第636話 今日はドラゴンが食べ放題!
ようやくミスフィートさんに『リヴァイアサンの大剣』を献上するイベントまで終える事が出来たし、さすがにそろそろドラゴンパーティーを始めようと思う。
面倒だけど、サッと肉を食って解散!ってわけにゃいかんのよ・・・。
本質は変わっていないのだけど、今やミスフィートさんは尾張から近畿一帯まで支配する大大名となったので、大勢の兵士達が集まるイベントでは、焼肉パーティーといえど威厳を見せつけなければならないのだ。
ってことで演説も終わったことだし、ドラゴン肉のお披露目だ!
「さて・・・、そろそろドラゴンづくしを堪能しようと思うが、今日はそれぞれが自分で肉を焼いて食う方式にしようと思い、バーベキューコンロを大量に用意した!玉座の間の中央にある白い布が被さったテーブルにドラゴンの肉が大量に置いてあるので、料理班が白い布を取ったら勝手に持ってって勝手に焼いて食ってくれ!」
というか単純に、料理班の皆にもただ楽しんでほしかったのだ。
皆が勝手にやってくれれば、彼女達に負担が掛からないからな!
「タレや塩胡椒なんかは、皿や箸と一緒にそれぞれのテーブルに置いてあるから、中央のテーブルから生肉を持ってくだけで大丈夫だ。肉は腐るほど大量に用意したから、焦って床に落とさないようにな!料理班が白い布を取ったらドラゴンパーティーの始まりだ!」
料理班が中央のテーブルまで歩いて行き、料理長の和泉が説明の補足をする。
「まずは普通のドラゴンのお肉の方だけ白い布を取るね!最初に普通のドラゴンを堪能してから、その後で『黒龍』と『リヴァイアサン』の高級肉を頂き、ドラゴンの格の違いを感じてほしいんだ!とか言って、私も全然知らないんだけどね!」
「「わはははははははははははははははははははははははは!!」」
「じゃあいくよ~!焦って転ばないようにね!」
シュッ
料理班が布を取ると、明らかに食べきれない量の山積みドラゴン肉が出現した。
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
こんなのを見てしまっては、焦るなと言われてもつい目が血走ってしまい、ほとんどの人が駆け足気味で中央のテーブルに集まって行った。
この後に大物が控えていると警告したにも拘らず、皿を山盛りにしていく人が何人もいたけど、もちろん好きなようにさせる。
少し混雑が収まってから、俺もミスフィートさんと一緒に中央のテーブルまで歩いて行き、大きな皿に様々な部位の肉やホルモンを乗せた後、もう一つの皿に薄く切った生食用のレバ刺しを乗せ、玉座まで戻って来た。
そしてようやく、玉座の横に設置したバーベキューコンロで肉を焼き始める。
「死ぬほどうめええええええええええええええ!!」
「これが噂に聞く、伝説のドラゴンステーキなのか・・・」
「長いこと小烏丸さんの側にいる俺達でも、滅多に食えない肉だからな!大型船に乗って世界最北端まで行くなんてまず無理だから、もう次は無いくらいの気持ちで限界まで食いまくれ!」
「待て、早まるな!リヴァイアサンとか言ったか?その高級ドラゴン肉を食ってから本気を出した方がいい!」
「これより美味い肉があるなんてヤバ過ぎだろ・・・」
先に肉を食べ始めた人の声が聞こえて来て、ミスフィートさんと二人で肉を焼きながら、顔を見合わせてニヤけてしまった。
昔からミスフィート軍にいる人達は何度かドラゴンを食ってるけど、伊勢の人達は初めての体験だもんな。そりゃーもう感動の嵐だろう!
「そろそろ食えるのではないか?」
「ですね!むしろ少しレアなくらいが柔らかくて美味しいですよ」
牛肉と違ってこれはドラゴンなので、未だによく分かってないんだけど、おそらくヒレ肉の中央にある『シャトーブリアン』と思われる部位を狙って持って来たので、ミスフィートさんにオススメし、俺も同じ肉を口に入れた。
「ふわあ~~~~~!本当に美味いな!」
「やっぱりドラゴンは格が違いますよね~!」
冷凍肉だったのが少し気になってたんだけど、逆にすぐ食えなかったおかげで肉を熟成させたのか、以前食った肉よりも更に美味しく感じるぞ!
そして大皿の肉が無くなったタイミングで、和泉の声が聞こえてきた。
「さあさあ!お待ちかねの高級ドラゴン肉の解禁だよ!」
シュッ
白い布に隠されていた高級肉は、見た目も高級感に溢れていた。
「お肉の色が濃い方が『黒龍』で、白っぽい方が『リヴァイアサン』だよ!もうお腹いっぱいの人もいそうだけど、頑張って食べ比べてみよう!」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
高級肉と聞いては満腹野郎ですら再び腹を空かし、一瞬のうちに中央のテーブルに人が殺到した。
「すぐ行かなくて大丈夫なのか?」
「高級な部位って、実は少し下の方に置いてあるんですよ」
「わははははは!流石は軍師だな!こんな所でも罠を仕込んでいたとは」
「残り物には福があるって言うでしょう?」
「なるほど!だがそれってくじ引きとかの話だろう?」
「ですね。仕込みでもしなければ、普通は良い物から消えていきます」
誰が言ったか知らんけど、良い物ほどすぐ無くなるに決まってるわな。
バーゲンの売れ残り商品に、良い物なんか残ってるわけがねえ!
そんな会話をしている間に、中央のテーブルが空いてきたので、俺達も高級肉を取りに行った。
ジュワー パチパチパチパチ
「何でアンタ泣いてんの?」
「わかんない!」
「何なのこれ?美味し過ぎて涙が止まらない・・・」
「うえーーーーーん!美味しいよーーーーーーーーーー!!」
後発組の俺達の肉が焼きあがる頃には、もうすでにほどんどの人が号泣していた。
「いつの間にか全体がおかしな空気になってないか!?」
「これが普通です。上位龍の肉を食べて、泣くのを我慢するのは不可能です」
「そ、そうなのか・・・」
「さあ肉が焼けましたよ!俺は黒龍の方から食ってみよう」
「ならば私はリヴァイアサンからだ!」
いきなりヒレ肉から食うのは涙腺的に危険なので、二人ともサーロインを選択。
―――――そして肉を噛みしめた瞬間、涙腺が崩壊した。
「うぐっ・・・、美味さの桁が違う。なんということだ・・・」
「サーロインにしたのに、ほとんど意味が無かった!」
今度は俺がリヴァイアサンを食べて、ミスフィートさんは黒龍ステーキだ。
「涙が次から次へと溢れ出てきて、拭いても拭いてもキリが無いぞ!」
「味が違うような気はするけど、ただただ美味いって言葉しか出てきませんね!」
その後、両方のヒレステーキを食べ比べてみたけど、サーロインの時点で美味さが天元突破しており、ほとんど違いを感じ取れなかった。
言いたいことは沢山あったけど、二人ともただ涙が溢れ出てくるばかりで、途中からは会話もしないで黙々とドラゴン肉を食べ続けた。
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