第37話 絶体絶命のピンチ

 それから何日もの間、外道どもを殺しながら街に潜伏して過ごしていた。


 あまり派手にやりすぎると逆に警戒されて隠れられてしまうだろうから、線引きが非常に難しい。

 なんせあの頃の俺と見た目が全然違うので、向こうから発見してもらうってことが不可能な状態だ。

 なのでこちらから見つける必要があるのだが、正直俺は目立ちすぎる。

 不用意に歩いてると、すぐモヒカンに見つかって戦闘になるのだ。



「これは困ったぞ・・・」



 ジャバルグからしたらミスフィートさんはお尋ね者だ。

 お尋ね者を探し出すって、こんな難しいことってないよな?


 しょうがねえ。高い所へ登ってそこから探そう。


 見張り用の櫓が何か所かあるのはわかっている。

 中にはモヒカン共が詰まってるだろうが、全て駆逐して占拠してやる。



「あ?なんだお前は!」「ぎゃあ!」「なッ、敵襲だガハッ!」「ヒィィィ!来るな、ゴヘッ」


 一番近くの櫓に侵入し、部屋の中にいた5人を皆殺しにした。


 異変を感じ、階段を降りて来た2人を速やかに処分。


 そのまま階段を上がり、更に1人を斬って櫓を占拠した。



「後はミスフィートさんを見つけ出せるかどうかだな・・・」



 ビームライフルのスコープを使い、長い張り込みが始まった。






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 ―――――廃墟裏の通路―――――




「グッヘッヘッヘッヘ!この女が死んでもいいのか?ああん!」

「かはッ!」


「やめろ!その女を離せ!」

「わ、私のことはいいから、に、げて・・・」

「ヒッヒー!ほお~ら死んじゃうゾお?」


 くそッ!なんて汚い奴らだ!!

 あの外道1人なら瞬殺出来るのに、後ろにいるダロスがやっかいだ。

 少しでも変な動きをしようものなら彼女をナイフで殺すだろう。


「オラどうした!!とっとと武器を捨てろ!」

「早くしろや!俺は凄く気が短いんだ!!」


「わ、わかった!武器は置く!彼女には手を出すな!」


「だ、ダメです!私は見捨てて!お願いよお!」


 武器を地面に置いた。


「ああ!?武器をこっちに蹴るんだよ!!オラ!早くッ!!」

「くッ!」


 剣をヤツらの方へ蹴った。


「よーし!あの女を捕まえろッ!」

「ヒャッハー!どうやら年貢の納め時だなァ!!」



 くそお!みんなごめん、私はここまでのようだ・・・。



「残念だったなァ!?すぐジャバルグ様に会わせてや・・・」


 え?


 目の前にいた男の首が、・・・消えた。


「な!?なんゲハッ!!」

「オ、オマエ!どこから沸いて出やがッ!や、ヤメロ!ギャアアア!!」


 チンッ


 一瞬で悪党共3人が死体となって倒れた。



 私は夢でも見ているのか?




「ミスフィートさん、貴女を助けに来た」




 そこには不思議なマスクをかぶった赤い服の男が立っていた。




「・・・誰?」






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 ―――――小烏丸視点―――――




「・・・誰?」



 あれ?

 俺ってもう完全に忘れられてる?



 ああ、俺は馬鹿か!?こんなマスク付けてたら彼女に分かるハズがない!


 ヘルメットを脱いでマスクも外す。



「俺のこと、覚えてますか?」



「・・・あっ!その顔は確かに知っている!・・・一体どこで??」


「2年前だ。この街で俺は貴女に助けられたんだ」



「2年前・・・、ああっ!そうだ!!確か名前は、・・・こがらすまる?」

「覚えていてくれてありがとう。そう。小烏丸だ!」


「そうか!良かった!!生きていたんだな!」

「2年間ずっと修行をしていた。そして俺は、あの頃よりは強くなったと思う。今度こそ貴女の軍に入れて欲しい」

「私の軍に!?・・・もちろんだ!キミを歓迎しよう!」


「良かった」



 いや~、やっと俺の入隊が認められたか。

 しかし間一髪だったな・・・。

 見つけるのが後一歩遅れていたら彼女はどうなっていたことやら。



「あ、あのッ!助けて頂いて感謝します!」


 ん?ああ、悪党に捕まっていた子だな。


「君も無事で良かった。怪我は無いか?」

「だ、大丈夫ですッ!」

「そうか」


「こがらすまる、キミをアジトに案内したい。ついて来てくれるか?」

「もちろん」


「あっ、倒したのはキミだが、コイツらの装備を回収してもいいだろうか?」

「ん?構わないですよ。俺には必要の無いモノだから」

「ありがとう」


 ミスフィートさんが武器を拾い集め、死体から鎧も剥ぎ取り出したので手伝った。

 武器はわかるが、鎧も持って行くのか・・・。



「じゃあ行こう」

「楽しみだな」






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 アジトは街の外れにあった。

 まあ、よく考えたらそりゃそうだよな。あんな場所じゃすぐ見つかってしまう。



 ドンドン!


「ミスフィートだ!」


『戦場に咲く花の名前は』


「鹿の角」


『好きな男の名前は?』


「言えるか!そんなもん」


 ガチャリ


 ドアが開いた。


「ず、随分と変わった合言葉ですね・・・」

「ハハッ!素直に花の名前にしたら偶然当たるかもしれんだろう?」

「あー、なるほど。しかし好きな男の名前って」

「アレは適当に言っただけだろう。私の反応で本人かどうかがわかればいいのさ」

「なるほど、考えたな・・・」



 中に入ると武器を構えた女が数人いたが、入って来た人物がミスフィートさんだったのですぐに警戒を解いた。

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