第631話 カレーライス
京の都ダンジョン31階層の大自然フロアで、大量の果物と香辛料をゲットした探索隊の人達は、誰もが楽しそうな笑顔で帰りのバスに乗り込んだ。
とりあえずこの収穫祭でほとんどの人が満足したと思うから、明日からはダンジョンに来たがる人も減ると思う。
和泉ら料理班はまだ残りの探索を続けると思うけど、とりあえず明日はカレーの仕込みなんかがあるのでダンジョンはお休みかな?
さて俺はどうしよう・・・。
ただ寝に行ったようなもんで、全くダンジョンの探索をしていないんだけど、正直もう満足してるんだよな~。
よし決めた!溜まっている仕事の方を片付けよう。
道路公団の方は親父に任せるとしても、まだ学校が丸々残ってるのだ。
教師の育成もなんだけど、教科書を作らなきゃならんのですよ。
とはいっても、子供達に数学や科学みたいな難しい勉強をさせるつもりはない。
字を教え、剣と魔法を教え、そしてゴーレムを教えるのだ。
その過程で重要となるのは、平和の素晴らしさを子供達の心に刻むこと!
教えた剣術を犯罪に使われたら台無しだから、エスカレーター式でミスフィート軍に入ってもらうのが一番良いのだけど、軍に入る為の学校を作りたいわけじゃなく、子供達に学校というものを体験させてあげたいだけなんだよね。
子供達の可能性を広げ、未来の犯罪率を低下させることが出来れば大成功だろう。
この世界全体の『無知からくる粗暴さ』も無くしたいものだ。
しかし、やる前からああだこうだ考え過ぎると話が進まなくなるので、とりあえずやってみてから色々と改善していこう!
大型バスが城に到着し、夕食まで少し時間があるので落ち着いてコーヒーでも飲もうと自室に向かうことにした。
そして玉座の間に入ろうとした所で、中から話し声と共に『小烏丸』と聞こえ、思わず立ち止まる。
・・・ぬ!?一体中で何を話してるんだ!?
「まさか、あんなすごいことまでされるなんて思わなかったわ!」
「自業自得」
「今夜は眠らせないなんて言ったソフィアが悪い」
「小烏丸がド変態の性豪だって知ってたら言わなかったわよ!でもリタとリナも私と同じような事をされたんでしょ?」
「うん。横で見てるリナに見せつけるかのように」
「二日間、朝まで蹂躙され続けた・・・」
「いや、それはそれでズルくない!?なんで二日制なのよ!!」
「一人につき一日。二人で二日」
「次の嫁に迷惑はかけてない」
「確かにその通りなんだけどさ~!やっぱりどう考えたってズルいよ!!」
「小烏丸のことを変態だって言ってるくせに、まだやり足りないらしい」
「間違いない。ソフィアも変態」
「変態じゃないわよ!貴女方だけ夜伽を二回やったことに文句言ってるの!」
くっ、殺せ!
とてもじゃないが、この空気の中を横切ってくとか無理なんですけど!
俺が素直に蹂躙されていれば嫁話も長引かないのだろうけど、強くなり過ぎてしまったばかりに、度々嫁同士で夜伽話をしてるのが聞こえて来るんだよな・・・。
でもソフィアはともかく、リタとリナは恥ずかしい写真を撮ろうとしてやがったから、逆襲の赤い流星が始まるのも当然だと思いますけどね!
「結局、遅かれ早かれこんな悲しみだけが広がって地球を押し潰すのだ」
小さな声でテキトーにノルマを達成し、その場を去った。
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本気で朝まで蹂躙すると次の日は何も出来なくなってしまうので、悪いと思いつつも本日の嫁は軽くあしらい、十分な睡眠時間を確保した。
そして予定通りに建設中の学校を視察しに行き、思ってたのと違った部分などをエルフ達に修正してもらったりしながら、教科書の内容を考えて一日過ごした。
久々にちゃんとした仕事が出来て満足しながら城に戻ると、食堂に入ったわけでもないのにカレーの匂いがして、居ても立っても居られず食堂へと向かった。
「やっぱカレーの匂いってスゲーな!城に充満してるから一瞬で腹が減ったし!」
「え?そんなに充満してるの?」
「城内に入った瞬間気付いたぞ。今日は普通のカレーライスか?」
「うん。最初にカツカレーとか作っちゃったら、それが普通って思われちゃうでしょ?だから今日のカレーは小烏丸がよく知ってる家庭的なヤツにしたの」
「確かに急いで最強カレーを食うのは勿体ないか」
「でも私はプロのカレー屋さんじゃないので、試行錯誤しながら香辛料を組み合わせてる段階だね。思ってたのと違ってたらごめん」
「俺は変化を求めるタイプなんで、むしろ初めて体験する味の方が嬉しいぞ!」
和泉とそんな会話をしていると、ダンジョン探索班が帰って来たようで、匂いに釣られた腹ペコ共が食堂に雪崩れ込んで来た。
「うおおおおお!カレーの匂いだーーーーーーーーーー!!」
「すごく良い匂いがする!何これ??」
「初めて嗅ぐ匂いだな。今日は新作の料理が食べられるのか?」
「お城全体に充満してますわ~!これは食べるのが楽しみですわね!」
「これって31階層で発見した食材の匂いなの?」
「すごくワクワクしてきたーーーーーーーーーー!!」
親父とグミが俺を見つけて指差し、こっちへ歩いて来た。
ミスフィートさんやお嬢らは、食事の時は別のテーブルに着いている。
「小烏丸、カレーだぞカレー!頑張って人形共をしばいた甲斐があったな!」
「スイカやメロンだけでもスゲーのに、まさかのカレーだもんな」
「カレーって名前の料理なの?」
「うむ。和泉ちゃんの気分次第では激辛カレーの可能性もあるから、美味いか辛いか今はまだ判断できん!」
「カレー初心者ばかりだから、最初は手加減してくれるんじゃね?」
「えええええ!!カレーって名前だけあって辛い料理なの!?」
「いや、辛いからカレーと呼ばれているわけじゃなかった気がする。たまたまそういう名前の料理だったってだけで」
「お、来たぞ!!」
俺の席は厨房に近い最前列の特等席なので、大体いつも料理長自ら料理を運んで来てくれるのだ。
「ハイお待たせ!なかなかの味に仕上がったわよ~!」
「おお!色んな野菜が入ってて食欲をそそるな!」
「久々ってのもあるけど、こりゃマジで美味そうだ!」
「へーーーーー!ご飯に何か茶色いのがかかってるね。これは期待!」
さて、甘いか辛いか激辛か・・・。赤い流星、行きます!
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
久しぶりのカレーの味に、ちょっと泣きそうになった。
ちなみに激辛ではなく、ほんのり辛さを感じる程度の初心者仕様だった。
「メチャクチャうめえええええええええ!!」
「美味えな!激辛じゃなくて良かった。おそらく初心者には丁度いい辛さだろ」
「何これ!すごく美味しいんだけど!!もうね、すごく複雑な味がするの!!」
「グミが喜んでるってことは大成功かな?やっぱり最初はこれくらいマイルドにして、みんなにカレーを好きになってもらわなきゃだしね!」
いやもう完璧でしょう!やっぱり和泉の料理テクには隙が無いな。
もう間違いなく、この中の半数以上がカレーの虜になるだろう。
俺としてはカツカレーが食いたかったんだが、それはまだ時期早々かな?
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