第665話 親父がとんでもない服をゲットしやがった

 目覚まし時計を両手で持ち上げてニコニコしているグミを見て全員ほっこりしていたが、次は自分の番だとチェリンが気合を入れ直した。



「私も負けてられないわ!一発目に良いのが出やすいって話だし、ここでハズレを引くわけにはいかない!」


 まあその傾向があるってだけで、絶対ではないんだけどね。


「確かにそう言ったけど、たとえハズレだったとしても落ち込むことはないぞ?当たりを引くまでガチャを回しまくればいいだけだしな」

「ん~~~、まあそうなのかもしれないけど、とりあえず何か一つでも良い物を手に入れないと安心できないじゃない」

「俺なんて男性服三本勝負らしいし、人生が懸かってるといっても過言ではない」

「私もまだ服が出てないから頑張らなきゃ!」


 親父は魂の大勝負だけど、女性陣はもっと気楽に構えてていいんだけどな。

 まあ変に余裕ぶってるより本気で回した方が楽しめるし、これ以上は言うまい。



「よし!そろそろガチャを回してみる!」



 チェリンがデラックスガチャの前に立った。

 一つ深呼吸してから、投入口に魔石を入れていく。


 レバーが光った。



「す、すごく緊張するわね・・・」


「チェリンがんばれ~~~~~!あ、私語厳禁だった!」



 グミが両手で口を押さえた。



 ガチャ部屋に静寂が訪れ、チェリンが目を閉じ胸の前で両手を組む。

 胸というか、アレはメロンですね。


 おっとイカン!俺も彼女のために集中せねば。



 ゆっくりと目を開いたチェリンが、魂を込めてレバーを回す。



 ガチャコン!



「・・・あれ?グミの時と違うわ。キュピンが無かった!ハズレなの!?」

「いや、力強い音だったから赤いカプセル、すなわち服が確定だ!」

「本当に!?服なら大当たりよ!!」

「でも男性服が出る可能性があるから、そこから二分の一だけどな」

「あ、そっか!女性服が出ますように!お願い!!」



 チェリンが取り出し口からカプセルを取り出すが、やっぱり赤いカプセルだった。

 カプセルを開けて中を確認するが、書かれている文字は服のハズ。



「やった!【服】って書いてある!」



 そう叫んだ瞬間、カプセルがポフッと服に変化した。



「わわっ!ビックリしたーーーーーーーーーー!」



 チェリンの手の平に乗っている服は、白くてヒラヒラとしていた。

 まだ何なのかよく分からないけど、男性服ではないと思う。



「これって女性服っぽくない?すごく手触りが良いわ!」

「チェリン、広げてみて!!」

「うん!」



 チェリンが服を広げた瞬間、これも一目で何なのか分かってしまった。



「・・・・・・・・・・・・・・・」


「なんか・・・エロいね」

「ネグリジェか。スケスケでめっちゃエロいな」

「うむ、ベビードールというよりかはネグリジェの方だ。これはエロい」


 チェリンもエロいと思ったのか、何とも言えない表情だ。


「ネグリジェ?これって服・・・よね?」

「えーとな、それは女性専用の寝間着だ。気持ち良く眠れるように作られている」

「あーーーーー!だから手触りが良いのね!?・・・でも何で透けてるの?」


 それには親父が答えた。


「旦那や彼氏を喜ばせる為じゃないか?」

「なるほど!だからエロいんだね!」

「だ、旦那を喜ばせる・・・」


 チェリンがチラッと俺の顔を見て、すぐまた目を伏せた。


「まあ普通の服じゃなかったけど、それは間違いなく大当たりだと思うぞ!」

「私も寝る時の服が欲しいかも!!」

「俺は勘弁だ。一生寝間着で生活するのは地獄すぎる!」

「しかもネグリジェな」

「オネエじゃねえか!!」


 俺も、親父がオネエになるのだけは勘弁してもらいたい。


「・・・うん。これはこれで当たりかも!とにかく女性服で良かったーーーー!」

「よかったね!!」



 というわけで、グミに続いてチェリンも当たりだった。


 問題は親父だな。なんせ男性服三本勝負なのだから。

 引き当てた三着の服の中から、未来永劫着続けることになる一着を選ぶのだ。



「ふーーーーーっ。とうとう俺の番が来てしまったか・・・」

「親父は男性服を出した瞬間、1回目にカウントするからな」

「女性服が出た場合はノーカンでいいんだな?」

「女性服はノーカンだ。男性服が3回出るまでが勝負だぞ」

「一発勝負じゃないだけマシだが、滅茶苦茶緊張するぞ・・・」

「安心しろ。赤い流星セットでも着続ければ慣れる」

「イロモノは嫌だっつってんだろ!!」



 後ろから『がんばれ~!』と黄色い声援を受けながら、親父がデラックスガチャと対峙した。



「えーと?魔石を10個投入してから気合を入れて回すんだったな」



 そう言った後、魔石をポコポコと投入し始めた。



「お、光った!ふーーーーーっ、ガチャを回すのなんていつ以来だ?」



 私語厳禁だから返事はしないが、たぶん子供の頃以来だろな~。



 ―――――そのまま5分ほど経過した時、親父から大宇宙を感じた。



 これは大物の予感がするぞ・・・。



 ガチャコン! キュピピピン!



「!?」



 グミの時以上の派手な効果音が鳴り、またもや全員がビクッとした。



「なんか凄い音が鳴ったぞ!?」

「親父、大当たりだ!!今の音は金カプセルだ!!」


「「金カプセル!?」」


 大当たりの報告に女性達も驚いている。

 ガチャ初心者とはいえ、さっき回したばかりだからな。


「大当たりはいいんだが、金だと逆に服から遠のいたか?」

「どうだろな?銀や金は滅多に引けないから、俺もまだよく分かっていないんだ」

「そうか。でも折角だから男性服来い!」



 親父が金カプセルを開け、大きく目を開いた。



「おい!中のカードに【服】って書いてあるぞ!?」



「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」



 カプセルがポフッと変化し、やたらと豪華な布が出現した。



「ちょっと待てや。金色の布・・・だと!?」


「嫌な予感がしますな」



 親父が布を広げると、それは誰も予想だにしなかった『金色の着物』だった。



「「大バカ殿様じゃねえか!!」」



 はい、イロモノ来ましたーーーーーーーーーー!

 

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