第698話 清光さんとタイマンを張ることに

 虎徹さんがサイダーを引き当てたことで宇宙刑事が二人になったわけだけど、そうなると今度は二代目がいねーぞと騒ぎ始めた。


 しかし宇宙刑事ファンの虎徹さんと違って、俺も清光さんも二代目なんかにはなりたくないので、その場で押し付け合いが始まった。



「こういうイロモノは、キャラ的にも小烏丸しか有り得んだろ!」

「発想を逆転するんです!俺はすでにイロモノとして何年も過ごしており、あの二人もイロモノとして生まれ変わりました。清光さん、あとは貴方だけなんですよ!」

「俺はそういうキャラじゃねえんだよ!」

「だからこそ、ガチャの女神様もそれを望んでいるのではないでしょうか!」



 暴走族の格好をしている時点で、清光さんも十分イロモノだと思うんだけどな。

 まあ宇宙刑事はイロモノレベルMAXだけど。



「まてまてまてーーーーーい!」

「二人とも落ち着くんだ!!」



 宇宙刑事二人が、バチバチにやり合っている俺と清光さんの仲裁に入ったが、そもそもの原因が二代目襲名の話なのでイラっとした。



「ここは神聖なるガチャ部屋だぞ!喧嘩はご法度だ!」

「揉め事が発生した時はガチャで決着をつける。それが此処でのルールだろう!」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」



 顔を見てるだけでイラつくが一理あるな。


 ・・・いや待て!あの二人に騙されるな!



「清光さん、アレは罠です!仲間を増やそうとしているだけだから、唆されないよう注意して下さい!」

「だろうな。しかしガチャから逃げ続ける生活も気に入らねえ・・・」


 まあ確かに、ガチャが怖くて回せないってのは気持ち悪い状況ではある。


「しゃあねえ、やるか・・・。小烏丸、俺とタイマン勝負だ!」

「な、なんだってーーーーー!?」

「ただ用事でしばらく忙しいから、勝負は一週間後にしよう。んでルールは・・・そうだな、10回勝負とかだと二人とも外しに行くに決まってるから、『金カプセル三本勝負』でどうだ?」

「タイマンって言うから喧嘩かと思ったじゃないですか!それはそうと、金カプセル三本勝負??なんスかそれ?」

「まず先手が金カプセルが出るまで引き続け、宇宙刑事の衣装が出なければ後手と交代する。決着がつくまでやると魔石がもたんから三本勝負というわけだ」

「なるほど!絶対に金カプセルを引かなきゃいけないから、本気でガチャる必要があるわけか・・・」

「そういうことだ」


 面白いこと考えるな~。流石はガチャプロだけのことはある。


 引いた時点で負けなのだから当然先手が不利ということになるけど、三本ともスルーしてしまえば、最後にプレッシャーをかけることも出来るんだな。


 しかし一週間後か、それまでガチャを我慢しなきゃならんのか・・・。

 一人で勝手に自滅したら馬鹿みたいだしな。



「待てーーーい!どうせやるなら『金カプセル漢気三本勝負』にしろ!」



 決まりかけたところで、ギャラバーンが変なことを言い出した。



「なんだよ?その漢気って」


「宇宙刑事シャアリバーンの衣装を出した方が勝者だ!引き当てた者は全力で喜ばなければならない!当然ハズした時は悔しがること!」


「「な・・・んだと!?」」


「わはははははははははは!すげーいいアイデアじゃん!流石先輩だ!!」



 要は虎徹さんと同じ気持ちでガチャれってことか。

 親父め、俺と清光さんが嫌がってるのをいいことに面白いゲーム考えやがって!



「さて、俺達はそろそろ帰るぞ。コテツ、三河まで送ってくれ」

「あいよ~」

「魔石集めは今日からだから、お前はすぐ戻って来るんだぞ?」

「わかってるって!むしろやる気が漲ってるから、言われなくとも体術を鍛えまくるつもりだったし」

「体術のレベル上げに夢中になって、魔石を拾い忘れるんじゃねえぞ?」

「たぶん大丈夫だ!」



 ジト目で見つめる清光さん達を三河の城まで送り、1分もしないうちにサイダーだけが戻って来た。



「よっしゃーーーーー!体術を鍛えまくってやるぜ!」

「ウチのメンバーは4階層で魔石集めをする予定ですが、体術のレベル上げをするなら狩場がかぶることはありませんね」

「4階層は魔物が雑魚過ぎるから体術の特訓にならねーしな。とりあえず1階層から攻めてみるけど4階層はスルーだ」

「先輩から一つだけ忠告しておこう。必殺技は使うな!ギャラバーン・ダイナマイト一発で全エネルギーもっていかれ、変身が解けてしまった苦い記憶がある」


「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」


 フルフェイス姿なので表情は見えないが、愕然としている様子。


「勘違いするなよ?レーザーソードを光らせるまでなら大丈夫だ」

「なるほど!『サイダー・ブルーアイスフラッシュ』は、集中力が極限まで達していなければ使いこなすことが出来ないしな!やっぱ必殺技は最後だろ!」

「サイダーの必殺技って、そんな長ったらしい名前だったのか・・・」


 いや~、大ファンだけのことはあるな。

 俺もサイダーの必殺技までは覚えてなかった。


「あ、虎徹さん!18時には戻って来て下さいね」

「あーそっか!んじゃ18時になったら『サイダー・ブルーアイスフラッシュ』を解禁することにすっかな~」

「エネルギーが切れたら転移できなくなるじゃないですか!」

「な、なんだってーーーーー!?」

「いや、宇宙刑事のエネルギーが切れるだけで、魔力は大丈夫なんじゃねえか?」

「マジで?親父あの時グロッキー状態だったから、魔力切れなのかと思ってたわ」

「ちょっと待ってろ」



 親父がステータス画面をチェックした後、レーザーソードを取り出した。



「レーザーソード!」



 前回やったように左手をゆっくりと剣先まで滑らせていくと、剣が白く光った。



「うおおおおお!超カッケエエエエエエ!!」



 思わず叫んだ虎徹さんはともかく、親父がステータス画面をチェックした。



「ウム。エネルギーが少し減った感はあるが、MPは消費してないな」

「やった!んじゃ18時に必殺技を使ってもいいんだな!?」

「問題無かろう。しかし消耗が半端ないから、30分近く動けなくなるぞ?」

「それは困る!虎徹さん、17時30分解禁でお願いします!」

「オッケー、17時30分解禁な!やっべえメッチャ楽しみだ!!」



 そう言った直後、宇宙刑事サイダーは部屋を飛び出して行った。



 ・・・ちゃんと時間通りに帰って来るんだろな!?


 

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