外伝~ホムラ~

 早く、一流の冒険者にならないと……。


 このままだと……望みもしない結婚をさせられてしまいます。


 もちろん、我が家には私しか跡を継げる者はいません。


 なので、一族の血を絶やさぬために、いずれは結婚することにはなるでしょう。


 ですが、私は亡き両親に代わり、一流冒険者になる夢を叶えたい。


 もちろん、貴族にして冒険者という両親に憧れていることが一番の理由です。




「もう! なんなんですの!?」


 冒険者活動を始めた私ですが……うんざりしてしまいます。

 男性の方々は、私の身体をジロジロ見てきたり口説いてきますし……。

 女性の方々は、陰口や嫌がらせをしてきますし……。


「ワタクシは……ただ、普通に冒険者として活動したいのに……」


 もちろん、私にも責任はあります。

 昔から人見知りが激しく、ついキツイ言葉を使ってしまうことです。

 今では、どちらが本当の自分かがわからないほどになってしまいました。


「でも……最初に出会ったあの人は、今考えると紳士的でしたわ」


 冒険者生活を送ってみて気づきました。

 平民と関わることがなかったのですが、おそらく私が変なのでしょう。

 あのような親切な方にまでキツイ言葉をかけてしまうなんて……。


「で、でも……どう言ったらいいかわからないですもの……」


 ただ、ありがとうと言いたいだけなのに……。


「あの方も新人と言っていましたわね……また、会えるかしら?」




 それから一月が過ぎて……また、私は荒れていました。


「もう! どうしてですの!?」


「ホムラ、どうかしたかのう?」


「お爺様……男の方々が、私の身体を舐め回すように見てくるのです……」


「それは致し方ないことじゃ。お前は亡き娘によく似た美貌の持ち主じゃからな」


「で、でも……無理矢理に連れ込もうとするのはどうかと思うのです……」


「うむ……安心せい。其奴は最近見るか?」


「え?……そういえば、最近は見ないような……?」


「ならば気にするでない。そういう輩は放って置いても減っていく……自滅したりしてな」


「そ、そうなのですね……」


 お爺様の言う通りに、そういった方々は減ってはきましたが……。




 それから数日後、また私は荒れております。


「どうしてですの!?」


「今度はどうしたのだ?」


「パーティーを組んでくれる方がいなくて……」


 男性は相変わらずだし……。

 たまに組めても、パーティーを置いて逃げ出すような方だし……。

 貴女といると自分が惨めになると、女性には敬遠されるし……。

 良いと思う女性は、冒険者を辞めてしまうし……。


「それでは冒険者は辞めるかのう?」


「い、いえ! 二十歳まではお願いしますっ!」


「しかし、大事な孫をそんな状態にするのものう……」


「ユ、ユウマという方もいますっ!」


「ほう? 其奴はどんな男なのだ?」


「え、えっと……優しくて紳士的な方ですわ……あと、しっかりと叱ってくれると言うか……」


 何より……応援してくれると。

 女性は結婚して子供を産むのが一番と言われる世の中で……。

 そんなこと言ってくれる人は初めてのことでしたわ。


「ふむ……彼奴の孫か……それに奴の甥っ子か」


「え? ……ご存知なのですか?」


「まあ、少しな……だが、それは本人以外は話さん方がよい」


「ええ、それはわかっております」


「ならば、パーティーに入れてもらえばいいのではないか?」


「そ、それは……でも、ライバルって言ってしまいました……」


 もちろん……入りたくないと言ったら嘘になります。

 あの方に惹かれている自分がいることも……。


「そうか……ならば、あちらから誘われるような人物になることじゃな。それならば、何も問題はあるまい?」


「——!! そ、そうですねっ!」


 そうだわ! 私が一流の冒険者になって……。


 そしたら——ユウマの方から誘ってくれるかも!


 よーし! 見てなさい! ユウマ! 貴方を振り向かせてみせますわ!

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