成する瞬間。三分間の浴室の密室。きっちり三分というインスタントラーメンほどの手軽さを超過するとどうなるのか? 少し興味が湧いた。このとき、情華は三分のタイマーが鳴り響く中を一分ほど待ってから浴室の戸を開いた。
カップ麺であればとっくに麺は伸び、食べられたものではない。
果たして、そこにいたのは熟し切った肉体を持て余した妖艶な美人の姿だった。
「アンジ、なの?」
「……」うふ。そう見えるかしら? うふふ。
妖しげな笑みを湛えたその顔は紛れもないアンジのものだった。アンジは悪戯っぽい声音で情華ににじり寄り、情華が気付く間もなく身体に絡みついてきた。あの小柄だった少女はどこにもいなくって、成熟した肉体とそれに相まって成長した身長とであっさり情華を征服してしまう。なんの抵抗もできずに情華は絡め捕られる形となった。
「ちょっと、アンジこれなんか恥ずかしい。やだっ!?」
アンジの甘ったるい声が耳たぶの辺りを厭らしく刺激して、情華は俯き赤面して顔を背けた。
「……」そんなに怯えることないじゃない。それとも……、こういうのが好きなの?
大人の美女に変貌したアンジの気怠い吐息のような話し声は非常に艶っぽく、その声を聞いているだけで頭が変になりそうだった。吹きかかる息が生暖かい。知れた相手でもこうも姿形が変わってしまうと、ほんの少しの怯えを感じるのが情華だった。アンジの吐き出す息から逃れるように顔を背けて、声を押し殺す。
だが、そんな情華の態度が気に喰わないらしいアンジは酷く彼女を虐めた。その瞳には嗜虐的な光が宿り、唾液を十分に浸した舌べろで情華の耳の穴をぐにゅりと犯していった。これには情華も驚きと快楽を隠せなかった。
「ひぃあっ!」
ぞくぞくぞく、と耳元から背筋、腰を下って尻、さらにその奥に潜む性器に、身の毛のよだつ快感が駆け抜けた。ナメクジが脳みそを犯すような体感したことのない刺激は情華の理性をあっさり破壊した。
「アンジ、私、駄目だよこんなの……」
軽くいったのか、情華の身体はへなへなと力なくそこに崩れてしまった。
「……」あらあら。
と、余裕の笑みを浮かべたアンジに連れられて、その夜、情華は想像を絶する快楽の中に深く沈められていった。
「……」かわいい顔して。本当にすけべえなんだから。でも、好きよそういうところ。
甘い蕩けるような接吻の嵐に晒されながら、情けない声で助けを乞うことしかできなかった。
「だめだよアンジ――」
それ以上のことを情華はあまり覚えていない。決して激しくはないが、いつまでも執拗に舐ってくるアンジの攻めに耐えきれるほどの精神力はなかった。ただし、アンジは余すところなく情華を愛した。余すところなく、総てを。
正気に戻った情華の全身は浅く疼き、引き攣るような痺れに火照っていた。肛門の奥には異物を捻じ込まれたことを証明する違和感がいつまでも居座り続けた。
心地のいい疲れとは程遠く、あっさりと眠りにこそ落ちたはいいが、うつぶせた身体を寝返ることも叶わないまま朝を迎えることとなった。
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