第36話 帰還
「よお!ガチャはどうだった?」
「お?アニキ。見ての通り撃沈だ。オレから見たら当たりまみれだけどな」
「・・・・・・」
「お、おう。確かに小烏丸が屍になっている、ってそれ!タイヤじゃねえか!」
「あー、そうそう!オレも言おうとしてたんだけど忘れてた」
「いいですよ、それ持ってっても。俺はただの屍なんで」
「いや、そうはイカンだろ!ただ、よくぞタイヤを引き当てた!これで悩みが一つ解消されたわ」
「え?悩み?」
「前に言ったろ。尾張を統一したら、同盟祝いにバイク贈呈するって。タイヤどうすっか悩んでた所だったんだよ」
「あー!そういやそんな話でしたね」
「だからこのタイヤは俺に預けといてくれ。バイク作っといてやっから。でもバイクを渡すのは尾張統一後だぞ?」
「おおおおお!了解です。タイヤは預かっといて下さい!」
そうだよ!尾張を統一したら、俺もバイクに乗れるんだった!
なんか少し元気が出て来たぞ!
「んじゃそろそろ帰還すっぞ?部屋に忘れ物が無いか確認しとけ」
「あ、ちょっと待って。ノーマル8回で終了なんで」
ノーマル8連やったら、シャンプーとリンスが出た。
消耗品はいくらあってもいいから良かった。
部屋に戻って、忘れ物のチェックをする。
「あっ!聖水を持っていきたいので、箱を作っていいですか?」
「確かに聖水は持ってくべきだな。あーそうだ。小さい袋とか持ってないか?」
「ノーマルガチャで出した、ちっさい巾着袋ならあるけど」
虎徹さんに黒い巾着袋を渡した。
「いいね。丁度いい大きさだ」
「?」
「よし、完成だ。それに血を垂らして登録しろ」
虎徹さんが巾着袋を返して来た。
「え?もしかしてマジックバッグ!?」
「おう!小さいと戦闘の邪魔にならんで済むだろ?それに聖水だけを入れて、腰にでもぶら下げて持ち歩け」
「それは非常に助かる!本当にありがとうございます!」
ナイフで手を少し切って登録した。
女神の泉に巾着を少し沈めると、どんどん巾着に聖水が吸い込まれていく。
ほどなく満タンになったので、泉から出して腰にぶら下げた。
よしッ!これで怪我をしても助かるぞ。
「ところで虎徹さんの服って、やっぱガチャから出したセット衣装なんですか?」
「そうだぞ。この眼帯も付けなきゃ、パラメータが上がんねえんだ」
「ハハッ!やっぱり思った通りだ。俺と一緒かあ」
「アニキの特攻服はセット衣装じゃないから、正直ちょっと羨ましいぞ」
「ホントですよ。俺なんてヘルメット着用必須とか、もうね・・・」
比べてもやっぱ俺が一番制約キツイやん。性能は間違いなく最強だけどな。
「よし、んじゃ今度こそ帰還すっぞ」
「小烏丸と出会った場所でいいよな?」
「俺はどこでも構いませんが」
「んじゃあそこで決定だ。よし、みんな手を繋げ」
「転移!」
景色が一瞬で変わり、あの草原に戻って来た。
久しぶりに風を感じて不思議な気分になる。
ダンジョンにはこういう自然現象ってのが無かったからな。
「尾張の方角ってわかりますか?」
「えーと、そっちの森を越えれば尾張だとは思うが、森を越えてくのも大変か。森の左側からぐるっと回りこめば、少し遠回りになるが辿り着けるハズだ」
「ありがとうございます。ミスフィートさんが心配なので、とっとと尾張へ向かうことにします」
「そうだな。まあ困った事があったら、いつでも通信機で連絡してくれ」
「通信機って、この通話ボタンを1回押さないと、こっちの会話は筒抜けにならんのだよな?」
「ええ。俺から連絡があれば、『ピコンピコン』と音が鳴ってそのランプが光るので、通話ボタンを1回押して下さい。すると会話が出来ます。会話が終わったら、もう1回ボタンを押せばランプが消えて会話は遮断されます。逆にそちらから連絡する時は、通話ボタンを1回押して話し掛ければ、俺が持っている親機の番号のランプが光るって仕組みですね」
「すげー優秀な通信機だな。さすがレジェンドだ!」
「ハハッ!じゃあ尾張へ出発します。二人ともお元気で!」
「おう!武運を祈っとくぜ」
「がんばれよ~!」
二人と別れ、尾張へ出発した。
もうココからは俺だけの問題だ。次にあの二人と会うのは尾張を統一してからだ!
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見えたッ!俺が逃げ出したあの街だ。
野宿は嫌だったので、ずっと走って尾張を目指したら、夕暮れ前に辿り着くことが出来た。
身体能力が激増してるので、この程度なら楽勝だ。
相変わらず入口には気の抜けた見張りが三人立っている。
さて・・・、どうやって侵入しようか。
うん。考えるまでもなかったな。このまま普通に歩いて行く。
アイツらがどの程度の実力か、試させてもらうぞ。
「あん?なんだキサマは」
「変な恰好しやがって!」
「怪しいヤツだ。ぶっ殺してやる!」
ホントこの腐れ外道共の超攻撃的な対応には、もういい加減ウンザリだ。
「見せてもらおうか、腐れ外道の性能とやらを」
剣を振り下ろして来たスキンヘッドを躱し、その後ろにいたモヒカン二人の首を落とし、瞬殺する。
「なっ!?なんだお前は!!なんなんだよおおお!!」
スキンヘッドが剣を振り回して来るが、遅い。遅すぎる。
「当たらなければどうということはない、死ね」
スキンヘッドの懐に一瞬で潜り込み、刀を一閃。
胴体を真っ二つにした。
チンッ
刀を鞘に納め、外道共の死体を一瞥する。
「こんなものか」
さて、どうやってミスフィートさんを見つけ出すかだな。
―――のちに『赤い流星』と呼ばれ、全国各地から恐れられる事となる一人の修羅が、この日、突如尾張の国に出現した。
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