第707話 ルーシー達にダサいリュックを渡す

 ダンジョンの注意事項なんかは話したし、ゴブさんを実際に見ることでこのダンジョンの危険さも伝わったと思うので、そろそろミスフィート軍の精鋭達をアリアダンジョンに解き放ってもいいかな?



「マジックバッグを持ってるのは、ミスフィートさん、カーラ、カトレア、和泉、ナターシャの五人か」


 それ以外の四人に、めちゃめちゃダサいリュックを渡していく。


「緑とピンクの色合いだけでも酷いのに、さらに水玉模様の入ったリュックとか、もうこれ嫌がらせとしか思えないっスよ!」

「ワタクシのもかなり酷いですわ!群青色に血が飛び散ったような模様って!」

「こっちも最悪」

「これは酷い」


 不人気四天王を渡したので当然ながら大不評だ。軍の皆には新品のマジックバッグを渡したいので、貸し出すのは使い物にならない酷い柄のリュックとなるのです。


「酷いと思ったからこそ敢えてそれを渡したんだ。そんな柄のマジックバッグを貰っても喜べないだろ?貴重なリュックとはいえ、さすがにその柄ではな・・・」

「あはははは!マジックバッグを楽しみにしてる人達にそんなの渡せないもんね!今日だけなんだから我慢しなさい!」

「しょうがないっスね~。ちゃんとウチのマジックバッグ完成させとくっスよ?」

「四人分くらいなら今日中に完成するハズだ。1階層で骨剣やシルバーウルフの毛皮が手に入るけど、今日は魔石を集めるだけにしておいてくれ」

「そのつもりっスよ」

「1階層でシルバーウルフが出てくるの!?あの毛皮ってすごく貴重じゃない!」

「カーラはマジックバッグを持ってるから、積極的に狙っていってもいいかもな。俺がやったように、毛皮が欲しい人を募集して解体してもらうんだ。そうすればこっちは貴重な肉が手に入るし、全員幸せになれるぞ!」

「それいいわね!」



 せっかく大勢で来たのだからと、和泉は4階層に直行せずに、ナターシャとルーシーと一緒に狩りを楽しむそうだ。


 効率で考えたら4階層だけでいいんだけど、それじゃあつまらんもんな。

 やっぱり1階層ずつ攻略していくのが王道なのだ。



「このダンジョンは最初に出てくる魔物からいきなり強いので、和泉はルーシーとナターシャに自分なりの攻略法を教えてやってくれ」

「え?この中で私が一番弱いと思うんですけど!」

「それでも経験者だからな。それ以外の人達は問題なく戦えると思うけど、たまに硬い魔物が出てくるからメイスを持ってくのを忘れずにな!」


「「はーーーーーい!」」


「皆の者、ガチャを回す為に魔石を集めまくるのだ!では狩りを始めるぞ!」


「「オーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 こうして、新メンバー達はダンジョンへと突入して行った。






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 こっちの仕事もなかなか大変で、少し慣れてきたとはいえ失敗することは許されないから、慎重にスピーディーに6個のマジックバッグを完成させた。


 続けて、リュックよりも容量の少ないウエストポーチをマジックバッグにする練習をしたんだけど、無様にも2個破裂させてしまった。


 でもそのあと2個連続で成功させたので、ウエストポーチの方も少しはコツがわかってきたかな?


 虎徹さんのように、それがたとえ小さな巾着だろうとも絶対に破裂させないパーフェクトな職人を目指さなきゃだ!



「あっ、最初の部屋ですよ!やっぱり骨が出現したら部屋の近くなんですね」

「ただいまーーーーー!」


 カトレアとカーラが帰って来た。


「おかえり!ダンジョンはどうだった?」

「手応えのある魔物ばかりで面白かったですね~」

「犬が思ったよりも速くて、危うく一発もらいそうになったわ!」

「まあ犬呼びで構わんけど、アレがシルバーウルフな」

「鑑定したから知ってる。でもアタシの部屋にある毛皮よりも汚かったよ?」

「そうそう!最初は薄汚れてるけど、聖水にぶち込んどけば綺麗になるんだ」

「はあ??」

「だから、そこにある女神の泉に放り込んでおくんだよ」

「アレは貴重な聖水でしょ!そんなメチャクチャな使い方していいの!?」

「狩った獲物は聖水で清める。それがここでの常識だ!」

「なによそれ!?」



 カーラとそんな会話をしていると、仲間達が続々と帰って来た。



「疲れた~」

「噂通り、かなり難易度の高いダンジョンね~」

「いっぱい魔石が集まったっス!」

「お疲れさん!ルーシー、頼まれていたマジックバッグが完成してるぞ」

「やったーーーーー!このクソみたいなリュックは返すっス」

「クソみたい言うなし。まあ、本当に酷い柄だけどな」



 リタ、リナ、お嬢、ルーシーの四人に、完成したマジックバッグを渡した。



「待ってた!」

「これで次からは獲物を持ち帰れる!」

「この可愛いリュック、本当に待ち遠しかったですわ!」

「やっぱりコレっスよコレ!!」


 それぞれに説明書を手渡していく。


「えーと・・・、まずは所有者登録ですわね」

「自分の血を一滴付ければいいらしい」

「やってみよう」

「血液は付着しないから大丈夫って書いてあるっスね」



 説明書には、いつもされる質問とその答えをすべて書いておいたのだ。


 四人共登録を完了することが出来たようだな。



「メイスを収納してみるといい」



 四人は言われた通りにメイスを収納したが、リュックが全然重くなっていないことに気が付いた。


 そして『メイス出ろ』と願うだけで、出したい場所にメイスが出せることに驚く。すなわち、いきなり手の中にメイスを出現させることが可能なのだ。


 転移のように障害物を避ける機能が備わっているので、誤爆して体内に出現してしまうようなことは無い。っていうかそういう使い方は出来ない仕様だ。



「凄すぎる!」

「マジックバッグがこれほど便利なモノだとは思わなかった!」

「持ち運ぶのが楽なのは想像通りですけど、武器の持ち替えまで簡単に出来るようになるとは衝撃的ですわ~~~~~!」

「ねえねえ小烏丸!リュックがパンパンになるほど物を詰め込んでも、まったく重くならないんスか?」

「ならないぞ。空っぽのリュックを背負ってるだけだから、これから先は重さによる負担が一切無くなるだろう」

「うひょーーーーー!このリュックが今まで手にした中で一番の宝物っス!」

「間違いないですわ!!」



 マジックバッグで盛り上がっていると、ミスフィートさんが『そろそろガチャを回しにいくぞ!』と言ったので、全員急いで手と顔を洗った。


 今回俺は参加せず、皆が喜ぶ様子をただ見ていようと思ってる。


 コテツ商店で買い物しまくったので、手持ちの魔石も少ないままだし、正直欲しい物も無いんだよね。


 ミスフィートさんを先頭にゾロゾロと大広場を通り抜け、2階層へ降りる階段のある部屋をスルーし、ガチャ部屋へと入った。



「「おおーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 ガチャなんてまったく知らない人達が、その意味不明な風貌のガチャマシーンを見て大歓声をあげた。


 ゴブリン案内人も結構面白いけど、ガチャを披露した時のこの感じも最高だな!

 

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