第700話 三人にマジックバッグを渡す

 とうとうマジックバッグが作れるようになったと聞いた仲間達が、ぱあーっと笑顔になった。


 思えば最初の頃は、ジャバルグ軍に対抗できる武器を授けてくれた救世主様という目で見られてたから、普通にマジックバッグを使っていても『小烏丸だから』って感じで、自分達とは違う人種なんだとスルーされていた。


 しかし長い間一緒にいて身近な存在となったからこそ、『その何でも入る鞄が手に入ったらなー』と思うようになってきたハズなんだよね。


 つーかどう考えたって、こんなん欲しいに決まってるもん。


 というわけで、皆の夢を叶える為にも出し惜しみはナシだ!作るのも大変だから全兵士に配布とかは無理だけど、幹部クラスには無条件でプレゼントしよう。


 恩賞方式にマジックバッグの配布を追加する感じがベストかな?

 貰える条件は、城に一室が与えられる足軽組頭以上ってとこか・・・。


 うん、ミスフィートさんが帰って来たら相談しよう。



「「うおっ!!」」



 ゴミの中に虎徹さんが湧いた。



「またコテツくんが突然現れたよ!」

「あははははは!ゴミに埋もれてて笑えるんですけど!」

「遅刻した罰だな」

「あっそうか!今から回復を待っていたら、夕食に30分遅れるじゃん」


 虎徹さんが、自分の周りに散らばっているゴミの山に気が付いた。


「なんだこりゃ!?誰だ!部屋を散らかした奴は!!」

「俺ですね。ここで問題です!なぜこんなに散らかしてしまったのでしょう?」

「問題?」


 エネルギー切れで動けないけど、虎徹さんが顔だけ左右に向けてゴミを確認した。


「あっ、マジックバッグを作ってたのか!」

「正解です!なかなか苦戦しましたけど、いくつか成功しましたよ!」

「やるじゃねえか!良かったな、おめでとう!」

「ありがとうございます!」


 虎徹さんでも、やっぱ最初はこれくらい苦戦したんだろな。

 空間を広げてる最中に突然破裂するから、感覚を掴むには数をこなすしかないし。


「ねえねえ小烏丸!マジックバッグってすぐ作れるの?」

「まだ職人としては全然未熟だから、急いで作ると破裂させてしまうかもしれん」

「じゃあ猫リュックをマジックバッグにしてもらうのは、もう少し慣れてからの方がいいか~」

「いや、急がなきゃ大丈夫だ。三人分くらいなら明日の午前中にでも作れる」

「本当に!?やったーーーーーーーーーー!!」

「海産物を持ち帰れるようになるわね!」

「そのマジックバッグって、どれくらい入るもんなんだ?」

「容量チェックまではしてないけど、たぶんドラゴンの1体くらい余裕で入るぞ!」

「マジか!!」


 術者の実力も重要だけど、元の鞄の大きさで容量が決まるっぽいしな。


 俺が背負ってるリュックくらいの大きさがあれば、ギリギリまで攻めることで最大積載量までいけるらしく、それ以上大きなバッグを用意しても、作るのが楽になるだけであまり意味が無いらしい。


 虎徹さんが言うには、ウエストポーチが使いやすくて大好評みたい。

 容量は普通なんだけど、とにかく楽だとか。


 虎徹さんが復活するまで時間があったので三人にそのことも話してみたんだけど、やっぱり容量と可愛さを重視したいと、猫リュック&犬リュックをマジックバッグにすることになった。親父は背負うタイプなら何でもいいとのこと。


 でも大バカ殿様の衣装を着ているわけだから、似合う色なんて限定されるよな?

 やはり親父にはあのリュックしかないだろう。


 というわけで、明日は完成したマジックバッグをすぐ渡すために、昼になったら一度部屋に戻って来ることになった。






 ************************************************************






「よし、完成!!」



 グミとチェリンがお気に入りの猫リュックと犬リュックは絶対破裂させるわけにはいかないので、マジックバッグを一つ作ってウォーミングアップしてから、急がず慌てず丁寧に、三人分のマジックバッグを完成させた。


 程なく通信機でお呼びが掛かったので、4階層までグミたちを迎えに行って、すぐに部屋へと戻って来た。



「待望のマジックバッグが完成したぞ!」



「「やったーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 グミに猫リュックを、チェリンに犬リュックを、そして親父には秘密兵器ともいえる伝説のリュックを手渡す。



「うわ~~~~~!今まで手にした中でこれが一番嬉しいかも!」

「すごく分かるわ!本当に嬉しい。ありがとう小烏丸!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 女の子二人は目を輝かせているが、親父の目だけ棒のようになっていた。



「まさか金色のリュックを隠し持っていやがったとは・・・」

「正直、こんなの一生使うことが無いと思っていた一品だ」

「他の色は無かったのかよ!!」

「あるけど、冷静になって自分の格好を見てみろ。普通の色が似合うと思うか?」

「ぐぬぬぬぬぬ・・・・・・」


 リュックサックって時点で最初からアウトなんだよ。たとえ黒のリュックとかでも、殿が背負うとかなり違和感があるのだ。


 ただ一つだけ、金色のリュックならギリギリ許容範囲内といえるだろう。


「そのままだと普通のリュックなんだけど、自分の血を一滴垂らすことで所有者登録が完了し、血を垂らした本人だけが使えるマジックバッグとなる」

「鑑定すると、『登録者以外は使用不可』とだけ書いてあるね」

「肝心な登録の仕方が書いてないじゃない!鑑定って意外と説明不足よね~」

「それは俺も前から感じてたけど、文字数制限とかがあるのかもしれん」

「よし!金色に釈然としないものがあるが、とりあえず所有者登録してみっか」



 リュックに血を垂らして、三人共所有者登録が完了した。



「名前が表示されたよ!」

「底に敷物とか敷いた方がいいのかしら?」

「いや、かなり雑にぶち込んでも全然大丈夫だ。中は特殊な空間となっていて、普通の鞄みたいに底にゴミが溜まるような仕様じゃないんだよ。例えば埃だらけの岩を収納すると、取り出した時に全く同じ状態で出てくるわけだ」

「なるほど・・・、中の物がぶつかり合ってリュックの中にゴミが落ちたりすることは無いって考えでいいのか?」

「その考えでいい。あと物を収納する時だけど、リュックに突っ込む感じではなく、入れと意識すると中に吸い込まれて、出ろと意識すれば飛び出す謎仕様だ」


「「全然意味が分からない!」」



 安心おし。俺も未だによく分かってないから!


 というわけで、三人から預かっていた荷物を俺のマジックバッグから全部取り出し、それぞれのリュックに収納して自分で試してもらうことになった。




 ◇




 祝・700話!


 ブックマーク・☆・💛、そしてコメントや誤字報告をしてくれた皆様。

 いつも本当に感謝しております!これからも応援宜しくお願いします。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る