第628話 Wダンジョン交渉
しばらく幸せそうに果物を食べている二人を見ていたけど、ちょうどいい機会だと思い、周辺に清光さんと虎徹しかいないことを確認し、ダンジョンについて分かったことをザっと説明する。
「猫ちゃんに直接聞いた確かな情報なんで話しておきます。京の都ダンジョンに入ると1階層に水晶の置かれた台座があるのですが、それを使うことで階層間を容易に行き来できるようになるんですよ!」
「マジか!!」
「帰還ポイントか!?」
「ただ『
「細かいな!」
「なるほど。長い年月の間に『
「流石に鋭いですね。度重なる
「へーーーーー!セーブ出来るのか!スゲーいいじゃん!!」
歴代の大名にダンジョンが制圧されてきただろうからな。
わざわざ次の大名にキーワードを教えてやる必要も無いだろうし。
「そして11階層に到達すると、降りてきた階段が無くなってしまうのですが、これはボスだけを乱獲されないようにする為にそうした感じですね」
「なるほど!」
「ん?猫水晶が使えない奴等はどうやって地上に帰るんだ?」
「そう!そこが重要なポイントだったのです!降りてきた階段は消えましたが、別の階段が出現していまして、試しにその階段を上がってみた所、なんと大自然フロアになってました!」
「ダンジョンの中に自然があるのか!!」
「木とか草が生えていて、森があったりもするのか?」
「それどころか湖もあって魚が泳いでますよ!そして草原には山菜が生えていて、森の中で果物を発見したのです!」
「あーーーーー!そういうことだったのか!!」
「ようやく繋がった!そうか、ダンジョンに大自然フロアとは面白いな!」
これを最後まで説明せんと、交渉まで辿り着けんのだ。
さてと、ようやく先へ進めるぞ!
「そしてその深さは、なんと驚きの100階層超え!ただし俺の実力でも死ぬほど危険らしく、100階層以降は亀の歩みで慎重に進めと警告されました」
「100階層かよ!!」
「聖帝とやり合った小烏丸でも死ぬほどの難易度か。迂闊に手は出せないな」
「それでですね、話の流れでサラッと彼女が言ってたんですけど、『京の都ダンジョン』と『堺ダンジョン』を作るのに本気を出し過ぎて疲れたから、それ以外のダンジョンは結構適当に作ったらしいです」
「ダメじゃねえか!!」
「ほう?『堺ダンジョン』も彼女が本気で作ったんだな?」
やっぱスゲーなこの人。
俺が言いたいことを一瞬で読み切ったか。
「そう。『堺ダンジョン』は彼女が一切手を抜いていないダンジョンなのです」
「確か堺って、摂津国・河内国・和泉国の間にある街だから『堺』って呼ばれるようになったと聞いたことがある。その三国への侵攻状況はどんな感じだ?」
「ようやく全てを手中に収めました。でもまだ制圧したばかりで、帰って来たばかりの俺は視察にすら行けていませんので、堺ダンジョンは放置されたままですね」
「ほう・・・」
頭脳派暴走族の清光さんが、この話を聞いて何を思うかは大体分かっている。
なんせ尾張軍師がそういう方向に誘導したのだから。
「メロンを入手したのは何階層だ?」
「まだ31階層までしか到達していないので、31階層の大自然フロアです。11階層までは1日で到達可能なのですが、先へ進むとダンジョンがどんどん広くなっていくので、結構日数が掛かるのですよ」
「ガチョピン&モックは30階層のボスか?」
「正解!ああ、偶然発見したのですが、これほど沢山の人形が出現した原因は、80人で31階層を目指したせいみたいですね」
「どういうことだ?」
「80人パーティーと判断されて、ダンジョンの難易度が最高レベルにまで上がったんだと思います。すなわちレアな人形がいっぱい欲しいならば、80人で攻略すれば確実かな?パーティーメンバーが少なければ、もっと楽に進めるみたいですね」
「スゲーな!もう裏技まで発見したのか!!」
いきなり反応したってことは、虎徹さんってゲーマーだったのかな?
逆に清光さんは暴走族なくらいだから、ゲーム的要素には疎い気がする。
「大体の事は把握した。では交渉を始めるとしよう」
来た!ここからが本番だぞ・・・。
「今までと同様ならば、小烏丸がアリアダンジョンに何日か滞在し、俺達が京の都ダンジョン31階層まで到達して、野菜と果物と人形を入手するといった取引になっていただろう」
すなわち、今回はいつもと違う取引を持ち掛けるつもりだということ。
「野菜や果物が無限に収穫出来ると言ったな?」
「出来ます。もうすでに京の都に巨大市場を作り、一般人に流通させています」
「もうそこまで進んでいたか・・・。でだ、堺ダンジョンにも大自然フロアはあると思うか?」
「猫ちゃんは、浅い階層に大自然フロアを作って一般人が食べ物に困らないようにするほど慈悲深い人です。十中八九、堺ダンジョンにもあるでしょうね」
「俺も同じ考えだ。悪役として用意された魔王を憂い、この世界に匿うほどの優しさを持つ彼女ならば、京の住民だけ贔屓するとは思えん」
「でも堺ダンジョンに同じ人形が出現するとは限りませんよ?」
「まあ人形に関しては、違うのを用意している可能性の方が高いな」
すなわち、焦点は完全に野菜・果物ということか。
「もう俺が何を言うか分かっている感じだな?そう、無限契約だ」
「やはりそう来ましたか!」
「無限の野菜に果物、無限の聖水にガチャ。どちらにとってもメリットが半端ねーからな」
「でも堺ダンジョンについて、まだ何も分かってない状態ですよ?」
「ウム、とりあえず調査してからだな。もし目論見が外れた場合は、京の都ダンジョンを使っての短期契約になる」
「そうですね。堺ダンジョンの調査はそちらに任せてもいいですか?」
「そのつもりだ。まずは虎徹に堺の街まで行ってもらって、80人でダンジョンに乗り込むぞ!」
「かなりハードなんで気を付けて下さい!」
よし!本契約ではないけど、とりあえず予定通りに事が進んだぞ!
「そういうことなら小烏丸に前払いしとくか。今すぐ聖水が欲しいんだろ?」
「もうコップ一杯分しか無いです。飢え死に寸前ですよ!!」
「じゃあ虎徹、小烏丸をアリアダンジョンに連れて行ってくれるか?」
「今すぐ行くのか??」
「あーーー、今日は一睡もしてないんで、行くなら明日がいいのですが」
「なんで寝てねーんだよ!?」
いや~、ちょっと嫁と盛り上がってしまいまして・・・。
「おーい、小烏丸!その二人は一体何者だ!?」
ん?親父か。
「ああ、紹介するよ。この人達も俺達と同じ日本人なんだぜ?」
「日本人だと!?」
「おい小烏丸!今、『俺達』って言ったよな?この人も日本人なのか?」
「日本人っつーか、俺の親父ですな」
「「親父!?」」
そういえば、まだこの二人に親父のことを話してなかったな。
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