第3話
今日の練習もやはり乗り気がせずどうやってやっている風に見せるかを考えていたら顧問と目が合いまるでさぼるなと言わんばかりに練習メニューが増やされた。私のことだと気が付いた子はいたかとドキドキしていたが何も言われなかったのでおとなしくまじめにやることにした。
高校生最後の公式戦ということもありもうすぐ三年生になるというのに今日も一日錬だ。水を飲まず体調を悪くし帰ろうかと思ったが夏休みにやった時全然体調が悪くならなっかったのを思い出しやめた。
今日は十時まで塾が開いているので部活終わってから行こうかと考えていたがみんなのやる気がすごく結局七時まで練習をやっていたので行く気力をなくした。明日は自主練という名の強制参加の部活がある日なので明日もいけない。多分行っても彼は帰ってるだろう。月曜は部活が休みなので授業が終わりすぐに塾に行けば彼に会える気がし、とりあえずくそだるい明日を乗り切ろうと眠りについた。
私だって昔から部活にやる気がないわけではない中学の時は普通に楽しくやっていた。問題は高校に入ってからだ。
中学の地区予選で上位にいた学校のレギュラーがたくさん入部したのだ。もちろん私がいた学校は中の下くらいの成績だったから私の事なんてみんな知らなかったが私はみんな知っていた。
今思い返すとあの時すぐに部活をやめ違う部活に入るという選択をしておけばよかったと思う。けど、あの時の私は謎の自信にあふれていた。ほかの奴らよりもうまくなってレギュラーに一年生からなるぞ!と。しかしそんな野望は一週間と持たなかった。何よりも基礎が違う。強い学校にいた子たちは中学校の時にすごく厳しく基礎を教えられていた。
対して私は全然ダメだった。
一ミリも勝てる気なんてしなかった。
そして初めての試合の日私にはペアがいなかった。
正直分かり切っていたことだった。その前日までやっていた実戦練習でも私にだけペアがおらずずっと審判をやっていた。ペアがいない私は試合にも出れずずっと外からみんなを応援していた。
つらかった。
あのフェンス一枚が私には分厚い壁に感じた。けど私は練習に参加し続けた。いつか私が出られるんじゃないか、あのフェンスを越えられるんじゃないか、ずっとそんなことを考えながら練習していた。けど小規模の大会の日相変わらず私にはペアがおらず今日も応援か、みんなの試合を見て勉強しようと意気込んでいたら顧問に呼ばれた。ほかの学校の子と組んで出るんだろうかと期待し顧問のほうへとむかった。
その日私が顧問から任された仕事は事務仕事だった。
試合の呼び出し、
結果記入、
大会を円滑に進めるために使われた。
最初は人が足りていないからだと思い、目の前にあるいわれたことを頑張ってやった。でもそれが終わると途端に暇になった。人手が足りなから私はここで手伝っているんじゃなかったのか。正直よくわからなくなった。帰りに顧問のとこに集合しその日の試合の良かったとこ悪かったとこなど一通り話してから解散するのが習慣だったがその日私はいなくてもいいんじゃないかと思いながら顧問の話を聞いていた。帰り道同級生たちがあの試合はどうだったとか何とか話をいつもはするがその日はしなかったそれで少しでも一緒に応援していた気持ちになれると思い私から話を振ったが「もう話し終えた」
「今日は話すことがもうないんだよね」
と言われた。そっからの記憶はあんまりない。鈍器で殴られたような衝撃というより体全体を水に沈められたような生きぐるしさだった。その日を境に私は事務仕事を頼まれることが増えみんなが勝っても近くで祝うことができず帰り道に「おめでとう」ということしかできなかった。でも、この気持ちはだれも理解してくれないだろう。話してもじゃあ辞めたらぐらいのアドバイスしか来なかった。なんでやめなかったのかと尋ねられたら私はこう答える。
教室に自分の居場所ないから
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