第12話 皆同じ様なことを考える模様
食料になりそうな狼と出会ったのは良かったが、ちょっとデカすぎるだろ!
たぶん2メートルはあるぞこれ。こんなデカいと正直怖ェよ!
モツゴロウさんほどになれば、巨大狼すら手懐けることも可能だろうけど俺には無理だ。まあ懐かれても困るんだけどさ。
まあいい、やるぞ!俺には食料が必要なんだ。
剣を構えてじりじりと接近する。
「ガルルルルルル・・・」
くそお、あの唸り声とか怖ェなあ・・・。
瞬間、牙を剥き出しながら狼が凄い速さで走ってきた。
「クッ!」
なんとか躱したが、すれ違いざまに爪で少し引っかかれた。
作業服に血が滲んでいる。
この狼、強いッ!
「だが俺はこんな所でやられるワケにゃ行かねえんだよ!」
迫ってくる狼の動きを見切ってカウンターを当てる。
「ギャウン!」
そして狼が怯んだ隙を逃さず剣を突き刺した。
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ」
なんとか倒せた・・・。
スケルトンでギリギリまでレベルを上げておいて本当に良かった。
自分の動きがココに来る前と明らかに違う。レベルの恩恵は途轍もなく大きいな。
「よおおおしッ!食料ゲットだーーー!」
自然とガッツポーズが出てしまった。際どい戦いだったから喜びも大きい。
リュックを降ろして開いてみたが、こんなデカいのが本当に入るのだろうか?
失敗を覚悟で倒した狼の死体をリュックの上に置くと、スッポリと中に入った。
「マジか!?狼の方がリュックの開け口よりデカかったハズだぞ」
マジックバッグってヤバくないか?物理法則を完全に無視している。
まあこれが異世界なのだろうと無理やり納得し、今日は引き返すことにした。
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「さて、解体の時間だ」
森で何度もやっていたから、もう血の匂いで吐くこともなくなった。
ただあの時は一本の剣しか持ってなかったので、毎回すごく苦労していた。
しかし今回は剣以外にナイフもあるから、剥ぎ取りも丁寧にやれると思う。
じゃあとっとと始めっか。
・・・・・
毛皮の剥ぎ取りはかなり上手く出来たと思う。
解体してると心臓の辺りから緑の魔石が出て来たんだが、どうやら魔石ってのは一色じゃないらしい。何か意味があるのかな?
肉は無駄なく食うつもりだけど、内臓はどうすっかな~。
たぶんあの場所に行けば何度でも狼がリポップすると思うんで、無理に内臓まで食う必要は無い気がする。
「そういや虎徹さんが女神の泉の説明をしてくれた時に、肉や毛皮をぶち込めば浄化も出来る優れモノとか言ってたよな」
いっちょ言われた通りにやってみっか?
肉と毛皮を全て女神の泉に放り込む。ホルモンもイケると判断し、腸を裂いて洗いながらレバーと一緒に泉に沈めといた。
「残りのゴタゴタは捨てよう」
でもどこへ捨てたらいいんだ?
ここはダンジョンだから、この部屋の外に捨てれば勝手に消えるかな?
骨の所に行く通路は毎日使うので、巨大ゴブリンがいる方にゴタゴタを全部ぶん投げた。
「グギャアアアアア!!」
うっわ、むっちゃ怒ってる。
知らんわ!むしろ食料タダで貰えてラッキーだろ。
巨大ゴブは無視して部屋に戻った。
肉を焼こうと考えている時にふと気付いた。
なぜか全然腹が減っていない。
肉を食いたいという欲求はあるので肉は食うつもりだけれど、いくらなんでも昨日から何も食べて無いのに腹が減ってないのはおかしい。
もしかするとだけど、聖水を飲んでるだけで、何も食わなくても生きていける可能性があるな。
ダンジョンって本当に不思議だなあ・・・。
炭を少し拝借し、魔道具を使って火を付け、剣に肉を刺して焼いてみる。
超ワイルドだろう?
森では、一本しか持ってない大事な剣に刺して焼くなんて真似はしなかったけど、今は腐るほど剣を手に入れたからな。こういう使い方をしたって文句あるまい。
肉を食ってみると、その美味さに衝撃を受ける。
「うんめええええええ!なんじゃこりゃあ!?」
森で食ってた狼の肉とはまるで格が違う。
味付けもしてないのに、なんつー美味さなんだろう・・・。
魔物のレベルが高いと、それだけで肉も良質になるのかもな。
食糧問題も解決したことだし、明日からは多少余裕が出そうだ。
とはいえ強くなるのが目標だから、だらけずに毎日戦いまくるぞ。
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目が覚めて顔を洗おうとしたら、昨日泉に色々沈めたのを思い出し、毛皮を床に移動してそっちで乾かすことにした。
普通なら皮を鞣すのに樹皮や脳味噌なんかを使ったりするのだが、触った感じ、泉に浸けとくだけで柔らかくなったような気がする。
脂肪は出来るだけ排除したから、腐ることはないと思う。水でびしょ濡れだから何とも言えんのだけど、虎徹さんの言う通り、浄化された雰囲気が出ているし。
乾いた時にどうなってるか楽しみだな。
体調も絶好調だし、早速レベル上げに行くぞ!
・・・・・
今日は分かれ道を右に行かずに真っすぐ進んでみようと思う。
右の通路には狼がいたが、こっちにもきっと手強い魔物がいるに違いない。
そう思いながら進んで行くと、そこにいたのは魔物じゃなく木だった。
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