第9話

中村さくらを知れば知るほど中村さくらという人物がわからなくなる。

中村さくらは僕と同じ高校だった。


そしたらどうして学校がある時間に塾にいることができたのか。

そしての僕に通信高校に通っていると嘘をついたのか。

春が嫌いといった理由は?


中村さくらは一体何だったのだろうか。


高校に行き先生に話を聞けばわかるかもしれないと思ったが、塾から学校まで自転車で25分、歩いて1時間、車いすだともっとかかるだろう。

どのみち僕にはいく手段がなかった。

毎日自転車通学だったため公共交通機関で行く方法は詳しくない。

今日のところはあきらめ、次の機会に学校に行くことにした。


家に帰り、母に一度学校に顔を出したいと言ったところ快く了承してくれた。

小学校や中学校と違い義務教育ではない高校は授業に出席しなければいけないわけで、今の時点で一学期と二学期の少しを休んでいる僕には留年が余儀なくされた、通信に編入することも進められたがあまり気乗りがしなく、僕は今の学校のまま留年を選択した。


学校につくと事前に母が連絡していたらしく門のところに元担任と顧問の先生がたってた。先生たちも塾長と同じように「無事でよかった」「また会えてうれしい」なんて言葉を発していた。そのあと、応接間のようなところに母と通されこれからのことを話した。


ある程度のことが人の手を借りることなくできるようになったら同学年の子と卒業まで過ごしもう一度三年生をやるか、今年度はもう通うことをせず来年から通うか、

僕は後者を選んだ。


今、大きな学校の行事は終わり受験モードになっているクラスに行っても迷惑になると思ったのもあるが、仲の良い友達もほとんどいないので別に気にはしなかった。それにただでさえあまり頭の良くない僕が約半年もの間まともに勉強ができていないので体のリハビリと同時並行に頭のリハビリもしないといけないと思ったからだ。

母が当時の担任と話している間に顧問が最後の大会の話や、新しく入った1年生の話など部活のことを聞いてもいないのにべらべらと話し始めた。部活のことなど一切興味のない僕は愛想笑いをしながら適当に相槌を打っていた。


「今年の1年はすごいんだよ。中学校の時県大会で上位に行った奴が2人もいる。今までいなかったマネージャー増えてすごく活気があってな、そういえば、吉田あの子知らないか?練習をよく見に来てくれていた子」


「そんな子いましたっけ?」


「あれ、気が付いていなかったのか?ほぼ毎日5時とか6時とかにフェンス越しに見にくる子がいたんだよ。中学生だと思ってな一回勧誘しようと話しかけたことがあったがすぐに逃げられてしまったんだよ。吉田が学校に来れなくなったあたりくらいからかな来なくなったから吉田の知り合いかと思ってたんだが違うのか」


僕はすぐ中村さくらを思い浮かべてしまった。





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