第8話

 帝都に来て1ヶ月が過ぎた。

 

 私は城から出て、帝都内のホテルに泊まっている。別に本当の親子でもないし、変に城に泊まっているとその内勝手に王女にされそうな気がしたからだ。




 この1ヶ月で2つのダンジョンを踏破した。


 2つ目のダンジョンを踏破した時にロイから連絡が入って要塞城へと向かう。


 ロイって陛下の事ね。

 そして、久し振りの謁見の間────


「ユウナ・イミューズ、貴殿をユー帝国の名に於いてSSランク冒険者とする。また、そのパーティーメンバーの猫獣人カグヤには帝国国民権を与える。

 SSランクはこの帝国初、いやこの世界初のランクである。

 この世界の冒険者全ての見本となるように日々精進してもらいたい。

 尚、褒美の説明もしたい。この後、2人には我の部屋まで来てもらう。

 それと宰相、ユリアナ・イミューズ卿にも我の部屋まで来るように伝えてもらいたい。以上だ!」


 


 1時間後、ロイと私、カグヤとユリアナさん、そして宰相のホランドさんはロイの部屋のソファに座っていた。


「ユウナはもう少し自嘲しろ! 白虎のダンジョンを1週間でソロ攻略したかと思えば、その2週間後にサンマルドのダンジョンの攻略とか……。

 それとカグヤと言うパーティーメンバー、白虎だろう?」

 

 あらら、バレて~ら!


 いや、だってね、最階層に着いてボス部屋の扉を開けてみたら、ホワイトタイガーがお腹を見せて寝っ転がってるだもん。

 全面降伏で私の従者になるって言ってきて、言うこと聞かないんだもん!

 2メートル程の大虎の姿だったから、小さくなるか人の姿に成れる? って聞いたら今の姿になった。


 カグヤは褐色の肌に白髪のログヘアーで頭に三角お耳が付いていて、白い虎柄のモフモフなビキニの様な服装で足にもモフモフの白い虎柄のショートブーツを履いている。

 勿論尻尾も生えていて、それは普段腰に巻き付けている。

 今は私としか念話が出来ないけど、只今言葉を喋る為の勉強しているところだ。


「沈黙は肯定だと取るぞ。この規格外め!」


 はい、そこは敢えて沈黙しておきます。


「それで私を呼んだのは何かしら?」

「あぁ、お前らは欲しがらんだろが国として国民と貴族への建前というか見栄があるのはわかるな?

 そこでユウナには今帝国の直轄領になっている西の地を領地として分け与える。

 そこにユウナとユリアナにも行ってもらいたいのだ。宰相、説明を頼む」

「はい、ユリアナ様はご存じでしょうが、元々は1つの国家で大小5つの街と8つの村がございます。

 魔境の森と隣接しておりますので、警備隊はそのまま帝国直轄に致します。

 今は代官を据えておりますが、新領主にユウナ様を据え、ユリアナ様もご同行願えましたら、正式にイミューズ領として開拓、発展させてもらいたいと思います。

 また、準備金として1億アルンをご用意させて頂きます」

「心配するな! 代官は置いておく。名ばかりの領主でも構わない。

 それと準備金だが、ダンジョンで得た物を何か献上しろ。その献上品に対して準備金を増やせる。

 任せるにしろ、自分でやるにしろ金は必要だろう」


 何だろう? ユリアナさんがソワソワしている。

 あっ、これダメなやつだ! 絶対何か妄想している顔になってる。


「ユウナ、行きましょう。ファミレス教の豪華な教会を建てるのよ。

 私の個人資産も全部出すわ。ダンジョンで拾った物を全部献上してたんまりお金を貰いましょう」


 たんまりって……。でもダンジョンではあんまり寄り道せずに下を目指したから宝箱って殆どなかったんだよね。


「ドラゴンでも良い?」

「……でもじゃないぞ。ドラゴンを献上してきた貴族などおらんわ! 地龍か? まさかファフニールクラス何て言わないよな?」


 ファフニール? あぁ、火炎龍の名前だったっけ。


「火炎龍は持ってないよ。何の龍かは知らないし、頭と胴体と離れてるけど良い?」

「構わん。此処じゃ出せんな、兵士の訓練所で出してくれるか? ストレージボックスに入れてあるんだろ」


 私達はロイの部屋を出て訓練所へと足を運んだ。当然訓練所では兵士達が訓練をしていた。


「これは陛下! 訓練止めい! 整列!」

 

 白い鎧を着た人が私達に気付いて兵士を呼び寄せる。


「将軍、すまんな。少し訓練所の一部を使わせてもらいたい。ユウナ、あの辺で出せるか?」


 ロイが指差したのは訓練所の片隅だった。私はドラゴンの大きさを思い出して、首を傾げる。


「ギリギリ……、いや無理だと思う」

「はぁ、そんなにでかいのか?」

「高さは3メートル無かったけど尻尾が結構長かったし、羽を拡げたら5メートルはあったと思う。

 頭だけなら彼処でも充分だけど、どうする?」


 私がそう答えるとロイと白い鎧を着た人が呆然としていた。


「……ユウナ、その龍の色は何色だ?」

「黒だけど」

「古代黒龍じゃねぇか! 取り敢えず頭だけで良い。確認したい」


 頭だけならダブルベッドぐらいの大きさだから出せるね。私はストレージボックスからの頭を取り出して地面に置いた。


「ま、待て!! 早くひっくり返せ! 早く!!!

 錬金省の奴らを呼んでこい! 血の採取をさせる」

「はっ! 第2部隊、錬金省へ連絡。お前達はそのまま錬金省の荷物運びを手伝え」


 怒涛の流れに私は固まってしまった。


『何をあんなに慌ててるのかわかる?』


 私はカグヤに念話で話し掛けた。


『僕の記憶だと古代龍の血はエリクサーや若返りの薬の素材になった筈にゃ。しかも古代黒龍だったら、その効果が上がるかもしれにゃいな』

『そ、そうなんだ……』


 数分後、人が集まり始めて凄い騒ぎになった。


「胴体も持ってるんだよな。ユウナ、それは暫くお前が持ってろ! あの頭だけで充分だ。

 宰相、どれぐらいになると思う? 嘘偽り無しに申してみよ」

「はい、髭、牙、眼球、鱗に舌。更には脳に頬肉、今採取している血、全てを売れば50億、場合よっては100億アルンを越えるかと……。

 年末のオークションに掛ければ更に跳ね上がると思われます。これに胴体が加われば、数百兆アルンになるでしょう。

 これは我が国でも買い取れる額ではございません」


 金額を聞いて、今度は私が呆然となった。

 だってね、私の【鑑定】は物だと名前とその効果しか見れないのよね。


 例えば、ポーションを【鑑定】すると、

 

 品名 4級ポーション

 効果 HPと体力を少し回復出来る


 こんな感じ。あの頭を【鑑定】しても、


 品名 死んだダンジョンボスの頭


 としか出てこない。売却価格何か出てこない。


「取り敢えず頭だけ献上って事にしてくれ!

 全てを献上となると帝国としてユウナに借りが出来てしまう。それは宜しくない。

 準備金は20億とする。今年の予算ではこれが精一杯だ」


 何だか話しが勝手にどんどん進んでいく。私は領主になると言うことを1度も肯定していないのに……。


 しかし、今の空気でそれを言う程馬鹿ではない。特に目的がある訳でもないし、領主というのも面白いかもしれない。


 内政チートってやつですね。





 帝都から馬車で1週間、野宿はなく全て街や村で宿泊して西の地に辿り着いた。

 私は忘れていた。宰相さんが説明していた事を……。


 此処は1つの国だった事を……。


 舗装された道に白い壁の家が建ち並ぶ。街の真ん中を完璧に整備された河川敷がある。

 帝都やフォレスタ王国もそうだったが、上下水道が完備されていてインフラは地球と対して変わらない。


 私達が来た事により、西の地と呼ばれていたこの場所は正式にイミューズ領と名前を替えた。

 代官のサイモンさんとも話し合って、街や村の名前はそのままにしておく。


 元々の国の名前はサンディアル王国、そして私達がいるのは元の王都サンデル。

 そして、代官のサイモンさんはサンディアル王国の皇太子だったらしい。

 この王都が戦争で被害を受けないように、先代の王が無血開城したと言うことだ。

 

 因みにその先代の王様は、今は帝都で財務省のトップにいるらしい。そして、息子であるサイモンさんはこの地で代官をやっている。


 完全に私達は悪者になっている。

 

 




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る