【アマチュア創作と倫理】 5
ここまでプロとアマについていろいろと見てきましたが、今回からは、アマチュアが活躍するようになってきた歴史をいくつかのジャンルから見ていこうかと思います。今回は「詩」です。
noteでも多くの詩が投稿されています。詩を書く人は多く、インターネットの普及によって多くの人が詩を発表できるようになりました。
90年代後半から2000年代初期、一般家庭にインターネットが普及し始めた頃は「テキストの時代」と言えるのではないかと思います。通信速度が遅いため、重たいページは開くのに時間がかかります。また、SNSなども普及していませんし、ブログも使われていません。作品を発表するには自分のホームページを作る必要があり、「テキスト中心」のページがたくさん作られました。
とはいえ、ただページを作るだけでは見てもらえません。同じ趣味の人をつなげる、ウェブリングというものが流行っていました。ここに登録し、ウェブリングを自分のページに貼ります。そこから隣の番号の人や、ランダムにページを移動することができるのです。
コミュニケーションのためには、掲示板を設置することになります。ただ、なかなか反応というのはそう簡単には得られないものです。多くのページにアクセスカウンターが設置されていたのは、せめて見られているという実感を得たい、と思った人が多かったからではないでしょうか。また、訪れた方も「キリ番報告」など、きっかけがあるとコメントを残しやすい、という側面もありました。
2チャンネルにも詩板がありました。また、詩の投稿サイトもできました。現代詩フォーラムなど、現代まで続くものもあります。当時は私は、その存在を全く知りませんでした。インターネットに対する知識もあまりありませんし、詩人の知り合いもいません。「よくわからずにホームページを作って詩を発表している」という人々はそこそこいたと思いますし、そんな人でも偶然の訪問者から作品を読んでもらえる、それがうれしい、という時代でした。
ブログが普及し始めると、作品発表のハードルはさらに下がります。ホームページの知識がなくとも、文字を打つだけで作品を投稿することができます。また、最新の記事がトップに来るというのも便利です。
インターネットのあり方も変化してきます。ADSLの普及により、時間に関係なく定額で高速通信が可能になります。また、mixiなどSNSにより新しいつながり、新しい作品の発表場所ができます。
mixiには詩を書く人々の集まりもあり、そこでは自由に書く掲示板以外にも、いくつものお題の掲示板が作られていました。また、形式上タイトル入力欄がないので、タイトルのない詩も多く見受けられました。「タイトルの必要性を感じない」というコメントもありました。
このように、プラットフォームによって詩の形が変わる、ということが多々見受けられるようになります。特に初期のツイッターは、創作の場としては独特だったと思います。140文字で収めなければならないので、長い作品は無理です。今のようにツリー機能や画像投稿機能もありません。また掲示板ではなく本人の投稿が並列されていくので、作品ばかりの人、趣味のつぶやきが入る人、たまに創作する人などが入り混じり、人によって全く別のタイムラインが形成されていきます。投稿作品と日常のつぶやきが並行して見られるため、「作者ありき」で作品を見られる度合いが高くなります。また、#twpoem #tankaなどのハッシュタグが生まれ、それによって創作者たちがつながっていきました。
初期はリツイートも手動だったため、作品の後ろが切れてしまったり、誰が作った作品かわからなくなる、ということもありました。マナー違反をしてもリムーブ・ブロック・アカウント削除などにより「逃げ得」になることもあります。この問題は文芸創作に限らず、今も続いていますね。
時代と共にツイッターの機能も変わり、ツイッターに投稿される作品のあり方も変わってきました。リツイートが自動になり、作品がそのままの形で、投稿者と紐づけされたままで拡散できるようになりました。またツリー機能によって、いくつかのつぶやきをつなげて長い詩も投稿できるようになりました。公式に画像投稿ができるようになったので、画像として詩を投稿する人も増えました。
インターネットはただ「詩を見られる機会を増やした」だけではなく、様々な形で詩を投稿できるようにしました。作る段階ですでにプラットフォームのことを意識するようになり、新しい形の詩が生み出されるようになりました。
その一方で、「ネットポエム」という言葉が生まれ、揶揄として使われることもあります。数多くの作品が「本人の意志のみで」発表されるわけですから、玉石混淆なのは当然です。また、評価が難しいという点も、インターネット上の難点であるかもしれません。星が多くついている作品が、必ずしも多くの人々を感動させているわけではないことがあります。「星を付けてもらったからお返しする」ということもあるでしょうし、そもそもすべての作品に目を通すのは難しいですから、「知り合いの作品ばかり読んで評価する」ということもあるでしょう。
評価への不満、プレッシャー、SNS上の人間関係。様々なことから創作をやめる人がいます。悲しいことではありますが、「見え過ぎることで創作をやめてしまう」人がいる以上、インターネットの普及がアマチュア創作者にとっていいことばかりとは言えないと思います。
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