第666話 『雲外蒼天』レジェンドガチャ

 初挑戦にして見事金カプセルを引き当てた親父だったが、豪華絢爛としか言い様がない大バカ殿様の衣装を広げたまま固まっている。


 殿様みたいな恰好をしてサンバを歌う俳優もこんな格好をしていたが、それを言ったところで慰めにもならんというかむしろ逆効果なので、今はそっとしておこう。



「着てみたら意外と似合うかもだよ!」



 おおう、グミが斬り込んでしまった。

 彼女は慰めてるつもりなんだろうけど、全力で煽ってますな。


 そっとしておく作戦はこれにて終了だ。



「親父、折角だし着てみるしかないだろ!」

「この大バカ殿様の衣装を着ろだと!?」

「三着の服の中から一着を選ぶって話だったけど、こんな金ぴかの着物なんか恩賞としても使えんから、本命の服とは別にこの衣装も親父の私服にしていいぞ!」

「これを私服にしろだあ?他人事だと思って適当言いやがって!こんな派手な着物を着ていたら、お前以上に注目の的になるじゃねえか!」

「でも折角の大当たりなんだし、一度くらい着るのが礼儀なんじゃないかしら?初日からガチャの神様をガッカリさせるのは良くないわ」

「くっ、一理あるな・・・」


 チェリンさん、面白そうだからって適当なこと言ってますね。でも確かに、女神シャルロット様が今も天界から見てる可能性はあるのかもしれない。


「あ、ちょっと待ってくれ。着る前に汚れ耐性だけ付与するから」


 親父が持ったままの大バカ殿様衣装に手を翳し、一瞬で汚れ耐性+を付与した。


「終わったから着替えていいぞ~」

「はあ!?もう終わったのかよ!!」



 女の子達の前で着替えるのは抵抗があるらしく、親父は服を持ったままガチャ部屋を出て行った。隣の2階層へ降りる階段がある部屋で着替えるのだろう。帰ったら自動修復なんかも付与してあげないとな。



 ―――――10分くらい経ってから、ようやく大バカ殿様が姿を現した。



「ぷぷッ!どわーーーっはっはっはっはっはっはっはっは!!」

(大バカ殿様キタアアアーーーーー!あーーーっはっはっはっはっは!)


「「あーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」



 こいつぁやべえぜ!!豪華絢爛にもほどがあるだろ!!

 殿を怒らせたら刀の錆にされるかもしれないから皆気を付けろ!



「殿の出陣じゃああああああああああ!誰か、刀を持って参れ!」

「グミ、刀を!」

「殿おおおおお!刀を持って来ました!」


 グミが片膝をついて、親父の刀だった物を殿に献上した。


「今宵の蛍丸は血に飢えておるわ・・・。ってお前ら、ノリが良すぎるだろ!!」


「「あはははははははははははははははははは!!」」

(あーーーーーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!ごへッ、がハッ!!)



 いや~、クッソ笑った!これだからガチャはやめられねえ!



「着替えるのに結構時間が掛かったな。やっぱその衣装って重いのか?」

「この衣装だぞ?そりゃあ時間も掛かるだろ!!ただなぁ、これが意外とそこまで重くもなくて、しかも思った以上に着心地が良いのだ・・・」

「お義父さん!すごく似合ってるよ!!」

「その衣装を着ている時は『殿』って呼ぶのよ!」

「あ、そっか!殿様だったーーーーー!」

「もう好きなように呼んでくれ・・・」



 親父もずっとこの衣装を着ていれば、完全にイロモノとして覇権を握れるぞ!



「さてと・・・。このビッグウェーブ、俺も乗るしかあるまい!」



 親父はアレだけど、一応全員が当たりを引いたわけだからな。

 こうなったら俺も続くしかないだろ!


 マジックバッグから、特大の魔石を取り出した。



「それはまさか・・・、お前、レジェンドガチャを回すのか!?」

「レジェンドガチャ!!」

「わあああああ!あの大きなガチャよね?一体どんなのが出てくるの!?」

「前やった時はビームライフルが出たぞ?あと通信機もだな」


「「ああああああああああああああああああああっ!!」」


 チェリンとグミは、ビームライフルのとんでもない破壊力を知ってるからな。

 親父はまだ撃った姿を見たことが無いので、驚き勢の中にはいない。


「ビームライフルって、もしかしてお前が腰にぶら下げているヤツか?それって赤い流星セットの一部なのかと思ってたぞ」

「清光さんと虎徹さんもそう認識してたみたいだけど、これはレジェンドガチャから出たんだ。通信機もメッチャ大活躍しているし、レジェンドガチャは別格と言ってもいい。魔剣とかも出るらしいけど、そういうのはむしろハズレかもだな」


 俺の場合、自分で最強の武器を作れるからなあ・・・。

 でも魔剣って響きが格好良いから、お気に入りになるのは間違いないだろう!



 ―――誇り高き威厳を放ち、見る者に畏怖の感情すら与えるレジェンドガチャ。



 長き時を経て、ようやく俺はこの気高きガチャを回すのだ!

 コンディションはバッチリだ。故に不安は無い。



「俺は北海道にいた時からずっと、このレジェンドガチャを回すことを夢見ていたんだ。全身全霊をもって挑ませて頂く!」


「なるほど・・・、ガチャを知ってる状態でそのデカい魔石を手に入れたら、そりゃそのことで頭がいっぱいになるわな。お前の雄姿、見届けてやる!」


「「小烏丸がんばれ~~~~~~~~~~!!」」



 レジェンドガチャの前に立ち、特大の魔石を投入する。



 レバーが神々しい光を放った。



 ガチャを回すのに必要なのは、最高のコンディションと強い精神力。

 弱気になるのが一番ダメだが、浮ついた気分でいるのもダメだ。


 そして今求めるのは平常心ではなく、静かなる闘争心。


 心を天空へと飛ばせ。

 宇宙を感じろ。

 世界と一体となれ。


 俺の胸の奥深くに眠る熱き魂よ、目覚めの時が来た。



 ―――――ココだ。



 レバーを回す寸前、ミスフィートさんの優しい笑顔が視えた気がした。



 ガチャコン!



 テー! テテテテー! テテテテー! チャーチャチャチャー!




 ―――――室内に、ファンファーレが響き渡った。




「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」



 なんかファンファーレが聞こえるんですけど・・・。


 え?嘘だろ?

 俺が回したのって、レジェンドガチャだぞ!?



「やってもうたあああああああああああああああ!!」

「お、おい!効果音どころかファンファーレが鳴ってるんだが!?」

「大当たりなの!?」

「赤い流星セットの時以来だから自信はないけど、虹カプセルだと思う・・・」

「わあああああ~~~~~!小烏丸、凄すぎだよ!!」



 震える手で虹カプセルを取り出し、皆が注目する中、カプセルを開ける。




 ―――――カードに書かれていた文字は、【時空神ライオスの加護】だった。



 

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