第702話 虎徹さんに恩返し
仲間達三人にマジックバッグをプレゼントした翌日。
いつもなら三人を4階層に送ってから一日が始まるんだけど、今日は親父がチェリンに譲ったドラゴンの解体をすることになった。
そして、数え切れないほどドラゴンの解体をしてきた俺の指導を受けながら、三人はどうにか巨大なドラゴンの解体を終わらせることが出来た。
「なるほど。脇差しの使い道ってドラゴンの解体に最適だったのか」
「丁度良い長さで使いやすかったわね!」
「ドラゴンじゃなくても解体は全部これ一本だよ!」
「切れ味抜群だから、思ったより簡単だったろ?」
「もう1回くらい経験すれば、一人で出来るかもしれんな」
「私はまだちょっと自信無いかも・・・」
「一人なんて無理無理無理ーーーーー!」
「ブラッディナイフで血抜きさえしてあれば、失敗しても大惨事にはならないだろう。もう一本くらいあると便利なんだけどな~」
「闇ガチャを回さんと手に入らんのだろう?」
「ウム」
「一点狙いなんて無謀よ!他の装備品が出ても使い道が無いし」
「コテツくんみたいに屍になっちゃうよ!」
そうなんだよ!こっちのガチャはマジで1点狙いになるから、とてもじゃないけど回す気になれんのだ。そんなもん魔石がいくつあっても足りん。
俺達が今いる場所は、一階層にあるもう一つの女神の泉がある部屋なんだけど、しっかり風景を記憶したから、次からは転移で飛んで来られるようになったぞ。
朝からドラゴンの解体という大仕事が終わったので、みんなで手を繋ぎ、いつもの虎徹さんの部屋へと転移した。
「あれ?虎徹さんがいる」
「忘れ物を取りに来ただけだ。ドラゴンの解体は終わったのか?」
「清めておけばさらに美味くなるとか小烏丸が言うんで、女神の泉にぶち込んで来たところだ」
「それはマジだぞ!ちなみに最初に発見したのは、何を隠そうこのオレだ!」
「変なこと考えるのね~」
「カニも一匹浮かべて来たよ!あとで食べ比べしてみるんだ!」
あ、そうだ!せっかく虎徹さんがいることだし、今まで色々とお世話になった恩返しをしておこうかな?
「あ、虎徹さん!今から親父達を4階層に送って来るんで、ちょっと此処で待っててもらえませんか?」
「んあ?何か用事か?まあ構わんけど」
「んじゃとりあえず行って来ます!」
親父とグミとチェリンを4階層まで連れて行き、すぐに部屋に戻って来た。
「お待たせしました!」
「んで?」
「その前に聞いておきますけど、虎徹さんって並列思考のスキル持ってます?」
「並列思考?どうだろ?」
虎徹さんがステータス画面を開き、所持スキルを調べ始めた。
「・・・ねえな。つーか、そんなスキルまであったのか!」
「それなら良かった。最近お世話になりっぱなしなので、虎徹さんに並列思考スキルの習得方法を伝授して、恩返ししようかなと思いまして」
「ほうほう!結構難易度が高かったりするのか?」
「普通に暮らしてたらまず習得出来ないレアスキルと思って間違いないです」
「レアスキルか!メッチャいいじゃん。教えてくれ!」
「じゃあ大広場に行きましょう」
二人で大広場まで移動した。
「俺が
「ブッ!お前、魔王とタイマン張ったのかよ!しかも佐渡ヶ島でかよ!」
「船が流されて越後で黄昏てた猫ちゃんを、佐渡ヶ島にあるという自宅まで送り届けたんです」
「わははははははは!猫ちゃん何やってんだよ!」
「んで、暇を持て余していた魔王に喧嘩を売られたわけです」
「もしかしたら知ってる魔王かも!?名前は?」
「ゼーレネイマス」
「マジか!?氷の大魔王じゃん!!」
何で知ってんだ!?
あ、そっか!ゼーレネイマスって、元々アリアの世界で大魔王をやっていたわけだから、魔王大戦が勃発した時に色々あったのかもしれねえな。
「知ってたんですね~」
「オレは闘ったこと無いけど、アレってぶっちゃけラスボスだぞ?死ぬほど強かったんじゃねえの!?」
「メチャクチャ強かったですよ。一応条件をつけて勝負を受けたんですが、殺すのは禁止にして、四肢を欠損させて戦闘不能にしたら勝ちってルールでした」
「ぶはっ!!お前よくそんなヤバイ勝負受けたな・・・。で、勝ったのか?」
「武器の性能に差がありましたから何とか勝てました。そして勝利の決め手となったのが、
「うおおおおおおおおお!その勝負すげー見たかった!!」
ゼーレネイマスの強さを知ってるってのがちょっと嬉しい。
ギャラリーはそう多くなかったけど、あの闘いは俺の誇りなのだ。
「というわけで、今からその戦闘の一部を俺と虎徹さんで再現します。あの時の行動をトレースすれば、
「大魔王と一体どんな戦闘をしたんだよ!?なんかドキドキすんな~」
「じゃあ早速始めるので、バフォメットの黒槍を持って構えて下さい」
「黒槍を構えろだと!?もしかしてガチなヤツなのか!?」
サイダーじゃない、中二病全開の黒衣を着た虎徹さんと対峙した。
「虎徹さんにはゼーレネイマスになってもらいます。というわけで俺が最初にくらった技からスタートです!」
「氷の大魔王役かよ!俺まだ氷魔法は初心者なんだけど?」
「いいレベル上げになるじゃないですか。んじゃ始めますよ!まずは俺の足もとの地面を凍らせて下さい。相手に気付かれないよう、足から冷気を出すのです!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いきなり高度な注文を受け、虎徹さんがフリーズした。
「いきなり無茶言うなし!初心者だって言ってんじゃん!」
「出来るか出来ないかじゃなく、やるんです!!」
「赤い流星、超スパルタかよ!!」
さあ、ビシバシいきますよーーーーー!
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