第598話 小烏丸、開眼する

 来てしまったものはしょうがないということで、とりあえずレムと二人でこの小さな無人島を探索した。


 うん。本当に小さな島で、探索するってほどでもなかったな。

 変なバグも無く、本当に無人島に来たような感覚だ。


 一通り見て回ったので、愛の巣になるであろうログハウスへと入った。



「いいログハウスじゃないか!」

「頑張って作ったのじゃ!」



 広いリビングの奥には台所もあり、普通に料理も作れそうだ。


 その横のドアを開けると中は脱衣所になっていて、さらにドアを開けるとそこは広い浴場となっていた。浴場の中央付近に通路があって、レムが言うにはそこを抜けると露天風呂があるらしい。


 そういやレムと出会ったのは佐渡ヶ島の露天風呂だったっけ。彼女は結構お風呂に拘るタイプだったようだ。


 またリビングに戻って来てもう一つのドアを開けると、どうやらそこが寝室だったようで、中央にやたらと大きなベッドがあった。


 ・・・その気合の入った寝室を見て、彼女の意気込みが伝わってきた。


 他にも小さな部屋が二つあったんだけど、何となく子供部屋を作ってみたらしい。使用するだけで命を削るようなとこに子供達と住むことは無いだろうけど、何となく作ってしまったって気持ちも分かるので、まあいいんじゃないでしょうか。



 一通り探索が終わったので、リビングに戻って来た。



「素晴らしい出来だな!これならしばらく暮らすのに問題なさそうだ」

「じゃろ!?さあて、子作りを始めるぞえ!」

「いや、ちょっと待とうか。子作りの前に、この島で暮らしてる間の食事はどうなるのか知りたい」

「此処はわらわが創った世界じゃからの、食料も水も一瞬で作り出せるのじゃ」


 レムがそう言った直後、食卓テーブルの上にクリームシチューが出現した。


「マジかよ!?」

「小烏丸は働き過ぎじゃからの。此処でしばらくゆるりと暮らして、日々の疲れを癒すのじゃ。子作りは頑張ってもらうがの!」

「あ、はい。ガンバリマス」




 ―――――こうして、レムとのまったりとした暮らしがスタートした。




 当然最初はつるぺたボディーに不安しか感じなかったんだけど、毎日その小さな身体を愛でているうちに、俺も新たな扉を開くに至った。


 開眼して、ようやく俺にも変態紳士の気持ちってヤツを理解することが出来た。

 今の俺にならわかる。ロリっ子こそがこの世の至宝だとな!


 そして彼女に愛されることで、おっぱいなんてあっても邪魔なだけだということを理解させられた。


 俺はあんな脂肪のかたまりに何を夢見ていたのだろう?

 永遠のロリ体型が約束されているレムこそが、俺の求める最高の嫁だったのだ!


 やはり女の子はつるぺたじゃないとな!






 ************************************************************






 岩の上に座って海釣りをしていたら、レムが血相を変えて駆け寄って来た。



「小烏丸!とうとう孕んだのじゃ!!」


「・・・はい?」



 孕んだのじゃって、そんなの子作りを始めて一ヶ月程度で分かるもんなのか!?



「おそらく間違いないのじゃ!何とか間に合ったのじゃーーーーー!!」

「マジかよ!?」

「腹の中にもう一つの命を感じるのじゃ!毎日頑張った甲斐があったのじゃ!」


 魔王って、そんな微妙な変化を感じることが出来るの?

 つるぺただから、本当に子供が出来る身体なのかすら疑問だったんだけどな。


「まったく小学生は最高だぜ!」

「しょうがくせいって何なのじゃ?」

「いや、えーと、まあ気にすんな!それにしても際どい勝利だったな。元の世界に帰る日って明日なんだろ?」

「明日なのじゃ!でも孕んだのならば、もう子作りはやめた方がいいのかの?」

「すでに子を宿した状態ってんなら、絶対やめた方がいいと思う」

「ならば今すぐ帰るぞよ!元の世界に戻り、少しでも身体の負担を減らすのじゃ」



 今すぐかい!!俺としては一日でも長くレムと一緒にいたかったんだけど、身体に負担が掛かっているとなると、我儘を言って無理させるわけにはいかんな。


 本当に残念だが、レムの決定に従おう。


 明日からまた、無駄な脂肪を胸に蓄えた嫁達の相手をしなければならないのは正直辛いが、中にはつるぺた嫁だっているハズだ!もっと心を強く持たねばならん。ロリっ子に出会うまで俺は耐え抜いてみせる!



 ヴォン



 海にいたハズなのに、気付いた時には部屋の中にいた。

 そうか・・・、俺はこの部屋から『レムロリワールド』へと飛んだのだったな。


 釣り竿を持ったままだったので、マジックバッグに収納した。

 そして時計を見ると、針は大体6時を指していた。



「ふ~~~、疲れたのじゃあああああああああああ!」

「6時か・・・、朝かな?」



 カーテンを開けると外は普通に明るかった。よく考えてみると今の時期は朝6時も夕方6時も明るいな。まあ、レムの情報が正しければ朝なのだろう。



「向こうでは昼間だったから全然眠くないな。今日は何か仕事が出来そうだ」

「旦那様は働き者じゃのう~。でもわらわはもう限界だから一眠りするのじゃ・・・」

「レムは眠った方がいい。大事な身体となったのだから、もう今日からは絶対に無茶しないこと。いいな?」

「ありがとうなのじゃ!」



 優しく口付けすると、レムはそのまま布団に潜り込んだ。

 なるべく音を立てないようにして、そっと部屋の外に出た。



「・・・お?セレスティーナじゃないか。こんな朝早くにどうした?」



 なぜか廊下にいたセレスティーナが、俺のいる方にツカツカと近寄って来た。

 そして鋭い視線で顔を覗き込まれる。



「ご主人様、マスクを脱いでくれ」

「一体何なんだ!?まあ構わんけど」



 マスクを脱いで素顔を見せると、訝しんだ目で俺を見ていたセレスティーナがいきなり上着をめくりあげて、自分の胸をさらけ出した。



「うおッ!何やってんだセレスティーナ!!女性はもっと慎みを持たなきゃダメでしょうが!早くその脂、胸をしまいなさい!」

「嫌な予感がしたから急いで来てみれば案の定か!・・・私を見るその目だ。レムめ、やってくれたな!?」

「何のこっちゃ?俺の目がどうかしたのか?」

「いや、一概に彼女が悪いとも言えぬ。自分が愛される為にレムも必死だったのだろう。だがそのような目をした男に抱かれるわけにはいかない!」


 さっぱり意味がわからん!!

 セレスティーナは一体何を言っているのだ?


「早く気付いて良かった!今からなら準備に15時間ほど使えるな。よし、私が必ずご主人様を連れ戻してみせるからな!!」



 セレスティーナはそう叫んだ後、自分の部屋へと戻って行った。



「・・・・・・・・・・・・・・・」



 戻って来たばかりなのに連れ戻すって・・・、誰か説明プリーーーーズ!!

 

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