第662話 三人をダンジョンに解き放つ

 グミの初陣の後、チェリンが危なげなく3体の骨を撃破した。


 やはり初めての高難度ダンジョンということで恐怖心があったみたいだけど、実力的にすでに十分な力があったので、戦ってみると全然余裕だった。


 グミも手に入れた魔石の大きさに驚いていたけど、それをいきなり3個もゲットしたチェリンはホクホク顔である。


 そして次は初陣で5体の骨を相手することになった、低レベルの親父の番だ。


 俺はあの男の強さを良く知ってるから楽勝だと思ってるんだけど、やはり本人は少し緊張しているらしく、両頬をパシンと叩いて気合を入れてから戦闘を開始した。



 ヒュン ガシャッ


「よっと!」


 ギンッ ゴシャッ ジャキン!



 ・・・うん。余裕で5体を瞬殺しおった。



「おおーーーーーっ!たった5体倒しただけで、レベルがポコポコ上がったぞ!」

「お義父さんメチャメチャ強い!!」

「ほ、本当に強いわね!低レベルの動きじゃなかったわよ・・・」

「高難度ダンジョンだって言ったろ?だから魔物を倒した時の経験値も凄いんだ」

「このダンジョンすげえな!おっと、魔石を集めるんだったな」

「服が出る可能性があるデラックスガチャを回すのに、その大きさの魔石が10個必要だ。ゴブリンみたいな中ボスクラスを倒すとそれよりもデカい魔石が手に入るんだけど、デカい魔石はゴーレム作りに使いたいから軍に寄付して欲しい」

「了解した。とにかくガチャを回すには、雑魚敵をいっぱい狩ればいいんだな?」

「そういうことだ。レベル上げにしても『質より量』って考えで問題ない」


 まあ親父の場合は、大物もガンガン狩ることになるけど。


「へーーーーー!こりゃあ素晴らしい剣だ!」

「最初の雑魚敵がこんな凄い剣を持ってるなんて、一体どうなってんのよ!?」

「反乱軍時代なら争奪戦になるくらいだよね!」

「このダンジョンってマジでおかしいよな。雑魚狩りをしてるだけでも他に色んな種類の武器が手に入るから、記念に一種類ずつお持ち帰りしても構わんぞ」

「やったーーーーーーーーーー!」

「でも通路に立て掛けて置いてあっても勝手に消えてしまうんだろ?」

「戦利品は安全ゾーンに置かないと消えてしまう。んでどこが安全ゾーンなのかというと、椅子とかテーブルなんかが無造作に置いてあればそこが安全ゾーンだ」

「なるほど。細かく説明されるより分かりやすいな」

「この階層だとさっきの部屋だよね?」

「うむ。少し離れた場所にも女神の泉がある部屋が一つあって、それとガチャ部屋も安全ゾーンとなっている」


 この階層だけは至れり尽くせりなのだ。


「ガチャ部屋ってのはどこにあるんだ?」

「さっきの部屋にもう一つ通路があったろ?そのすぐ先がガチャ部屋だ」

「エーーーーー!見たかったな~~~~~!」

「どうせ魔石が無いと見るだけになっちゃうわよ?皆で楽しく盛り上がる為に、まずは魔石集めに集中しましょう!」

「チェリンが良いこと言った!んじゃこの階層で2番目の難敵とも言えるシルバーウルフの所まで進んで、それを全員倒すことが出来たら自由行動にしよう!」

「また、1体、3体、5体って感じで出て来るのか?」

「いや、シルバーウルフはデカいせいか1体ずつの登場だ。ただし走り回って他の魔物を連れて行ってしまった場合は2体同時に相手することになるから、不安なら1体ずつしっかり倒しながら進むこと!」

「慎重に行くに決まってるよ!!」

「乱獲するのは全ての魔物の特性を把握してからって感じね」

「だな。無茶する必要など全く無い」



 今回のメンバーは三人共慎重な性格だから、心配しなくても大丈夫そうだな。


 いきなり4階まで進んで、和泉みたいに雑魚狩りしまくるのも一つの手ではあるけど、急いでるわけでもないのだから、今回は1階層からゆっくりと楽しんでもらおうと思う。


 というわけで、とりえずシルバーウルフのいる場所まで進んで行った。




 ・・・・・




 パチパチパチパチ



「お見事!何だかんだでグミも流石の初期メンバーだよな~」

「速くてちょっとビックリしたーーーーー!でも倒せたよ!!」

「京の都ダンジョンだったら、ボスとして登場してもおかしくない強さよね」

「思ったよりも薄汚れてんな。これがあの綺麗な毛皮になるのか?」

「聖水にぶち込んで清めたら、穢れが浄化してピッカピカになるんだ」

「お前、貴重な聖水が湧く泉でかなり滅茶苦茶やってんな!?」


 大丈夫だ。間違いなく虎徹さんも同じ事やってるから!


「ゴブリンはさっき倒したからリポップするのは2日後だ。というわけで慎重に戦えば1階層を歩き回っても問題ないだろう。ここからは自由行動にするぞ!」

「小烏丸はどうするのよ?」

「俺はとりあえずガチャ部屋に行く予定だ。でも時間を持て余す気がするから、後で魔石集めがてらに食材集めもしておくよ」

「あ、もしかしてホタテ!?」

「久々にこのダンジョンの海鮮づくしが食いたいしな!」

「ダンジョンで海鮮物が獲れるってのも意味分からんな・・・」

「とにかく夕食は俺が用意しとくんで、皆は魔石集めに集中してくれ!」

「はいは~い!」

「慎重にがんばるよ!」

「皆無理すんじゃねえぞ?」



 というわけで、少し心配だけど三人をダンジョンに解き放った。

 俺はガチャ部屋に移動だ!




「おっしゃ!久々のガチャだぜ!!」



 そういやもう長いことガチャってなかったから、かなり運が溜まってるんじゃないだろうか?いきなり一発目にレジェンドいっちゃう!?


 この日の為に、北海道と佐渡ヶ島で特大魔石をゲットしまくったわけだからな!


 ただもしかすると最強ゴーレムを作る日が来るかもしれんから、ガチャで使い切ってしまうのも考えものだ。いくつかは温存しておいた方がいいだろう。


 まあ正直、何一つ不自由の無い生活をしているわけだから、焦らず心に余裕を持って落ち着いてガチャに挑むべきだな。



「・・・・・・・・・・・・・・・」



 いや待て。


 運が溜まっていると考えると、一発目はレジェンドガチャ以外有り得ない。

 しかしこの晴れ舞台を仲間達に見せないなんて勿体なくないか?


 なんつったってレジェンドガチャだぞ?選ばれし一部の人間だけが回すことを許される究極の晴れ舞台なんだ。一人でこっそり回すなんてとんでもない!!


 うん、ガチャを回すのは全員帰って来てからにしよう。

 そうなると俺も魔石集めに行くべきだな。


 親父がゴブリンと対峙するのは二日後か・・・。


 よし、戦いの勘を取り戻す為にも10階層まで制覇して来るとしますか!

 でもドラゴンは皆に見せたいから触らないでおこう。


 ゴブリン達よ、久々に俺と勝負だ!

 

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