第635話 青白いアレを献上してみる

 さすがに何万もの一般兵を参加させるのは無理だったが、美濃にいるドワーフ達と尾張や伊勢の城を任されている人達を除いたミスフィート軍の主力メンバーが、ようやく流星城の玉座の間に大集結した。


 ふぅ、やっとだよ・・・。


 北海道にいた時から皆のお土産にドラゴンを持って帰ろうと考えていたのだが、まだ聖帝軍と戦っている仲間達がいるのに自分らだけが食うわけにはイカンと思い、ずっとこの日が来るのを待っていたのだ!


 ずっと最前線で頑張っていた仲間達を精一杯労わなきゃならんのに、城でぬくぬくしていた人達だけイイ思いをしていたと知ったら落胆させてしまうからな。


 とはいえ、もうすでにダンジョンで収穫した果物なんかでワーワー騒いでいたわけだけど、それらは皆が苦労して手に入れた物だし、何度だって収穫出来るヤツだから勘弁してほしい。今日の祝勝会で好きなだけ食べられるしな!


 あと夜伽の順番とかもあるけど、それは嫁会議で予め決めてあったルール通りに行動しているのだから、これに関しては文句ないと思うけど・・・。



 城内の全員が集まったのを確認し、ミスフィートさんが玉座から立ち上がる。



「先程、ルシオ、チェリン、カトレアの三名から、丹波国の完全制圧に成功したと報告を受けた。今日まで本当にご苦労だった!明日から一週間の休暇を与えるので英気を養ってくれ!」



 ワー パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!



「そして摂津国を平定したカーラ軍、和泉国を平定したリタ&リナ軍、そして少ない兵数ながらも美濃国を攻略中のドワーフ達の救援に駆けつけ、リッチモンド軍を撃破してみせたベアトリーチェ隊の活躍も見事だった!」



 ワー パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!



「皆が揃っている今が絶好の機会だ。かなり久々となるが、近日中に論功行賞を行うぞ!だがその前に、この世界最北端の地まで飛ばされたにも拘らず、自ら大型船を造って果てしなく続く海を越え、ようやく我らの元に帰ってきた小烏丸が、旅の間に手に入れた土産を皆に振舞ってくれるそうだ!」



 ワー パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!



 中央の階段を上がり、ミスフィートさんの玉座の反対側にあるゴブ夫くん席の前まで移動し、皆の方を振り返る。



「突然皆の前から姿を消して本当にすまなかった!軍師不在という状況の中、まだ聖帝軍の武将が多く残る聖帝領の大半を平定してみせたミスフィート軍の精鋭達!その戦いっぷりを見ることは叶わなかったが、本当に見事な活躍だった!」



 ワー パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!



「もう噂で聞いていると思うが、俺が飛ばされた世界最北端の地である『北海道』は、危険極まりない凶悪な魔物が跋扈する魔境だった。聖帝との戦闘で満身創痍だというのに、最初に出会った魔物が『黒龍』だったんだぜ?だが俺はこうして生きて帰って来た。それが何を意味するか?そう、俺はドラゴンを手に海を渡ったのだ!」



 ワー パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!



「だが俺が倒したドラゴンの数は一体どころではない!持ち帰れる量にも限度があるから無駄に乱獲はしなかったけど、此処に集まった全員が満足するほどの大量の肉を土産として持ち帰ったぞ!!」



「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」



「そして北の大地で出会った仲間達と共に海を渡ることになったのだが、船の上で俺達はとんでもない魔物に襲われることとなった。そいつの名は『リヴァイアサン』。巨大な青白いドラゴンだ!だが俺達はその恐るべき怪物をも撃破した!」



 そう言った後、ミスフィートさんの方にテクテク歩いて行き、マジックバッグから一本の武器を取り出した。



[リヴァイアサンの大剣]

:小烏丸作の大剣。様々な付与魔法が込められている。評価SS

:素材はリヴァイアサンの牙

:力10%アップ

:斬撃強化(極)斬撃速度強化(極)刺突強化(極)刺突速度強化(極)

 破壊強化(極)

:自動修復(強)衝撃耐性+++ 汚れ耐性+++ 精神耐性+++ 魔法耐性+++



 時間を見つけては頑張って強化していたので、性能はMAX状態だ。

 実戦で使うかどうかはわからんけど、格好良いから最強にしたかったのだ! 



「ミスフィートさんへのお土産です!」



「大剣ではないか!!」



 彼女は少し興奮気味に大剣を鞘から抜く。



「な・・・、何だ、この剣の色は!?」



 非常に珍しい青白い剣身を見たミスフィートさんの目が大きく開いた。


 マジでこの大剣って異常なほど格好良いからな!

 ぶっちゃけ俺の黒い大剣よりも、こっちの青白い大剣の方が格好良いと思う。



「なんて美しい大剣なんだ・・・。いや、お土産?世界の誰もが羨望の眼差しを向けるに違いないこの白い大剣が、お土産って!!」



「「わあああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」」



 当然ながら、ミスフィートさんの持つ大剣を見た全員から感嘆の溜息が漏れた。



「お土産って言い方はちょっと軽かったですね。この『リヴァイアサンの大剣』は、俺とあそこにいる旅の仲間達からの献上品ってことにしましょう!」

「それは嬉しく思うが、私だけがこんな凄まじい剣を頂戴するというのは・・・」

「大名に献上品が送られるのは当然です!それに俺も『黒龍の大剣』を作ったので、ミスフィートさんとお揃いですよ?」

「お揃い!?」



 マジックバッグから黒龍の大剣を取り出し、鞘から抜いて見せた。


 その漆黒の刀身を見たギャラリー達から歓声が巻き起こる。



「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」




「なんと!その黒い大剣も凄まじいな!!」

「こっちは黒龍の素材から作った大剣です。ホラ、白と黒でお揃いでしょう?」



 二本の大剣を見比べたミスフィートさんがプッと噴き出した。



「わははははははは!確かにお揃いだな!」



 さてと・・・。

 ようやくミスフィートさんに『リヴァイアサンの大剣』を渡すことが出来たぞ!


 渡すのは論功行賞の日にしようか迷ったんだけど、リヴァイアサンを倒した話をした時がベストかと思ってね。


 祝勝会も良い盛り上がりを見せてるし、そろそろドラゴン肉を頂くとしますか!

 

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