外伝~アロイス~

 ある日親友に呼び出された俺は、とある頼みごとをされた。


「あぁ!? なんだって俺がそんなことを!?」


確かに新人冒険者のお守りみたいなことはしているが……。

パーティーを組んで面倒を見ろとは……。


「そんなこと言うなよ。俺とお前の仲だろ?話だけは聞いてくれねえか?」


「シグルド……まあ、いいだろう。お前が俺に頼むことなんか滅多にないしな」


「悪いな……えっと、どこまで話した?」


「貴族の次男坊である、お前の甥っ子が家を追い出されるかもしれないってこと。そいつは冒険者になるだろうということ。ただ、知り合いがいないこと。それで、その面倒を俺に見てくれってことだ」


「おっとそうだった……ユウマというんだが、少々複雑な育ちをしていてな……高すぎる能力が故に、親と兄に疎まれていてな……」


「お前みたいにか?」


 確か、兄貴に疎まれて国を出たはずだ。


「まあ、似たようなものだ。ただ、俺のせいでもあるってことだ」


「……なるほど。お前の兄貴が、息子とお前を重ねているわけか」


「ああ、そういうことだ。全く、我が兄貴ながら情けなくなるぜ」


「だからお前も力を貸したいと?」


「もちろん、それもある。ただ、俺の願いに応えてくれるようならの話だが……」


「お前を倒せるような剣士になることか……それを自分で育てると?」


「正直言って、剣聖を決める大会では拍子抜けした。あれならS級冒険者の方が強かったぜ」


「当たり前だろうが!」


 S級冒険者とは人外の存在だ。

 魔物の大群を殲滅し、最強と言われるドラゴンすら1人で倒してしまう。

 ……まあ、こいつがそれ以上の存在ってことか。

 さすがは、始祖であるデュランダル一世の再来と言われるだけのことはある。

 ……普段は、ただの呑んだくれだが。


「そんな訳だが……俺の見解では、あいつの才能は俺以上だ」


「なに!? 最強の剣聖と言われるお前もより……?」


「もちろん、やるまではわからないがな。ただ、その可能性と片鱗が見える」


「そうか……少し興味が湧いてきたな」


 剣に関しては自信の塊のこいつが、ここまで言うやつか。


「おっ、ほんとか? 正直言って、俺が最も信頼しているお前にしか頼めないことだからな」


 ……嬉しいこと言いやがる。

 親友であり、最強の男に頼りにされる……悪くねえな。


「わかった……ただし! 俺の目で確かめさせてもらうぞ?」


「ああ、わかってる。お前のお眼鏡に叶うといいぜ」


 こうして、俺は親友の頼みを受けることにした。




 それから数日後、その男はギルドにやってきた。

 見た目は、シグルドとは似ても似つかぬ姿だった。

 身長175ほどで全体的に細身だし、優男風のイケメンだった。

 綺麗な銀髪が特徴的でもある……まるで女みたいに綺麗な奴だ。


「俺のいけ好かないタイプじゃねえか?」


 俺は、よく山賊と言われる。

 厳つい風貌で、よく間違われる。

 もちろん、女にはモテない。


「断るか……なんか合わなそうだ」


 一応、その後の様子を見て……俺は少し興味が湧く。


「ほう? 冒険者を助けたか。しかも、見た目とは違い……」


 中々男らしい性格のようだ。

 それに女に間違われることもイヤというところが、少し俺と似ている。

 何より……あの啖呵を切る感じは、シグルドに通ずるものがある。


「うむ……前言撤回だ。少しだが、気に入ったかもな」


 その後、そいつの後を追ってギルドを出る。




 おいおい……足がはえぇ!

 置いてかれないようについていくのが精一杯だった……。


「フゥ……なんとか見失わずにすんだ。さて……おっ、コボルトのお出ましか」


 どれ……シグルドが認める力っていうのを見せてもらおうか。


「……流れるような剣技……シグルドとはタイプが違うが……」


 隙のない佇まいと、敵に攻撃させない速さ。

 回避型でカウンタータイプか。

 遊撃もできるし、回復魔法で後衛にもなれるか。

 これは……条件が揃えば大成するタイプかもしれん。


「ふむ……とりあえず、頼みを聞く方向で行くか」


 その後声をかけて、無事にパーティーを組むこととなる。

 ……一悶着はあったけどな。




 それから依頼を受ける中、色々と変化が訪れる。


「あらあら、良いのかしら?」


「ええ、大した手間ではないですから。アロイスさん、待っててくれますか?」


「いや、俺も手伝うぜ。それと、敬語はやめろって言ったろ?これからは対等の仲間だ」


「す、すみ……悪い、慣れるまで我慢してくれ」


「クク……おうよ」


 二人で依頼主の用事を片付ける。

 それは依頼するまでもなかったり、依頼するのが申し訳なくて依頼されないものだ。

 簡単な荷物整理だったり、ちょっとした高い所の庭木の手入れなど。

 こいつは嫌な顔一つもせずに、そういったことを引き受けている。


「俺はこんなことするタイプじゃなかったんだが……」


「ごめんな、アロイス」


「いや、良い。不思議と悪い気分ではないしな」


「アロイスは良いやつだな。お前とパーティーを組めて良かったよ」


「へっ……そうかい」


 それはこっちのセリフだ。


 そう……一緒いるせいかわからないが、不思議とそういう気分になる。


 その後も過ごすうちに、どんどんとユウマを気に入る自分に気づいていく。


 だが、少々お人好しすぎる点があるからな……。


 俺が面倒を見てやんねえとな!

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