41話突入

 貴族達や兵士専用の西口が開かれる。


 俺たちは、そこに滑り込むように入り込む。


 そこでは……。


「な、何をする!?」


「グハッ!?」


 作戦会議でみた冒険者達が兵士と戦っていた。


「ユウマ殿だな!? さあ、いけ!」


「感謝します!」


「はっ! こっちのセリフだぜ!」


「若いもんが世話になったなっ!」


 住民の避難も済んでいるようなので、俺たちは真っ直ぐに領主の館へと向かう。




 しばらくすると……大きな門がある。


 都市の北、三分の一を占める領主の住処だ。


 そこでも、すでに戦闘は始まっていた。


「がはっ!」


「オラァ!」


「早く増援を……うぁー!?」


「なるべく殺すなよ!?」


「わかってるよ!」


 恐らく、俺よりランクの高い冒険者たちだろう。

 その力量と余裕は、俺達にはないものだ。

 次々と兵士を無力化していく。


「しかし……どうする?」


「ユウマ殿だな?」


「はいっ!」


「おう、ガロじゃねえか。団長、こいつはガロ。古株で四級の冒険者だ」


「おう、アロイス。俺が誘っても入らなかったお前がな……まあ、良い。とりあえず、邪魔者は排除したが……どうやら、扉はこちらからは開かない仕組みらしい」


「ガロさんですね、よろしくお願いします。なるほど、それくらいの対策はしてありますよね」


「私が上から行きますかー? 変身すれば、あっち側まで行けますよー?」


「いや、アレは取っておけ。何より警戒には神経と体力を使う。シノブをここで削るわけにはいかない」


「ワタクシが魔法で吹き飛ばしますわっ!」


「いや、だから……俺達は入ってからが本番なんだよ」


 しかし、どうする?


 その時……慣れ親しんだ気配がする。


「小僧、お困りのようだな?」


「お、シグルド殿」


「剣聖シグルド殿……本物だ」


 危ない危ない、叔父上っていうところだった……。

 一応、お互いに知らないふりをしている。

 もちろん、シノブにも言ってある。


「どうやら、扉が開かないようだな?」


 叔父上は、軽く五メートルを超える壁を見上げる。


「ええ……」


「よし……仕方ねえ、手助けしてやるか」


「ガロさん」


「…………」


「おい! ガロ!」


「す、すまんっ! つい……」


 無理もない。

 普段はただの飲兵衛だが、永世剣聖の名は伊達ではない。

 戦う男なら一度は憧れる相手だ……もちろん、俺も。


「全員を下がらせろ!」


「わ、わかったっ!」


「俺達も下がるぞ! 巻き添えを食えば……死ぬと思え!」


「「「はいっ!」」」


 全員で叔父上の後ろに下がる。


「さて……」


 叔父上が背中から剣を抜く。


「あ、アレがデュランダル……!」


 我が国には、伝説の宝剣が六つあった。

 事情により、1本は行方知れずだが……。

 デュランダル、ティルフォング、バルムンク、カラドボルグ、グラム、ミストルティン。

 そして永世剣聖のみに与えられるいう、我が国に伝わる宝剣の一振り。

 それが叔父上が持つ、大剣ディランダルである。


「ふぅ……オラァァァァ!」


 両手持ちにて、デュランダルを上段から振り抜く!


「う、嘘だろ……?」


 ガロさんの声が震えている。


「相変わらずだ……」


 俺も知っているとはいえ、その光景には驚きを隠せない。


「も、門どころか……壁を斬りやがった——いや、削った?」


 アロイスの言う通り、五メートルを超える壁は斬ったというより……削り取られていた。

 幅一メートルくらいあるので、通ることは容易だ。


「ふぅ……まあ、こんなもんか。おい、これでいいか?」


「えっ……はい! ありがとうございましたっ!」


 俺は叔父上ではなく、ただの一人の武人に敬意を表する。


「な、なんだよ……ほら、行け」


「はぃっ! みんな——いくぞ!」


 照れ臭そうにしている叔父上を背にして、俺達は領主の館へと突入する。




 突入すると……。


「うん? 兵士がいない?」


「罠ですか?」


「いえ、気配は感じないですねー」


「アタイも同じ意見だ」


「まあ、とりあえず行ってみようぜ」


「それもそうだな。各自、警戒を怠らずに進もう」



 そしてある程度進むと、わらわらと兵士が出てくる。


「ば、バカな!?」


「魔法さえ防ぐ壁を!?」


「誰だ!? 見張りは何をしていた!?」


「や、破られるなんて思わなくて!」


「というか、なんで攻められている!?」


「警備は!? 何も情報が入ってないぞ!?」


 なるほど……入られるとは思ってなかったと。

 そして、情報操作が済んでいるか。

 しかし、これはチャンスだな。


「敵は混乱している! 今のうちに突っ切るぞ!」


 勢いを殺さずに、そのまま突撃を仕掛ける。


「オラァ!」


「お、オイラも!」


「やっちゃいますよー!」


「やれやれ……アタイもやるかね」


「わ、ワタクシもっ!」


「お前はダメだ。温存しておけ」


「むぅ……身体がウズウズしますわ」


 俺はホムラを護衛しつつ、敵を一刀のもとに斬り伏せる。


「ガロさん!」


「ああ! ここは任せろ!」


 まだ敵はいるが、ガロさん達に残りを任せる。



「いたぞ!侵入者だっ!」


「こっちだっ!」


 チッ! 流石に数が多くなってきたな。

 ここで手間取るとよろしくないか……。


「ホムラ! 一発頼む!」


「オホホッ! 待ってましたわ——バーンストライク!」


「は?」


 空から炎の玉が降り注ぐ!


「ギャァー!?」


「アツイぃぃ——!?」


「おい!?」


「平気ですわっ! 広範囲な代わりに威力は低いですわっ!」


「それは見ればわかる! 魔力は!?」


 いくら威力が低いとはいえ、数十個の火の玉を放つとは。


「問題ないですわっ! まだまだ余裕がありますから!」


「……どうやら、虚勢をはっているわけではなさそうだ」


「ワタクシだって成長してますわっ! ユウマに負けたくないですものっ!」


「これは俺が悪かったな。ホムラ、頼りにさせてもらうぞ?」


「も、もちろんですわっ!」


 そしてホムラの魔法により……。


 いよいよ、俺達は館へと突入するのだった。

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