プロからアマになる(【アマチュア創作と倫理】番外編)

(注)2018年の記事です


 プロとアマの違いについて、これまで何回か見てきました。その境界線はあいまいで、いろいろな考え方がある、という話でしたね。

 今回は私がそのことについて考えることになったエピソードを二つ、紹介したいと思います。


 今から十五年ほど前のことです。ある四コマ漫画が好きだった私は、mixiでその人のコミュを見つけました。入ったものの、20人ぐらいしかいません。できたばかりなのでしょうか? しかもコミュでの交流を見ていると、なんと作者本人がいます。さらに、会話している人は作者の知り合いたちのようなのです。

 ファンが……いない? プロの漫画家というのはすごい人ばかりだと思っていましたし、その漫画が連載されていたのもそこそこ大きな雑誌です。それなのにこんなことが、と私はショックを受けました。そしてある日、作者から友達申請が来たのです。

 作者と友達になり会話をしたり、なぜか私の描いた絵がコミュのトップに採用されたりと、不思議な関係が出来上がりました。私にとって遠い存在だったプロの漫画家が、ぐっと身近に感じられました。

 しかし、現実は厳しいのです。四コマ漫画はなかなか単行本になりません。単行本にならないと、連載料だけでは生活が厳しいということでした。また人気があまりないのですから、作品が溜まっても単行本化しない可能性があるわけです。作者は、バイトを始めました。おそらくですが、バイト収入の方が多くなったのではないでしょうか。そして、バイト先の人と付き合い始めました。以降、日記が更新されることはなくなりました。漫画も、打ち切られてしまいました。その人の名前を、再び見かけることはありませんでした。

 おそらく、プロの漫画家ではなくなったのです。


 別の話になります。ある雑誌で毎月、小説を書く人のための講座が連載されています。コンテストの受賞作についてのコメントが多いですが、たまに送られてきた小説の評価もしています。そしてある月その評価が行われていたのですが、あれ、と思いました。見たことのある名前だったのです。

 私はその人の小説を買ったことがありました。その人はあるライトノベルのコンテストで受賞して、デビューしていたのです。しかもそこそこおもしろい小説で、続編が出たら買いたい、とすら思ったのです。

 その人が、アマチュアの小説を評価してもらうという講座に作品を送り、酷評されていたのです。もちろんべた褒めしては講座が成立しません。とはいえ書かれているのは厳しい指摘ばかりで、とても「プロとしてデビューできる」希望が持てるようなものではありませんでした。プロとしてデビューした人なのに!

 私は、落ち込みました。一度プロになっても、売れなければ並みのアマに戻ってしまうのでしょうか。それとも、講座に取り上げられないほどの駄作がいっぱいあるだけで、批評されるだけましなのでしょうか。


 プロになっても、プロであり続けることは難しい。頭ではわかっていても、実際にその事例を目の当たりにすると、動揺してしまいます。それならばアマであり続ける方がいい、そう考える人もいるでしょう。

 プロとは何か。プロであり続けるとは何か。今後も、そのことについて考え続けていきたいと思います。


初出 note(2018) https://note.com/rakuha/n/nc99a39aa3a29

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る