第664話 ガチャは一発目が大事!

 チェリンとグミは説明書を読んでも何となく分かったってくらいだろうけど、親父はピンときたようでニヤニヤしている。



「んじゃそろそろ始めようか!まだ少し細かい説明が必要だけど、それはガチャをしながら話すよ」

「誰からやるの?」

「ハイ!ハイ!ハイ!」

「んじゃグミちゃんからいくか。その次はチェリンちゃんだ」

「属性ガチャを回すには同じ色の魔石が10個必要だから、もしそっちを回すつもりがあるなら魔石を整理しといた方がいいぞ」

「そっちは回さな~い」

「私も装備品はいらないわ」

「俺もいらん」


 ミスフィート軍の人達は『刀こそ至宝』と育てられているので、重くなるだけの装備品に興味を持つ人は少ないのだ。


「それなら魔石の色は気にしないでいい。ガチャの投入口に魔石を10個入れるとレバーが光るので、その状態になったら気合を入れてレバーを右に回すんだ!」

「ねえねえ!レジェンドガチャってのは出来ないの?」

「えーとだな~、フロアボスを倒すとさっきゴブリンから手に入れた魔石よりも更にデカい魔石が手に入るんだけど、そのフロアボスって一度倒すと3年くらいリポップしないらしいんだよ」

「3年も!?」

「だからこそ特大の魔石は非常に価値が高いんだ。それがあれば最強ゴーレムも作れるわけだから、レジェンドガチャで勝負するかすごく悩むレベルだな」

「このダンジョンのフロアボスって強いの?」

「たぶん2階層のボスまでならグミでも倒せる。だが3階層のボスからは空を飛んだり大量の魔物を召喚したりするから、何か対策が必要だな」


 あっ、2階層のデュラハンもバンシーを大量に召喚するんだった。

 どうせ戦うことは無いから訂正する必要もないか。


「空中戦は魔法ナシじゃちょっと無理ね~」

「魔法なんか使えんぞ!」

「私の風魔法なんて効かない気がする!」


「ちなみにこれが、レジェンドガチャを回すことが出来る特大魔石だ!」


 マジックバッグから巨大な魔石を取り出した。


「うぇええええ!小烏丸、持ってたの!?」

「お前、ちゃっかり持ってやがったのか!!」

「でっか!!」

「俺は魔境の北海道から帰ってきた男だぞ?聖帝と闘ってズタボロの状態で、黒龍が目の前に現れた時は泣きたくなったけどな!」

「よ、よく死ななかったわね・・・」

「話を聞いた感じだと、その聖帝って男の方がヤバそうだな」

「聖帝大っ嫌い!!すごく怖いんだよ!?」


 おっと、話が変な方向に行ってしまった。


「聖帝の話は帰ってからにしよう。今はそれよりもガチャだ!」

「あ、もう一ついい?ノーマルガチャからは何が出るの?」

「えーとだな、味噌・塩・醤油・油・砂糖といった調味料も出るし、ノートやタオルやブラジャーなんてのも出るぞ」

「下着が出るの!?結構重要じゃない!」

「うむ、ノーマルも重要だ。でもデラックスガチャからは高級下着が出るぞ!」


「「高級下着!?」」


 チェリンとグミの声がハモった。


「言い忘れてたけど、初めてガチャをやる時や久々にガチャをやる時は、運が溜まっていて大当たりを引く確率が高い。だから一発目はデラックスがオススメだ!」

「おおーーーーーーーーーー!いきなり服を手に入れる好機だ!」

「けど赤ってそんなにレアな方じゃないわよ?」

「飛び越えて金とかが出てしまっても良い物が入ってるだろうから、それはそれでいいんじゃねえか?」

「ちなみに俺が着ている『赤い流星セット』は、デラックスガチャの超大当たりを引き当てて、なんと虹カプセルから出て来たんだぞ!」


「「虹カプセル!?」」


 チェリンとグミは普通に『虹カプセル』に驚いたけど、赤い流星を知っている親父は何とも言えない顔をしている。


「いや、性能は超大当たりかもしれんが・・・」

「シャラーーープ!!親父、そこまでだ!」


 子供や女の子達の夢を壊すようなことは言っちゃいけません!


「赤いカプセルは服が確定って言ったけど、銀や金や虹のカプセルからも高性能な服が出たりするんだ。なのでレアを引いて損したなんてことは絶対にない!青や緑からも意外と良い物が出たりするから、デラックスは何色だろうが期待していいぞ!」


 それを聞いたグミが真剣な顔になる。


「もう気になることは無くなったから、デラックスガチャに集中できるよ!えーと、ココに魔石を10個入れればいいんだよね?」

「そこであってる。魔石を10個入れてレバーが光ってから精神集中するといい。ちなみにレバーを回す時は右に一回転させるんだ」

「はい!」


 グミが、デラックスガチャの投入口に魔石をポコポコ入れていく。

 そして10個目を投入した瞬間、レバーが光り輝いた。


「わわわっ!光ったーーーーーーーーーー!」


「ああ、次からはレバーが光ったらもう私語厳禁としよう。しっかりと精神統一しなければ、待ってるのは敗北あるのみだからな」



 その言葉を聞いた全員が静かになった。



 グミがゆっくりと目を閉じる。



 ―――――そのまま1分ほど経過した時、彼女から小宇宙を感じた。



 グミの目が開く。



 ガチャコン! キュピン!



 突然鳴り響いた甲高い音に、グミどころか俺を含めた全員がビクッとした!



「なに今の音!?」

「な、なんなの?」

「マジでビックリしたーーーーー!今のは当たりの音なのか!?」


 グミめ、やりおったな!


「当たりだ!銀カプセルの音だ!」


「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!」」


 ゴトンという音がするので、取り出し口に球が落ちたのがわかったのだろう。グミが銀色に輝くカプセルを取り出した。


「・・・あ、そうそう!たまにピアノみたいな巨大な物が出たりするから、俺が『ヤバイ』と言ったらカプセルを持った手を上げてくれ!」


「「はあ!?」」


「大丈夫だ!グミならピアノくらい持てる!」

「開けるのが怖くなってきたんですけど!!」

「怪我しそうになったら絶対に助けてやる。だから俺の『ヤバイ』の声で、手だけは絶対に上げてくれ。まあデカい物はそんなに出ないから大丈夫だ」

「でも当たりだもんね。開けるしかないっ!」


 グミがおっかなびっくり銀のカプセルを開けるが、中に入っていたのがカードだったことに少しガッカリしたようだ。


「えーーーーー!これってハズレじゃない?」

「いや、カプセルの中に入っているのは全てカードなんだ。問題なのはそのカードに書かれている内容だ!」

「えーと、【魔道具】って書いてあるよ?」

「魔道具か・・・、それならたぶん安全だ」

「ホント!?」



 グミの持つ銀のカプセルが、ポフッと魔道具に変化した。



「わわわっ!!うぇえええ!?なんか変わったよ!?」



 グミの持つ魔道具を見て、一瞬にして何か分かってしまった。



[目覚まし時計]

 :魔力で時刻を自動調整してくれる目覚まし時計。評価A

 :素材は不明。魔石をセットすれば動き始めます。

 :衝撃耐性+ 魔法耐性+ 炎耐性 冷気耐性 防水機能



「グミ、これはマジで大当たりだ!」

「目覚まし時計じゃねえか!!」

「え?コレって時計なの?メチャクチャ羨ましいんですけど!!」

「ほえええええ~~~~~~~~~~」



 ただただ驚いているグミだったが、自分専用の可愛い時計が手に入ったことに、次第に笑顔になっていった。

 

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