第7話パーティーを結成する
ついでなので、一緒に王都に帰ることにする。
「しかし、良い戦いっぷりだったぜ?」
「ありがとうございます。一応、剣はそれなりに使えますので」
「いや、それなりってレベルじゃなかったぞ? ただ、一人で冒険者を続けるのは良くないと思うぜ?」
「ええ、それはわかっているのですが……知り合いがいないもので……」
ソロでの危険性は重々承知している。
ただ、同い年くらいパーティーは小さい頃からの仲間とかだし。
年配のパーティーの方々だと、いずれ辞めちゃうし。
そうなると、中々難しいところがある。
「……良かったら、俺と組んでみるか?」
「え……?いや、しかし……ランクが違いすぎますよ?」
「おまえさんなら、すぐに追いつけるさ。確か……ランク二以上の差がなければ、パーティーを組んで良かったはずだ。お前さんは、それをクリアすれば九級に上がる。そうすれば、俺とも組めるということだ」
話が美味すぎるな……。
「何が狙いですか?」
「おっと、怖い顔すんなよ。そうだな……お前さんを気に入ったからじゃダメか?」
「……どの辺りがですか?」
「新人にして、その剣の腕前。歳に似合わず礼儀正しい姿勢。ギルドに入ってきた時の一悶着。これだけでも興味を持たないほうがおかしい」
「そ、そういうものですか?」
「ああ、お前さん——世間知らずだろ?」
「うっ……ええ、そうです」
貴族街を中心とした生活しか知らないからなぁ……。
あんまり目立つと、親父と兄貴がうるさかったし……。
人気をとって跡を継ぐ気か!?とか。
平民に媚を売るんじゃない!とか。
「俺が色々と教えてあげたいと思ってな。俺自身も、ちょうど前のパーティーを解散したところで困ってたしな」
「なるほど……貴方にメリットはあるのですか?」
「そりゃーあるさ。一人より二人の方が良いに決まってる。それにお前さんは伸びると見た……青田買いってやつだな」
……まだ、美味すぎる気もするが。
しかし、どちらにしろ仲間は欲しかったし……。
それが先達者の方ならいうことはない。
「そうですね……」
「それに……俺も組む相手がいなくてな……こんな見た目だから勘違いされるんだよ。前のパーティーでも、信頼を得るまでどれだけ時間がかかったことか……!」
「そ、そうなんですね……わかりました……では、よろしくお願いします」
確かに山賊にしか見えない……。
これじゃ、女性の方とかは敬遠するだろうな……。
「おうよ! よろしくな!」
その後共にギルドへ行き、依頼達成の報告をする。
「はい、確かに。これで、九級に上がりました。ただ、ここからは上がりにくいのでご注意下さい。依頼内容も難易度が上がりますし……あれ?アロイスさん?」
「おう、そういうのは大丈夫だ。俺が後で言っておく。それより、パーティー申請を頼みたいんだが……」
「アロイスさんが見込んだ新人さんということですか……ええ、少々お待ちください」
「えっと……有名な方なんですか?」
「いや、大したことはないさ。ただ顔が広いことと、この見た目がな……」
「なるほど……俺は慣れましたけどね」
「おっ、そうか。さすがだな」
……さすが?どういう意味だろう?
「はい、お待たせしました。お名前は如何しますか?」
「お名前?」
「パーティー名だな。お前さんが決めな」
「え?いきなり……じゃあ、白き風で」
ふと頭に浮かんできた言葉を、そのまま吐き出してみる。
「ん?どういう意味だ?」
「えっと……新鮮な風、新しい風って感じですかね……」
「ほう?冒険者に新しい風か……良いと思うぜ」
「ええ、素敵だと思います。では、手続きをしますので、お声掛けをするまでお待ちください」
その間に掲示板を眺めることにする。
「さて、八級なら俺も受けられるな」
「自分のランクの上下一個まで受けられるんでしたよね?」
「ああ、そうだ。これからは八級を受けていこうぜ」
「ところで、年齢を伺っても良いですか?」
「あ?ああ、そういや言ってないか。いいか?笑うなよ?」
「え、ええ……」
「二十八だ」
「え?」
「二十八だよ!」
「……ぷっ……いえ、そうですか」
「おい?今、笑ったろ?」
「いえ、そんなわけがありません」
「まあ、爆笑しないだけいいか。わかってるよ、俺だって。老け顔だからな」
見た目の山賊具合といい……四十歳くらいかと思ってた。
叔父上と同い年ってことか……うん、どっちも老け顔だった。
「いえ、身内にもいますので気にはなりません。俺の年齢は十八歳です。これからは、ユウマと呼んでください」
「おう、ユウマ。じゃあ、アロイスと呼んでくれ」
「いや、年上を呼び捨てにするわけには……」
「戦場で——いちいちさん付けをするのか?」
「それは……」
「よし、先輩としてアドバイスだ。これからは命を預け合う、つまり対等でなくてはならない。ならば、さん付けなど無用だろ?」
「理解はできますが……」
「敬語をやめろとは言わないが……まあ、少しずつ慣れてくれ」
「わかりました、アロイスさ……アロイス」
「クク……ああ、よろしくな」
その後、無事に受理され……白き風という名のパーティーが結成された。
俺は知る由もない……ここから全てが始まったことを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます