第645話 まさかの3連敗

 時計を見ると朝7時になろうとしていた。


 ・・・そう、俺はまたしても敗北してしまったのだ!


 チェリンやカトレアが強敵なのは分かってたけど、ルーシーにまで負けるのは完全に想定外だぞ!今日も仕事に行けないじゃん・・・。



「あの~、ルーシーさん?何でまだ元気なんですかね?」


「全然元気じゃないっス!!何回気を失ったと思ってるんスか!!」



 そうなのだ。


 ルーシーの基本スペックはせいぜいチョロ嫁といったところ。

 そりゃーもう簡単にノックアウトするんだけど、なぜかすぐに復活するのだ。


 オモシロ可愛いから復活するたびに成敗してたんだけど、気付いたらこんな時間になっていたのだ。そういえば和泉もこのタイプの嫁だった気がするぞ。



「悔しいが俺の負けだ。ルーシー、お前がナンバーワンだ!」

「何意味分かんないこと言ってんスか!」

「そういや夜伽前にド変態とか言われてたな。そのド変態を倒したんだ!ルーシーは今日から超ド変態を名乗るといい」

「ふざけるなっス!全然倒してないっスから!!正真正銘のド変態に超ド変態とか言われるのは、さすがに勘弁ならないっスよ!」

「わははは!テキトーに言ってみただけだ。いや、ちょっと待て!正真正銘のド変態は酷くねえか!?」

「酷くない!!あんなことやこんなことまで・・・もうお嫁に行けないっス!」

「いや、俺んとこに嫁に来たんじゃないのか?」

「あっ!初夜が終わったってことは、もう小烏丸の嫁じゃないっスか!!」



 おっとイカンイカン!


 ルーシーと話してると変に盛り上がってしまって、これじゃいつまで経っても寝ることができんぞ。



「そう、とうとう俺達は夫婦となったのだ。ちょっと嫁が多いから普通の夫婦のようにはいかないけど、生涯愛し抜くと誓おう!」



 ルーシーを抱き寄せ、熱い口付けを交わした。



「お嫁さんの数が全然ちょっとどころじゃないっスけど、今の誓いにはキュピンと来たっスね!」

「キュピンって何だよ!?普通は心に響いたとか、ドキッとしたとかだろ!」

「そんな細かいことはどうでもいいっス!!」



 そう言ったルーシーが、三つ指を着いて深く頭を下げた。



「・・・えーと、嫁が何人いても小烏丸がウチのたった一人の旦那様です。末永くよろしくお願いします!」



 そんな可愛らしいルーシーを見て、再び魂に熱い血潮が流れ込んだ。



「フオオオオオオオオオ!!もう一戦行くぞおおおおおーーーーー!!」



「なんですと!?え?もう一戦??うひゃーーー!やっぱりド変態だったっス!」




 ―――――結局、部屋に戻って眠りについたのは昼過ぎになってからだった。






 ************************************************************






 ・・・やっちまった。



 ルーシーの可愛い一面を見た瞬間、気分が盛り上がってしまいましてですね、まさかの延長戦に突入してしまいましたとさ。


 寝れば体力は復活するんだけど、問題は下半身のアレの回復の方なんですよ。


 クソッ、悩んでいてもしょうがねえ!


 まだ全然腹が減ってないけど、食堂に行って精の付く料理を食いまくろう。

 あと聖水もちょっとだけ飲もう。緊急事態なので許して下さい!




 食堂で一人、精の付く料理を一心不乱に食っていると、誰かが近寄って来る気配を感じた。もちろん俺は今忙しいのでガン無視だ!



「こんな所にいたし!ねえねえ小烏丸、ゴーレムが完成したわよ!」



 何だって!?

 この声はパメラだよな?ゴーレムとか言ってるし間違いなかろう。



「ふいぃ~~~!そうか、とうとうゴーレムが完成したか!」

「っていうか何で一人だけ先に食べてるのよ?」


 やっぱりパメラだった。


「あーそれはだな、訳あってちょっと寝るのが遅くなってしまったので、夜伽の為に精力を回復させていたんだ」

「もう夜伽までそんなに時間がないじゃない。意味あるの?」

「あまり無いかもしれんけど、やるだけやらんと今夜の嫁に申し訳ないからさ~」

「その心意気は天晴ね。で、ゴーレムはどうする?」

「問題ないとは思うけど明日試運転させてくれ。ミスフィートさんやカーラなんかがアレを見たら、すぐにでも乗りたがるに決まってるからな~」

「その前にニャルルが大騒ぎしそうじゃない?猫型ゴーレムじゃないけどね」

「間違いねえな!まあニャルルには試運転の日に乗せて満足させるさ」


 本当は機関車に乗って尾張まで行って、ミケネコ城から俺達のゴーレムを持って来ればいいだけなんだけど、全然そんな暇がねえんだもんよ・・・。


「試運転はどこでやるの?」

「学校のグラウンドでやる」

「ぐらうんど??」

「えーと、子供達が運動をしたり剣術の稽古をしたり遊んだりする場所をグラウンドって言うんだけど、ゴーレム専用のグラウンドも用意してあるんだ。まあ簡単に説明すると大広場のことなんだが、言い方をそれっぽく変えただけだな」

「へーーーーーーーーーー!」


 子供達がグラウンドを駆け回ってる光景が目に浮かぶよ・・・。

 くそう、嫁に敗北してる場合じゃねえ。早く開校させねえとな~。


「皆ゴーレムを見たらビックリするぞ!俺達がそうだったように」

「アレはビックリしたよね~!バスで乗り物には慣れてたけど、バッチバチの戦闘が出来る乗り物なんだもん!」

「早いとこエルフ達を鍛えて、俺達もゴーレム軍団を作らんとな!この分野に関しては三河と甲斐に完全に後れをとってるから」

「私が先生をするのよねえ?」

「悪いが今はパメラしか頼れる人がいねえんだ。エルフ達がゴーレムを作れるようになれば先生を代わってもらう事も出来るようになるから、とりあえずエルフ達が育つまでよろしく頼む!」

「ミィとメメの成長をこの目で見るのが楽しみなんだから、出来る範囲で頑張るつもりよ!」

「ハハッ、俺も楽しみだよ!」



 学校はともかく、まずは目先のゴーレムだな!

 久々のゴーレムだから、実は試運転が楽しみだったりする。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る