第11話 刀を作ろうと思ったが
「知らない天井だ」
スマン、一度言ってみたかったんだよ。
毛皮布団から出る。
「すげえ。今までの疲労が完全に抜けている」
久しぶりに安全な場所で寝たからだろうか?いや、聖水のお陰かもしれん。
とにかくベストコンディションと言えよう。
あの二人には本当に感謝だ。この部屋にしても、何もない所から地道に育てて行ったのだろう。
この毛皮一枚作るのだって簡単な仕事じゃないぞ?それが何枚もあるんだ。今までこんな気持ちを味わったことなんかほとんど無かったけど、本当に心から尊敬する。俺も成長して少しでも彼らに近づきたい。
女神の泉で顔を洗おうとしたけど、自分の汚れっぷりが気になったので体を洗うことにした。
・・・石鹸やシャンプー・リンスが横に置いてあるんだが、勝手に使っていいのだろうか?
ベッドとソファーには触らないよう注意されたけど、他は何も言われていない。
うーむ、少しくらいならいいよな?臭い体で毛皮を汚されるよりマシだと思うし、ココは使わせてもらおう。
・・・・・
久しぶりの入浴は最高だった。冷たい水なので少し躊躇したが、ここは気温が安定していて丁度いい感じなので、水の冷たさが逆に気持ちいいくらいだ。
鏡が置いてあり、傍には無造作にナイフが転がっていたので、それを勝手に借りて少し伸びた無精ヒゲも剃った。
この鏡とか、一体どうやって手に入れたのだろうか?石鹸にしてもシャンプーにしても、この部屋には文明の匂いがするアイテムが所々に存在する。
神様と知り合いだったり、バイクに乗っていたり、あの二人は不可思議なことが多い。
ここで暮らしてりゃ少しは秘密の一端でも掴めるだろうか?
刀を打つ為、鍛冶道具が置いてあるプチ工房に移動した。
そこにはハンマーやら彫刻刀やら色んな工具が置いてある。
・・・・・・うん。全然道具が足りてなくね?
まず挟みが一つも無い。金床も無い。
これでどうやって鍛冶をしてたんだ?
工具が大量に存在するので、色々物を作ってたのは間違いない。
たぶんだけど、大部分を魔法で補ってたのではなかろうか?
ただ炭は横に積んであったので、挟みと
しかし挟みを作るには鉄を熱しないと不可能。
いやはや、前途多難だなあ。
鍛冶道具から作る必要が出たので長期戦になると判断し、とりあえずは普通の剣で食料を探しに行くことに決めた。
「まずは聖水を使わずスケルトンを倒せなきゃ話にならん」
聖水を使ってのレベル上げだとスキルの成長が見込めないしな。
少し緊張しながら骨のいる所に移動。
一気にレベルが上がったので、今の俺なら普通に倒せるハズだ。
意を決して骨に向かって歩いて行く。
ゴシャッ!
恐怖で怖気づく心をなんとか抑え込み、スケルトンを一撃で粉砕した。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ」
・・・なんだよ、楽勝じゃねえか。
剣を拾い上げるためにしゃがむと、壊れた骨の中に紫色の石を発見した。
ああッ!これが魔石なんじゃないか?今まで聖水をぶっかけて倒してたから、魔石ごと消滅してたのだろう。これからは魔石もしっかり回収しないとな。
魔石を背中のリュックに入れて先へ進むことにした。
「うおっ!今度は3体かよ」
だが骨の動きはさっきしっかりと見切る事が出来た。3体同時に相手してもなんとかなるハズ!
そのまま突撃し、3体の骨を撃破することが出来た。
【レベルが上がりました】
「いけるぞ!」
3本の剣と魔石を回収し、ニンマリとほくそ笑む。
ただ、このリュックはマジックバッグと聞いているが、本当にこの剣が入るのだろうか?
リュックを背中から下に降ろして剣を入れてみた。
「おお!マジで入った!」
明らかにリュックより剣の方が長かったのに、3本ともスッポリと入れることが出来た。
そしてまた背負ってみたが全然重くなっていない。
「こりゃスゲエわ!虎徹さんに感謝だ!」
間違いなく家宝になるレベルの品物を、同郷のよしみってだけで簡単に譲ってくれた虎徹さんの器の大きさに感動を覚える。
こんな凄い物を貰ってしまって、俺は本当に借りを返すことなんて出来るのだろうか?
・・・まあ考えてもしゃーねえか。
先へ進むことにした。
「次は5体かよ・・・」
今度こそ別の魔物が来ると思ってたのになあ。
でも剣と魔石が大量に手に入ると思えばこれも悪くないか。
数が多くて多少苦労したが、怪我する事無く撃破することが出来た。
「ふぃ~、5体は流石に緊張するわ」
大量の剣と魔石をリュックに詰め込む。これは美味しい!
火の魔道具の電池にしか使い道が無いから、こんなに必要無いんだけどさ。
でも虎徹さんが魔石集めが最重要とか言ってたからなー。なんでこれが重要なのかは知らんけど。
まあ持ってて困るもんでもないし、とりあえずは魔石も集めとこう。
先へ進むと分かれ道になっていた。
さて困ったぞ?こういう時は基本、左を選べって何かで聞いたことがある。
だが俺はちょっと天邪鬼なのだ。よし、右へ行こう!
そろそろ違う魔物を期待して慎重に進むと、期待通り、新しい魔物と出会った。
「うおッ!デケーなおい!」
目の前に現れたのは灰色の狼だった。
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