第27話 決断

 はい?・・・1年経ったってマジ??


「本当に1年経ったの?まだ半年程度の感覚だったんだけど」

「経ったぞ。まあダンジョンって確かに時間とか、さっぱりわからなくなるよな」


 なんてこった!これは完全に予想外だ。

 あとちょっとでダンジョン攻略って時に終わりなのか。



「修行の方はどうた?1年もこんな所にいたのだから、それなりの強さになっていてもらわんと困るが」

「来る前に比べれば圧倒的に強くなった、とは思う」


「ふむ。どうだコテツ、小烏丸と一戦やってみねえか?」

「お?いいね!どれほど腕を上げたか見てやろう」

「本当は俺がやろうと思っていたのだが、今回は非常に相手が悪い。顔を見ているだけで全く力が入らんのだ。ある意味最強の男よ」

「わははははははは!」


 え?マジで虎徹さんと試合すんの?さすがにそこまでの自信は無いんだが。



「わ、わかった。しかし虎徹さんが相手か・・・、緊張するなあ」



 全員、大広場に移動した。




「じゃあコテツ、赤結界をかけてやれ」

「そうだな・・・、確かに赤で丁度いいくらいか」


 何の話しなんだ?結界とか言ってた気がするけど。



「小烏丸、今から結界を張るから、武器を一旦下に置いて魔法を受け入れろ」



 言われた通り、地面に刀を置いた。


「・・・んじゃ行くぞ?赤結界!小烏丸にも赤結界!」



 体の周りが魔力に包まれるのを感じる。



「これが結界・・・」

「武器は普段使っている得物を使っていいぞ。結界があるから怪我はしない」


「俺の武器って刀なんだけど、大丈夫なんだろうか?」

「む?刀か。ちょっと見せてみ」


 結界がどんなもんかわからんけど、折れるのだけはマジで勘弁して欲しい。


「ブホッ!なんだこの刀!?クッソつええ!」

「なんだと!?それほどの武器か」


「とりあえず返す。その刀なら大丈夫だ。結界は破壊出来るし、刀が折れることもない」

「良かった」



「んじゃ準備はいいな?カウント行くぞ!3・2・1、始め!」



 固くなるな。普段通り戦えばいい。変に考えず、感じるまま動け!

 相手は遥か格上!勝たなくてもいい、ただ力を見せつけろ。


 素早く接近し、刀を一閃。


「おお!速いな!」


 余裕で躱された。

 ならば避け切れないほど攻撃するだけだ!


 怒涛の連撃を繰り出す。



 袈裟斬り、振り上げ、振り下ろし、振り上げ、高速の突き。


 全て躱された。いやはや流石、この人凄まじく強い。



「そろそろこっちから攻めるぞ」


 来た!動きをしっかり見ろ!そして隙を見逃すな!


 迫る槍の攻撃をなんとか躱す。

 ガシャーン!


「え?」


 気付くと虎徹さんの槍が、俺の首スレスレで止まっていた。


「勝負あり!勝者、コテツ!」



 クソっ・・・、負けた。




 ・・・・・




「コテツ、どうだった?」


「んー、悪くない動きだったぞ。その辺のモヒカンには絶対負けないレベル」

「ほう。なら一応目標達成って事でいいな?」



 いいのか?・・・いや、良くない。



「一つ聞きたいんだけど、ジャバルグってのは俺より強いのだろうか?」


「んー、強いんじゃねえか?戦ったことねーけど」

「一国の大名クラスになると、とんでもなく強ェぞ?ジャバルグを実際に見た事は無いが、今の小烏丸じゃ倒すのは厳しいだろうな」


 クソッ!それじゃあダメなんだよ!俺が使えないんじゃ、結局ミスフィートさんの力だけで勝たなきゃならない。修行した意味が無い!


「ほう?・・・なあ小烏丸、今、お前には2つの選択肢がある。一つはこのまま尾張に帰ってミスフィートの軍に入り、そのまま彼女の部下となる道だ。もう一つは修行の延長。ココでもう1年修行をして更に戦闘力を上げるんだ。その場合、小烏丸はただの部下ではなく、彼女の横に立つことも可能だろうな」


「くっ!しかし、それまでミスフィートさんが生きている保証がない!」


 俺がいくら強くなっても、彼女が生きていなきゃ意味が無いんだ!

 彼女に受けた恩を返せないのだけは、受け入れることが出来ない。


 くそっ!俺は一体どうしたらいいんだ!?



「しゃーねえな・・・。小烏丸の恩人を死なせちゃ夢見が悪い。ニーナ!帰ったらすぐ尾張に密偵を放て。そして尾張の動向を常時俺に報告させろ」

「わかったにゃ!」


「小烏丸、ミスフィートは1年間三河が守ってやる。だからお前は必死に強くなれ」


「本当ですか!?それはありがたい!この恩は必ず返します!」



 清光さんがニヤリと笑った。


 ・・・なんか、完全に口車に乗せられてしまったな。



「ところで俺にも刀を見せてくれないか?」



 清光さんに曼珠沙華を渡す。



「へー、本当に強いな。デラックスから出したのか?」

「いや、そいつは俺が作った」

「なにッ!?」

「ちょっと待てーい!小烏丸が作っただと!?むっちゃ付与魔法がついてたハズだぞ?」

「ああ!言ってなかったけど、付与神レイニーの加護を授かったんだ」


「「付与神の加護だと!?」」



「なるほど・・・、付与魔法が使えるのか。それは俺の武器にかける事も可能か?」



 どうだろう?変な制約とかがなければ、たぶん出来るよな?

 付与で借りが清算出来るならば、これは渡りに船だ!



「マジックバッグのように本人の認証とかが無ければ可能ですね。ただ、付与魔法のレベルがMAXになっていないので、現時点では最大の効果が発揮出来ないけど」


「装備品に所有者登録はしていない。さっき恩は必ず返すと言ったな?付与のレベルが上がりきった後、俺とコテツの武器を強化してもらうってのでどうだ?」


「それで借りを返せるのならば是非そうしたいのですが、付与魔法は非常に時間がかかるんだ。最大級となると、一つの武器を完成させるのに予想では1ヶ月以上。それが2本ともなると修行の方が・・・」


「ふむ。ならば武器の強化は、ミスフィートが尾張を統一してからでいい。それなら問題無かろう?」


「その条件ならば大丈夫!ジャバルグを撃破した後、必ず二人の武器の強化をすることを約束します!」


「契約は成立だ。ミスフィートの保護は任せておけ」



 よしッ!!これで何の気兼ねもなく強くなることが出来るぞ!

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