第660話 今回のメンバーは親父とグミとチェリン

 全然いつもと違ったやり方で刀を打ち始めた親父だったが、最初こそ苦戦してたものの次第にコツを掴み始め、結局二日で刀を完成させてしまった。


 グミも何だかんだで半分くらいは見学していたのかな?見ていてあまり面白いモノでもないハズなんだけど、真剣にやっているので目が離せなかったらしい。



「本当に凄まじい刀だ・・・。流石は俺の親父だと言わざるを得ないだろう」

「いつもと勝手が違って難しかったが、良いサポートだったぞ!」

「刀の名前は決めたのか?」

「名前は最初から決めてある。『蛍丸ほたるまる』だ」



 ・・・蛍丸か。


 刀にも母さんの名前を入れるとは、時が流れても母さん一筋なんだな・・・。



「このままでも斬れ味は凄そうだけど、出発までに付与魔法を掛けておこう。最強の付与魔法を掛けると一ヶ月コースになってしまうから、ワンランク下の付与になるけど、それでも化け物みたいな性能だから安心してくれ」

「魔法の事はよく分からんが頼んだ。汚れ耐性が優秀だとか言ってたな」


 その言葉にグミが反応した。


「メチャメチャ優秀だよ!それってたぶん私の刀と同じ付与だと思うけど、鉄の鎧を真っ二つにしても刃こぼれ一つしないんだよ!国宝級だよ!」

「家老まで出世したらグミもオリハルコンの刀が貰えるぞ?しかも最大強化だ!」

「無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!」

「グミちゃんと同等の身分って何人もいるんだろ?そうなると国宝級の刀を所持している者が多過ぎないか?」

「いっぱいいるね~」

「マジで国宝級なんだぞ?たぶん隣国の大名が所持しているオリハルコンの剣にも引けを取らない」

「お前さ、いくら何でもヤバイ武器をばら撒き過ぎだろ!」

「それは俺も少し気になってるんだけど、もう手遅れだ!」

「ダメじゃねえか!!」



 敵国の手に渡ってしまうと脅威だけど、まあ何とかなるさ!


 孫の代とかになると俺にはもうどうしようもないが、まあそこは子供達に任せるしかあるまいよ。そんなアクシデントがあっても対処出来るようにガンガン鍛えないとだな~。まあ強い母ちゃん達が勝手に鍛えまくると思うけど!


 とにかくこれでアリアダンジョンに行く準備は整った。

 あとは虎徹さんに通信して、送迎してもらえるか確認をとるだけだ。


 俺だけは夜伽の為にどうしても日帰りしなきゃならんのよ。

 昔は自由に動けたのにな。これが所帯を持つということなんだな・・・。






 ************************************************************






「・・・ん?これだけか?」



 朝から準備を済ませ、虎徹さんを城門前に呼び寄せたわけだが、もっと大勢で行くと思っていたらしい。


 ちなみにアリアダンジョンに行くのは、俺と親父とグミとチェリンだけだ。


「タイミングの悪いことに、皆ちょうど尾張に帰郷してるんですよ。とりあえず今回はこのメンバーだけですね」

「なるほど、尾張まで結構遠いもんな。ミスフィート領ちょっと広すぎだろ!」

「本当は尾張だけで十分だったんですけどね。聖帝がちょっかい出してきたせいで、京の都なんかに住むことになっちゃいました」

「まあ国民にとってはいいんじゃね?他の大名の支配下じゃ、幸せなんて掴めねーだろうしな」


 とまあ軽く世間話をした後、アリアダンジョンに飛ぶために全員手を繋いだ。



「じゃあ行くぞ!転移!」



 シュッ



 パッと景色が変わり、長いことお世話になった懐かしの部屋へとやって来た。



「うおっ!一瞬で景色が変わりやがった」

「なにこれ凄い!!」

「わああああ~~~~~!此処が噂のアリアダンジョンなのね!?」


 今回の同行者は三人とも初めての転移だったな。


「オレは用事があるんで帰るぞ!18時頃迎えに来ればいいんだろ?」

「はい。夕方に帰るのは俺だけですけどね~」

「注意事項の説明なんかは小烏丸に任せたぞ!」

「わかってます!」

「よし、じゃあ転移!」



 そう言った瞬間、虎徹さんの姿が消えた。

 相変わらずせっかちな人だな~。



「さてと・・・、まずはこのダンジョンを使用するにあたっての注意事項から説明しようか」

「京の都ダンジョンとは全然違うのか?」

「難易度が桁違いだ。最初に出て来る雑魚敵でも京の都ダンジョン10階層のボスより強いぞ!」

「エエエエエエエエエエ!?」

「ちょっと!それって大丈夫なの!?」

「ここにいるメンバーなら問題なく倒せるハズだ。ただし怖いぞ?」

「噂のゴブリンはどこにいるんだ?」


 どうすっかな~。やっぱこのダンジョンの洗礼として最初に見せておくか。


「そうだな、気を引き締める為にも見せておいた方がいいな」

「ゴブリンって、玉座の間に座ってるヤツだよね?」

「アレならもう見慣れてるから驚かないわよ?」


 チェリンくん、素晴らしい前振りじゃないか!

 ちょっと楽しくなって来ましたぞ!


「じゃあ見せてやるから俺について来てくれ。気付かれるから声は出すなよ?」

「ん?もしかしてすぐ近くにいるのか?」

「めっちゃ近くに住んでるぞ」

「何よそれ!!」



 三人を引き連れ、ゴブリンのいる通路に入って行く。



「いたいた。そっと見てみ?」



 本物のゴブリンを見た三人が固まった。

 俺も久しぶりに見たけど、相変わらず凶悪なオーラを放ってやがる。



「ようゴブさん、久しぶりだな!」



「ちょ、オイ馬鹿やめろ!アレはやべえだろ!!」

「うわっ!こっちに気付いたわ!」

「はわわ、はわわわわわわ」


『グギャアアアアアアアアア!!!』


「来たあああああああああああ!」

「嘘でしょ!?」



 ザンッ


 数歩前に出て、猛突進して来たゴブさんを刀でぶった斬った。



「見ての通り、このダンジョンのゴブリンは要注意だ」



 当然ながら、目の前でゴブさんを見た三人は完全にフリーズしていた。

 たぶん親父とチェリンなら、すでに倒せる実力があると思うんだけどね。

 

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