第630話 和泉がとんでもないモノを発見しよった
取引きの前払いとして聖水を補給できることになったので、虎徹さんと一緒にアリアダンジョンへと転移した。
「この部屋に来たのは久々ですが、全然変わってなくて良かった!」
「ココってダンジョンだから風も吹かないだろ?普通の家と違って誰もいない間に埃が溜まることも無いんで、ほとんど掃除もしないしな」
「なるほど!人がいる時にしか部屋が汚れないのか」
「普段は向こうの世界で暮らしてるから部屋の模様替えをしようとも思わんし、まあこの部屋はずっとこのままでいいだろ!」
「ですね!・・・さて、この後京の都ダンジョン31階層の大自然フロアを探索することになってますんで、サクッと聖水を補給して戻りますかね~」
「そういや30階層のボスを倒したばかりだって言ってたもんな」
「先行で派遣した人達がメロンとスイカとパイナップルだけ収穫して来てくれたんですけど、やっぱり日本人勢が探索に行かないと、気付かない食べ物が結構あったりするんですよね」
「確かにその通りかもな。堺ダンジョンもアニキの知識に全てかかっている!オレ植物とか何も知らんもん」
俺も小学生までの知識しか無かったら、半分以上見逃してしまうだろう。
今だって和泉の豊富な知識に比べたら雑魚もいいとこだし。
しかし清光さんは暴走族上がりのくせに、何でも知ってそうな予感しかしねえ!
「清光さんに任せておけば間違いないでしょう。あの人、元暴走族って肩書きが噓なんじゃないかと思うくらい物知りですもんね」
「ホント意味分かんねーよな!!」
そんな会話をしながら、聖水用の巾着袋二つが満タンになるまで聖水を補給した。
ついでに勿体ない精神でデカい箱を出す。聖水はいくらあってもいいのだ!
「サービスだ!」
「ん?」
パシッ
飛んで来た物を慌ててキャッチすると、それは小さな巾着袋だった。
「ハッ!?もしかしてマジックバッグ!?」
「もう聖水を出し渋る意味が無くなったようなもんだからな。まだ堺ダンジョンを調べてないから仮契約の段階だけど、まあいいだろ!」
「うおおおお!ありがとうございます!!ミスフィート領がかなり広がってしまいましたから、各地にある城に聖水を運ぶ必要があったので本当に助かります!」
本当は俺以外にマジックバッグを持たせた方が色々と都合がいいんだけど、この状況では素直に俺が登録するしかないよな。
手袋を脱いでから脇差で指の先をチョンと斬り、マジックバッグの所有者登録を済ませてから聖水で傷を癒した。
そして新しい巾着袋も聖水で満たしてから、やっぱりデカい箱も聖水を満タンにしてマジックバッグに収納。
それを見ていた虎徹さんがニヤニヤしていたけど、だって勿体ないんですもの!
チャンスは最大限に生かすのが赤い流星の信条ですから!
「よし、バッチリ補給完了です!」
「んじゃ帰るぞ~」
シュッ
玉座の間に戻って来ると、清光さんが唐揚げチキンを食っていた。
「お?唐揚げチキンを貰ったんですね」
「なにィ!アニキだけずるいぞ!!」
「なかなか帰ってこねーから、『これでも食いながら待っているといい』ってミスフィート殿が持って来てくれたんだ。コテツの分もあるぞ」
「おお、やった!!」
10分で戻る予定が20分近く掛かってしまっていたらしい。
「アツアツじゃないけど普通にうめーーーーー!!」
「懐かしい味だ。人形に入っていたのが意味不明だが」
「その唐揚げチキンがギッシリ詰まった人形と、俺はプロレスをしたんだぞ?」
「普通に動いてたよな。佐藤ちゃんとケロケロちゃんもだけど」
「そうそう!あの風邪薬、食っても大丈夫とは聞いたが紛らわしいな」
「風邪薬??」
「見た目は風邪薬なんだが、中は普通のラムネらしい」
「ラムネだって!?それも食ってみたいんだけど!」
「ここにあるよ。ハイあげる!」
「サンキューーーー!」
この盛り上がりっぷりだけでも、全身練乳濡れになってまで頑張った甲斐があったと思えるよ。
しばらくは遠慮したいけど、また80人で人形の回収に行くしかねーよなやっぱ。
あーでも堺ダンジョンの人形階層もすげー気になるぞ!
京の都ダンジョンに出現しなかった人形が絶対何体もいるハズ!
・・・とまあ、運良くお菓子パーティーに参加して満足した清光さんは三河へと帰っていった。
虎徹さんはこのまま堺ダンジョンに向かうらしく、俺と親父が運転する大型バスが超満員なのを見て大笑いした後、バイクに乗って風のように消え去った。
とりあえずダンジョンを発見したら知らせるよう言っておいたので、何日かかるか分からんけど後は連絡待ちだな。
そして京の都ダンジョン31階層の大自然フロアに全員を送り届けた後、メチャメチャ気になったけど眠気が半端なかったので、俺は一人湖のほとりで眠りについた。
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「小烏丸!とんでもない大発見だよ!!」
俺を呼ぶ声が聞こえて目が覚めた。時計を見ると16時だったので、思ったよりも深い眠りについてしまっていたようだ。
「ん?大発見だって?」
「見てよコレ!!」
和泉の手の平に乗っていたのは生姜だった。
「へーーーーー!生姜なんてよく発見したな」
「違うよ!あーでも確かに生姜にも見えるね。っていうか生姜の仲間だし」
「生姜の仲間?」
和泉がポキッと折ったのを渡されて匂ってみるよう言われたが、漢方みたいな匂いがするだけでちょっとよく分からなかった。
「さっぱり分からん」
「う~ん、確かにこのままだとちょっと分からないかもね~。じゃあ答えを言っちゃおう!ウコンだよ!!」
「ウコン?・・・あーーーーー!それってカレーのヤツじゃん!!」
「ピンポーン!実はウコンって色んな種類がるんだけど、これはターメリックだからカレーが食べられるよ!しかもね、他にも色んな香辛料が見つかったのだ!」
和泉が次に見せてくれたのは唐辛子だった。
「唐辛子キタコレ!!」
「この階層はやっぱり大当たりだったよ!今日はちょっと時間が無いから無理だけど、明日はカレーです!!」
「よっしゃあああああああああああああああああ!!」
とうとうミスフィート軍の食卓にカレーが追加されたぞ!!
どうせなら探索に同行して一緒に喜びたかったけど、まあそれはしゃーないか。
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