第627話 清光さんも驚かせてみよう
急いで城を出たけど、流石の虎徹さんも一瞬で戻って来ることはなく、城門の前で5分ほど待っていると、目の前に三河の最強コンビが出現した。
「ようこそ京の都へ!お久しぶりです清光さん!」
「久しぶりというほど久しぶりでもないが、小烏丸、また会えて嬉しいぞ!」
「しかし虎徹さんさえ派遣すれば、一瞬で遠方まで飛べるってズルくない!?」
「まあな!やろうと思えば敵国のど真ん中に何人もの兵を送り込めるわけだから、かなりの反則技ではあるな」
「それはヤバイですね!ところで虎徹さんからどこまで聞きました?」
「ほとんど何も聞いてねえ。コテツに『ミスフィート軍が京の都に建てた城がクッソおもしれーから見に行こうぜ!』って言われたから来てみただけだ」
「いやアニキ、話したら面白さが半減するじゃん!」
「なるほどなるほど。じゃあ初めからスタートでいきましょう!」
「コテツ、何を笑っている?」
「気のせいだ!!」
先程と同様、清光さんも城の出来栄えに関心しきりだった。
俺もこの城の雰囲気はかなり気に入ってるんだよね~。
そして扉が開いたままの玉座の間に入った。
「なんじゃこりゃあああああああああああああああ!!」
超絶カオスな玉座の間を見た清光さんが叫び声をあげた。
思わず噴き出しそうになったが、自分とまったく同じ反応をした清光さんを見た虎徹さんもニヤニヤしていた。
「何で人形がいっぱい並んでんだよ!?」
「わはははは!おもしれーだろ?絶対にアニキが知ってる人形があるハズだぞ!」
「俺が知ってる人形?うお!アレって、ガチョピンとモックじゃねえか!」
「玉座って少し高い場所にあるから、この位置からでもよく見えますもんね」
「サンダー大佐も見えるぞオイ!!」
「アレ欲しいよなーーーーー!」
虎徹さんの時とまったく同じ反応なんだけど、やっぱ笑っちまう!ただ清光さんの方が日本で暮らした年数が長いから、虎徹さんより知ってる人形が多いハズ。
そして三人で人形の間を歩いていると、やはりギョロ山くんに気付いたので、虎徹さんの時のように説明した。そして次立ち止まるのは間違いなくヤツの前だ!
「食い倒れ野郎じゃねえか!スパイダー男爵までいやがる!」
「やっぱり気付きましたか。他にもまだ、知ってる人形がいるハズですよ」
「よくこんなの作ったな・・・。服の細部まで覚えているとは凄いな」
「作ってないですよ?これらは全部、昨日偶然手に入れたモノなんです」
「はあ!?手に入れたって、一体どこで?」
「それはガチョピンのいる場所で、この後説明します」
この先にも見せたい人形が数体いるんだけど、道の真ん中に女の子達が群がっているので、迂回して玉座まで移動する。
「うおおおお、マジでガチョピンとモックだ・・・。これは俺の城にも欲しいな」
「だよな!!オレは向こうのサンダー大佐が一番欲しいかも!」
この人形達が武術の達人だということを説明し、サンダー大佐の中に唐揚げチキンが入っていた話をしていると、虎徹さんの口端が上がっていることに気付いた。
「なあアニキ!さっきココに入りきらなかった人形が向こうの部屋にも色々置いてあるって言われて見に行ったんだけど、マジで宝の山だからアレは絶対アニキにも見せたい!いいよな、小烏丸?」
「もちろんいいですよ!もしかしたらガチョピンを見た時よりも驚くかな?」
「ムムム・・・、ガチョピンよりも有名な人形なんて他にあるかあ?」
虎徹さんと二人で笑いを堪えながら奥の部屋まで移動し、上手いこと誘導して清光さんに先に部屋の中に入ってもらった。
「どわああああああああああああああああああああああああ!!」
バフッ!
どうにも笑いを我慢出来ず、虎徹さんと一緒に噴き出してしまった。
「ぶフッ、ハフッ、あ、アニキ、何があった!?」
「くくッ、清光さん、どうしました!?」
「テメーら、ハメやがったな!?全然笑いを堪え切れてねえだろ!!」
「わははははは!!オレもさっきやられたんだよ!この部屋ヤバ過ぎだよな!!」
「清光さんなら、ガチョピンよりもドッキドキ野郎の方が好きなんじゃないかと」
「キモイわ!!つーか本物のアイツって変装した人間だろ!何でこんな酷い仕様になってんだよ!手足の数とか色々おかしいだろ!!」
「それは作った人がそんな気分だったとしか?」
「作った人?・・・なるほど、少し読めてきたぞ」
「とりあえず部屋の外に出ましょうか。あ、市松人形一ついります?」
「いらんわ!!」
というわけで、虎徹さんの時の流れを完璧に再現し終わったので、ガチョピンの前まで戻って来た。
そしてタイマンでガチョピンを撃破したことを自慢し、チャンピオンベルトを見せた後、ようやく京の都ダンジョンの話を始める。
当然ながら清光さんもガチョピン&モックを欲しがったので、虎徹さんの時と同じ様に『自力でGETすればいい』と言い放ち、条件を提示する。
「ガチョピンは魅力的だが、条件としては少し弱いな」
「やっぱアニキもそう思うだろ?ところがどっこい、この話には続きがあるんだよ!小烏丸、例のモノを!!」
「コレを見れば、考えが180度変わると思いますよ?」
野菜と山菜から床に並べ始め、続けて小さな果物からどんどん並べていくと、清光さんの表情が驚きから興奮に変化していった。
虎徹さんと二人で不敵な笑みを浮かべた後、メロン、スイカ、パイナップルという大物三銃士を並べる。
最後に、先程用意したスイカとメロンの乗った皿を清光さんに渡した。
「マジか!!スイカにメロンにパイナップルまでだとお!?」
「な?やべーだろ!?」
「これらは京の都ダンジョンで収穫したモノです。まだ虎徹さんにも言ってませんでしたけど、魔物と同様、収穫した野菜と果物は次の日に全てリポップします」
「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
「とにかく食ってみて下さい!ココに置いた食材は全部差し上げますので、虎徹さんも食べられるモノは一通り試食してみて下さい」
「まかせろ!ココにある果物ならたぶん全部イケる!!」
「メロンなんて食うのいつ以来だよ?手が震えてきたぞ・・・」
「すげーわかる!!」
そして床の上に座り、メロンを口に入れた清光さんが至福の表情に変わった。
ちなみに虎徹さんも、やっぱりメロンから食べ始めた。
「「美味すぎる!!」」
もうこの幸せそうな笑顔を見ているだけで、交渉は成立したと確信した。
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