第6話

「聞きたいことがあるんですけどいいですか?もちろん答えたくなかったら答えなくていいですし、自分に聞きたいことがあるならできる範囲で答えます」


彼はアイスを食べ終わりブランコを止め私のほうを真剣な顔で見ながら言った。


「わかりました。こたえられるものだけ答えます。」


私は戸惑いながらもこう答えた。

彼は少し表情を緩めブランコをこぎ始めた。


「お名前は何ですか?自分は中村さくらといいます。」


なんだか面接のような質問に少し落ち着きを取り戻した私はブランコを彼と同じくらいの目線まで上げた。


「名前は吉田隼人といいます、今高校二年ですぐそこの坂を上がったとこにある高校に通っています。見てわかると思うけど男です」


と聞かれたことより多く私の情報を伝えた。


「自分も高校二年で通信に通っています。自分も見てわかると思うけど女です。普段は男性の服ばっかり着て髪も短いし身長もそこそこあるので男と思われていることが多いんです。」


彼は言葉を一つ一つ選択しながら話している気がした。


「そうなんですね、身長高くてうらやましいなって思ってたんですよ。だって僕より高いでしょ、スタイル良くてかっこいいなー」


「そんなことないですよ、高くていいのは男性だけ。女はいくら高くても何の得もしないですよ」


彼は笑いながら言っていたが私には傷ついているように見えた。


「この前、お菓子ありがとうございます。まだほとんど食べてないけど勉強の合間とかに食べよっかなって思ってます」


「いやいやいや、自分こそ勝手に押し付けちゃってあのあと少し悪かったかなって思ったりしててさっきコンビニから出て吉田さん見つけたとき謝ろうと思って全力で走っていったんです」


だからか、彼を見つけ目をそらしまた眼を上げたときには彼は目の前にいた全力疾走したのかと思えばあの速さは納得する。

彼こと、さくらさんと私の距離は絶妙な距離を保ちながら会話は進んでいった。塾長やほかの塾の生徒の事お互いの学校であった面白い話や私の部活の話、ありきたりな話しかしておらず後から思い出せと言っても難しいほど会話は続いた。


「そろそろ帰りますか」


空が青からオレンジになりつつあるピンク色の空の時さくらさんは言った。


「そうですね、時間もそろそろ遅いし」


「また塾で会いましょ」


さくらさんは笑いながら言いブランコを降りた


「次はいつ会えるんですかね。また、塾じゃないとこで会うかもしれませんね」


私も笑いながら言いブランコを降り、ギリギリのところでバランスを保っていた自転車にまたがりさくらさんのほうを向いた。


「また、こうして話しませんか?」


さくらさんは言った。断る理由なんてない。


「僕でよければ」


さくらさんはほっとしたのか


「じゃあ、また」


と一言いい来た方とは反対のほうへ走っていった。


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