第13話戦闘開始
その後、サウス伯爵による演説が行われた。
そんな暇があったら、さっさと前線にいる兵士達を助けに行けよと思う。
この間にも、村々が襲われているかもしれないのに。
だが、これの話の後に配属説明があるので無視はできない。
「ようやく終わったか……」
「無駄に長かったぜ。どうしてお偉いさんっていうのはああなんだ?」
「さあ? 一生わかることはないかもな。さて、俺達の配属は……」
「俺達はゴブリンやコボルトなんかがいる所に配属だな」
「まだ八級だからな。敵はいないが、油断すれば危うい。数の暴力は危険だ」
「わかってるならいいぜ」
その時、近くから怒鳴り声がした。
「おい! ウスノロ! さっさと運べや!」
「は、はい!」
「お前は使えないんだから、荷物運びくらいまともにやれや!」
「す、すみません!」
……体格が良い男性が、何人分もの大きな荷物を抱えている。
それをパーティーと思しき奴らが罵倒している。
「なんだあれは? 仲間を荷物扱いしているのか?」
「あぁ……あいつか」
「知っているのか?」
「まあ、古い人間ならな。確か……イージスとか言ったな」
「何故、彼はあんな目にあっている?」
「冒険者歴は長くて……確か、四年目だったか?だが、一向に強くならなくてな。戦闘でも鈍臭くて、魔物退治で失敗ばかり。なので、まだ九級だったはず……」
「そうか……結構良い体格しているのに」
「最初は皆が期待していたが……まあ、あんな感じになってしまった」
「だから、荷物運びをしているのか……ふむ」
「おい、可哀想とか言うなよ? 嫌なら辞めれば良いだけだ」
「ああ、わかってる。気分は悪いがな……さあ、行くか」
すぐに準備を済ませて、前線へと向かう。
そして……到着した時、すでに悲惨な状況だった。
「グハッ!?」
「く、くそ!?」
「ギャキャ!」
「ガルッ!」
「や、やめてー!?」
「アァァァ——!?」
男達は血を流し、女達は犯されそうになっていた。
「チッ! どうなってやがる!」
「アロイス! 話は後だ! 生きてる人間を救うぞ!」
「おうよ!」
アロイスと二手にわかれ、ゴブリンらコボルトを始末していく。
この程度の魔物なら、こんな状態にならないはず……。
何かが起こったのだろうな……。
「た、助かった!」
「あ、ありがとうございます!」
「礼は良いです。その代わりに説明をお願いします」
「あ、ああ……最初はゴブリンやコボルトだけで俺達みたいな下級冒険者でも平気だったんだ」
「そしたら突然召喚士が現れて……ゴブリンソルジャーや、ハイコボルト、ゴブリンメイジまで出てきて……最後にゴブリンジェネラルまで……タンデム男爵がすぐに殺されちゃって……」
神出鬼没の召喚士か……アイツらは謎が多い。
突然現れるパターンが多いらしい。
そして召喚したら逃げ出すために、中々仕留めることが出来ない。
「事情は大体わかりました。下級が戦える相手じゃない。今の指揮官は?」
「わ、わからない……バラバラになってしまって……」
「なるほど……統率が取れてないと……ん?」
今、どっかで聞いたことある声が……。
「消えなさい! ウインドカッター!」
視線の先には、ホムラが孤軍奮闘する姿が見える。
「魔法使いが護衛もなしで無茶を!」
「あ、あの人! あの人いなかったら、もっと酷い状態に……!」
「そうか……君達は生きてる者を一箇所に集めてくれ。事情は後で言うから」
「は、はい!」
「わかりました!」
俺はその返事を背にして、ホムラに迫る魔物を斬り伏せていく。
「キキャー!」
「邪魔だ」
「ガルァ!」
「消えろ」
そして……。
「あ、貴方は!? ユウマですわね!?」
「よっ、ホムラ」
「た、た、助かりましたわ……ありがとぅ……」
あれ?てっきり礼なんか言わないですわ!とか言われるかと。
「お、おう……どういたしまして。一人か?」
「ええ……今日はソロで来てますの」
「おいおい、魔法使いがソロとか何を考えてる?」
「あ、貴方には関係ないですわ! それより!」
「ああ、わかっている。俺が敵の注意を引くから、この間のを叩き込んでくれ」
「良いですわ!」
「よし、頼りにしてるよ。ホムラの魔法は強力だからな」
「フ、フンッ! 当たり前ですわ!」
「では……参る」
「ガル!?」
「ギャキャ!?」
敵を斬りつけて離脱を繰り返す。
そうすることにより、俺を中心に魔物を集めていく。
そして、俺は攻撃よりも避けることに専念する。
「これで時間を稼げば……」
すると……。
「団長! こういうことか!?」
俺の狙いに気づいたアロイスが魔物を引き連れてきた。
「ああ!」
「ユウマ! いきますよ!?」
「よし! アロイス! そこから離れろ!」
「おうよ!」
それぞれ全力でその場から退避する。
そして……次の瞬間。
「ファイアーウォール!!」
熱が俺を襲う!
「アチチッ!」
「アツッ!!」
アロイスも同じようだ。
「だ、大丈夫ですの!?」
「大丈夫じゃねーよ! ギリギリだよ!」
「俺、死ぬかと思ったぜ……」
「生きているなら問題ないですわ! それに貴方が言ったのですよっ!」
「いや、それはそうだが……」
「団長! 言い争いしてる場合じゃねえぜ!」
「おっと、そうだった。アロイス、残りの敵を頼めるか?」
「おうよ!」
「ワタクシは?」
「この後仕事があるから休憩してくれ。ん?俺に意見を聞くのか?」
「く、悔しいけれど……貴方の指示は的確ですし」
「そうか……助かるよ。じゃあ、一緒に来てもらえるか?」
「ええ、わかりましたわ」
怪我人が集まった場所に行く。
「皆さん! 今から回復魔法をかけます! じっとしててください! 先に言いますが、お金などは一切頂かないのでご安心ください!」
「え!?」
「ど、どういうことだ!?」
説明する時間もないので、すぐに準備を始める。
回復魔法の使い手が希少な理由がある。
それは、魔力コントロールが難しいことだ。
何故なら、回復し過ぎてはいけないからだ。
行き過ぎた回復は身体に毒になる。
「魔力を集中……適度に全員が回復……癒しの光よ!かの者達を癒したまえ!エリアヒール!」
怪我人達に光が降り注ぐ。
「おおっ!?」
「な、治った!!」
「ほ、本当に請求しないんだな!?」
「ええ! もちろんです! これから共に戦う仲間ですから」
「よし! 俺はやるぞ!」
「私もよ! ここで退いたら恥さらしだわ!」
よし、戦意が戻ってきたな。
「ユウマ……優しい方……」
「ん?」
「い、いえ! ほら! さっさと行きますわよ!?」
「ああ、そうだな。みなさん! これから共に前線に行ってくれませんか!? 力を貸してください!」
「オォォォ——!!」
「団長!」
「アロイス! ご苦労だった! 二人とも——いくぞ!!」
「おうよ!」
「ワタクシに任せなさい!」
アロイスとホムラ、冒険者の方々を引き連れて前線へ向かうのだった。
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