第14話対ゴブリンジェネラル

 一致団結した俺達が前線に向かうと……。


 おそらく、下級冒険者の中でも上位の連中だろう。


 その人達が、魔物と戦っている。


「魔法や弓が使える者は、この位置から援護!」


「「「はい!」」」


「怪我が治りきってない者はその護衛を!」


「「「おう!」」」


「体力が残ってる奴は——俺に続け!!」


「「「おおぉぉーー!!」」」


 一気に駆け出して魔物達を駆逐していく!


「ファイアーボール!」


「……おい!? 魔法は後ろって言ったろ!?」


「やですわ!」


「えぇー……付いて来ちまったもんはしょうがないか。ホムラ——俺の側から離れるなよ?」


「っ〜! わ、わかりましたわ!」


「団長! 雑魚は始末したぜ! 俺はどうする!?」


「ソルジャー系を頼む! 俺はゴブリンメイジを仕留めてくる!」


「おうよ!」


「ホムラ! 俺がお前を守る! ゴブリンメイジを魔法で仕留めてくれ!」


「も、もう! なんなんですの!? やりますわよ!」


 ん? 何故、頬を赤らめる?


「まあ、いいか。よし、ついてこい」


「……無自覚なのかしら?」




 少し離れた位置にあるメイジ達に近づくと……。


「ユウマ! 気づかれましたわ!」


 メイジ達から、火の玉、水の玉などが飛んでくる。


「任せろ! ……聖なる壁よ! 我々を守りたまえ! ホーリーガード!」


 俺の目の前に光の障壁が現れる。

 その壁に魔法が弾かれていく。


「す、すごいですわ……神聖魔法派生である防御魔法まで」


「母上ほど得意ではないがな」


「守るってそういう意味でしたのね……」


「ん? よくわからないが、さっさとやってくれるか?」


「そ、そうですわね! 風よ!舞うがいい! ウインドスラッシュ!」


 いくつもの風の刃が、ゴブリンメイジ達を切り裂いていく。


「おっ、やるな。威力が低い代わりに、数の多い魔法か」


 メイジ系は総じて防御力がないから有効だな。


「ホホッ! もっと褒めても良いですわよ!」


「これさえなきゃなぁ……」


 その後もホムラを守りつつ、メイジを始末していく。




「よし……片付いたか」


「ユウマ! あれを!」


 魔物達が減り、見通しが良くなったことで……見えた。


「あれがボスだな」


 奥の方に一際目立つゴブリンらしき魔物がいる。


「団長!」


「アロイス、状況は?」


「こっちはもう平気だぜ。あとは、任せても大丈夫だ」


「よし……じゃあ、俺たちは奴をどうにかする」


「おうよ!」


「ええ!」


 三人で、急いで現場に駆けつける。



 駆けつけたのはいいが……死屍累々だな。


「生き残りは……いないか」


「ランク六級の魔物だからな。だが、善戦はしたみたいだぜ」


「ええ、残りは……あいつだけですわ」


「グガァァァ!」


 奴は両手に人間も持ち、雄叫びをあげる。


「アロイス! 俺が遊撃に回る! 隙をついて大技を! ホムラ! お前は常に後ろを狙え!」


「おう!」


「わかりましたわ!」


「では……参る!」


 剣を抜刀して下段に構えつつ、奴に向かっていく。


「ゴア!」


「シッ!」


 爪と剣が衝突する。


「ゴガァ!?」


「チッ!」


 双方が弾かれ、一歩下がる。


「パワーはあちらが上か。魔力も残りは少ない……無理は禁物だな」


 俺の防御力は低いので、一撃でも食らえば大ダメージを受ける。


「こういう時、ガード役がいてくれたら楽なんだが……」


「グガァァァ!!」


「まあ、ないものは仕方ないか」


 決して無理はせずに回避に専念する……そうすれば。


「我が敵を貫け! ファイアーアロー!」


「ゴガァ——!?」


 背中に命中し、奴が仰け反る。


「オラァ!」


 その隙をついて、アロイスが重い一撃を食らわす!


「ゴァァァ!?」


「効いてるぞ! このまま削る!」


「おうよ!」


「了解ですわ!」


 そして……終わりが見えてくる。


「ゴガァ……ゴガァ……ガァァァ!!!」


 動きが鈍くなった奴が、最後の雄叫びをあげる。


「最後のがくる! 各自、最後まで気を抜くなよ!?」


「おう!」


「わかっていますわ! あっ——」


 ホムラが糸が切れたように——膝をついてしまう。

 魔力切れだろうが……それを見逃すやつではない!


「グガァァァ——!!」


 一直線にホムラに向かっていく!


「ま、待ちやがれ!」


 アロイスでは間に合わない!

 まだ未完成だが——やるしかない!


「ハァァァ——!」


 剣全体に魔力を通す。

 それを押し留めるイメージ。


「ゴァァ!!」


「ワ、ワタクシは誇り高き一族のホムラ!」


 虚勢だろうが、ホムラは立ち上がって敵を睨みつける。

 気に入った……尚更のこと死なすわけにはいかないな!


「魔光剣!!」


 剣から光の刃が解き放たれる!


「グギャ——!!」


 その攻撃は奴の背中を切り裂く。

 が……魔力切れで、俺も膝をついてしまう。


「アロイス! 後を頼む!」


「もちろんだ! 食らいやがれ!」


 アロイスの斧による一撃がジェネラルを直撃する。


「グガッ……ガ……」


 二メートルを超える巨体がゆっくりと地に伏せる。


「ゼェ、ゼェ……な、何とかなったぜ」


 俺は立ち上がり、ホムラに近づいていく。


「よっ、平気か?」


「な、何故——助けたのです?」


「はい?」


「ワタクシにはわかりますわ……今の技は、身体に負担がかかるはず」


「さすがは魔法使いってことか」


 確かに未完成だし、魔力消費のわりには威力も低い。

 何より……無理矢理に魔力を通すために、身体への負荷がかかる。


「茶化さないでくださいませ! 冒険者の生死は自己責任ですわ! 膝をついたのは魔力調整を誤ったワタクシの責任! パーティーを組んでるわけでもない貴方が身を削ってまで助ける義務はありませんわ!」


「まあ、それはそうなんだが……一応、一緒に戦った仲間だし」


「甘い男ですわね……」


「それに——お前のこと気に入ったし」


「なっ、なっ——!?」


「度胸もあるし、意外と優しいし」


「容姿以外を……そんなの……それにワタクシは優しくなど……」


「そうか? 他の冒険者を助けていたし、俺の身体を気遣ってくれただろう?」


「え……? そ、それは……」


「言葉遣いはアレだけど、そういうのは伝わったしな」


「はぅ……ど、どうしよう……」


「団長! どうやら、敵さんも退いたみたいだぜ!」


「そうか……何とか生き残ることができたな」


「ユ、ユウマ!」


「ん? どうした?」


「今日のところは貸しにしときますわ! いずれ返すので——覚悟なさい!」


「クク……相変わらず面白い奴。ああ、わかった。ホムラの気がすむようにしてくれ」


 ホムラもパーティーに誘いたいところだが……断られそうだな。


 ……ライバルのパーティーには入りませんわ!とか言われそう。

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