第5話

彼と出会った私はすごく動揺していた。知らない人のふりをしこの場を去ることも考えたが彼とはばっちり目が合っている。逃げるか逃げないかそんなことを考えていた。


「この前ぶりですね」


彼が少し照れたように言う、


「塾でしかあっていない人と違う場所で会うのは変な感じがしますね」


また照れたように彼は言う、

学ラン姿なんて見られたくなかった私は彼がなぜこんな風に焦りもせず、前に話した時と何ら変わらず話せるのかがわからなかった。


「少し話しませんか?」


断るいい理由も見つからず


「はい、」


と私は答えた。


「近くに公園があるんでそこまで行きましょ」


と彼は言い歩いて行った。


私は自転車から降り歩いて彼の後を追った。

少し歩くとひっそりと誰かを待っているような公園があった。

彼は公園につくとブランコに座りコンビニで買ったであろうお菓子を開け食べていた。私はブランコの近くに自転車を止め荷物を前かごに置きバランスを崩し自転車が倒れないように微調整し彼の横のブランコに座った。

アイスを食べながら彼は片手でブランコをこぎ始めた。


「おちないんですか?」

私が彼に聞いてみた。


「落ちないですよ、自分運動神経良いんで」


彼は笑いながら答えた。


一人称が「自分」俺や僕、うちなどとは違い性別を特定できない一人称、私も使っている。やっぱりと思い彼にこのことを言おうかと思ったが勘違いしいたらと思い、聞けない。



また、沈黙だ



はたから見たら私たちは付き合っており学校帰りに話しているだけに見えるだろう。だが、現実はもっと複雑だ。おそらく彼も気が付いている。もちろん私も。けれどそれを確認する一言目が出てこない。理由は単純、違っていた時の恐怖、骨の髄までしみ込んでいる日本人の性格といっても過言ではない、他人と違うとき、その瞬間に世界が変わる。限りなく悪い方に。

最悪を想像し一言目を発せない私、けど彼は違った。


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