第596話 新たなるパワーワード
今日もダンジョン入り口にシルバーウルフの毛皮を敷いてその上で寝て、ダンジョン組にいたずらされながら目を覚ます。
いや、普通に起こしてくれませんかね!?
顔の上にバナナって結構ヒンヤリしてビビるんだって!
それにしてもシルバーウルフって、よく考えたらシャイナじゃん!!
獣人と魔物じゃ違うんだろうけど、何かしら繋がりがあったりするんだろか?
下手なことを聞いて幸せ気分に水を差すのもどうかと思うし、しばらくして大丈夫そうな時に聞いてみよう。獣人のルーツってどこが地雷になるかわからんからな。
そして精の付く夕食で今夜戦える分のパワーを回復させ、風呂で冷水をかぶって心頭滅却し、今夜の対戦相手であるパメラの部屋へとやって来た。
「はぁ~~~、昨日まではようやく小烏丸と結ばれる嬉しさで毎日ドキドキワクワクしてたけど、いざその日が来ると緊張するわね・・・」
「俺だって緊張してるさ。右腕のように頼もしく思っていたパメラと、まさか夫婦となる日が来るなんて思ってもいなかったからな」
「・・・うん、本当に嬉しい。でも小烏丸はちょっとお嫁さんが多すぎよ!」
「それに関しては本当にすまないと思ってる。俺だってこんなことになるとは思ってもいなかったんだから!」
俺は一夫一妻の国から来たんだぞ?
こんな嫁だらけのとんでもない事態になるなんて、想像もつかないって!
「あの三人に対してもそうなんだけど、ずっと長い間思わせぶりな態度をとっていたみたいで悪かったな。正直、俺の中ではミスフィートさん至上主義みたいな所があって、他の誰かと結ばれるって考えが一切無かったんだ。だからこそ無造作に誰とでも距離を縮めていたのかもしれない」
その積み重ねが嫁ラッシュとなって、怒涛の如く押し寄せて来ているわけだが。
「しかしそのミスフィートさんから『私だけじゃなく、皆等しく幸せにしてやってくれ』と言われ、完全に目が覚めた。皆が俺を愛してくれるのなら、誠意をもって俺もその愛に全力で応えなければならない。パメラ、生涯お前を愛し続けると誓おう!」
「私だって小烏丸一人を愛し続けることを誓うわ。でもね、いくら愛してると言っても口先だけじゃダメなの。二人の愛の結晶が欲しい!絶対に!!」
「・・・えーと、それってやっぱり発情期の到来でしょうか?」
「当たり前よ!これは獣人だけに与えられた特権。今夜確実に子供を授かって、嫁ランクのトップに躍り出るわ!」
いや、ちょっと待て!
今『嫁ランク』とかいう、新たなパワーワードが出てきたぞ!?
俺が作ったのは『嫁レベル』であって『嫁ランク』ではない。
そもそも脳内で一人でやってることなんで、誰にも話していないハズだ。
「ええと、その『嫁ランク』というのは?」
「初夜に一発懐妊することで小烏丸への愛の強さが皆に認められるの。子宝に恵まれなかったからといって蔑まれたりすることはないけど、上位ランカーともなれば大きな発言権を持つことになるのよ?大事なのは愛の強さだから身分も関係ないわ!」
「いや、初めて聞いたんですけど!!」
間違いねえ!嫁グループ内で、なんらかの話し合いが行われているんだ!!
一番偉いのは大名なんかじゃなく、嫁ランク1位だというのか!?
普段仲良さそうに見えていた嫁達だが、その内情は火花が飛び散る一色触発な状態と知り、足がガタガタ震えてきた。
そうだよ、大奥ってのは一見華やかだが、実は内部では派閥なんかがあったりして、恐ろしい権力争いで常に空気がピリピリしていたとか・・・。
いや、ウチの家族はまだそこまで荒んでないハズだ。
しかし何か策を練っておかねば、取り返しのつかないことになるんじゃ!?
・・・と思ったけど、この世界に世襲制なんて無いから大丈夫か。
その国で1番強い人物が大名となり、武将にしても完全実力主義だもんな。
力も無いのに偉そうな態度の奴がいたところで、サクッと斬られて終わりだ。
放っといていいのかも。
ただ単に、浮かれて遊んでいるだけのような気がしてきたわ。
足の震えが止まった。
「覚悟はできている。見せてもらおうか、獣人四天王の性能とやらを!!」
「また意味不明なこと言ってるわね。じゃあ行くわよ!!」
―――――名セリフまで繰り出したのに惨敗した。
************************************************************
うん、確かに惨敗だったのは間違いない。だって寝てないのだから。
ところがパメラと迎えた朝は、とても満ち足りていた。
相変わらず記憶は無いんだけど、他の三人とは少し違ったような気がするんだ。
現場の惨状から判断すると、違いはさっぱりわからないんだけどな。
ふ~、これで獣人四天王とのバトルは終了か・・・。
強制発情期が無くなる分、魔王バトルの方が少しはマシだと思うが、次の対戦相手はレムだ。『のじゃロリ』であり『つるぺた』でもある、非常に危険な嫁なのだ。
合法ロリだとはわかっているんだけど、犯罪的な絵面になるのは避けられない。
下手をすると、新たな扉が開かれる可能性のある危険な相手。
つるぺたはヤバいだろ!
そっちの世界から戻って来られなくなったらどうすんだよ・・・。
―――――しかし、私も
惑わされるな。
意志を強く持て。
俺は全ての乳を愛せる男、故に不安はなし!
いつものように後処理をしてから、パメラに毛布を掛けてそっと部屋を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます