第7話

「幾つなんですか?」

「500を過ぎてから数えるのは止めたわ。多分600はいってないと思いますわ」


 ───なるほどね、そういう事か。


 エロ駄女神の関係者だね。

 しかし、信用して良いのだろうか?


 結局私は、ダメージを受けない身体に高を括って馬車に乗り込んだ。





 馬車に乗ったのは間違いだった。どんどんHPを削られていく! もうすぐ私のライフゲージはゼロだ!


「……変態ですか?」

「仮にもママに向かって変態は無いんじゃないかしら? 馬車の中は部屋と同じよ? 部屋と言えば全裸でしょ!」

「それ、エロ駄女神の法則だよね? 変態って思われたくなかったら服着てよ! 足を広げない! 私の母親なら貴女は公爵婦人でしょ? ……だから見えてるって! 足閉じて!

 ファミレスを敬うのは構わないよ、この世界の創造神みたいだから。

 しかし、それを見習うのは止めて!

 だからぁ、抱きつかないでぇ! やめっ! 何処に手を突っ込んでるのよ! 服を脱がそうとしないで!」


 突っ込みどころ満載のまま、馬車で2時間ほど掛かるイミューズ公爵邸へと向かっていた。



「もう、いつまで経っても子供なんだから。

 自分で服も着れないの?」

「……誰が脱がしたと思ってるのよ? 貴女よ、あ・な・た!」


 私はくたくたになった身体でのそのそと服を着始めた。テクニックまでエロ駄女神譲りだった。



 


 馬車が貴族街に入ってから10分が過ぎようとしていた。あくまで体感時間だけど……。

 

「着いたわよ」

「着いたわよって……、ここは?」

「帝国が誇る要塞城、私はここの別棟に住んでるわ」




 馬車は貴族街を抜けて城まで来ていたのか。でも、別棟? 


 馬車から降りると赤い絨毯が城の入り口まで敷かれていて、その両側に兵士達がズラリと並んでいた。

 そして、その城の入り口には紫色の服を身に纏ったこれも私と同じぐらいの年齢の男性が立っていた。 


「そなたがユウナか?」


 見るからに武闘系の容姿。声も低くて聞きづらい。


「……はい」

「そうか、元気そうでなりよりだ。我が娘ユウナよ」


 此処にもいたよ! 初めましてだよね?


「ユリアナも久しいな。20年振りぐらいか?」

「それぐらいですね、陛下」


 やっぱり陛下なのか……。何となく、そんな気がしてた。


「取り敢えず、親子3人でお茶でもするか?

 応接室に3人分のお茶を用意しろ! 後、軽い食事も用意してくれ」


 陛下の言葉に1人の兵士が頭を下げて城の中へと入って行った。

 そして陛下が先頭で、私、ユリアナさんと続いて城の中へと入っていく。更にその後ろに兵士が5人程着いてきていた。


 廊下の途中右側に1人の黒服が立っている。私達を見つけると、背にしていた扉を開けて頭を下げた。

 

 どうやら此処が応接室らしい。陛下の視線の動きで私達の座る位置が決められて、其々がソファに座るとすぐにメイド達が3人やって来た。


「お飲み物は何になさいますか? 紅茶、コーヒー、ワインとございますが」

「コーヒーでお願いします」

「畏まりました」


 3人が個別に付き添っている。私の担当をしているメイドさんは多分中学生ぐらいじゃないだろうか?

 兎に角、幼い感じがする。


 其々に飲み物が行き渡ると、テーブル上にロールケーキとサンドイッチが用意された。


「後は俺達でする。お前達は部屋から下がれ!」


 3人は同時に頭を下げると速やかに部屋から出ていった。


「さて、ぶっちゃげるか! 女神ファミレスの無茶振りも大概にして貰いたいものだな。ユリアナ説明を頼む」


 陛下がいきなり姿勢崩した。


「女神ファミレスの無茶振りは今に始まった事ではありませんか。

 彼はユー帝国の皇帝ロイ・ホーネッツ・ユーダリア。

 私は帝国公爵ユリアナ・イミューズです。

 20年前に陛下の当て女に私が宛がわれ、その時に私が貴女を妊娠した事になっています。

 そして、貴女は11歳の時に誘拐されましたが自力で脱出、冒険者として過ごしてきた。

 その間、私は貴女を探すことなく自由にさせていたが、今日、貴女は此処に帰ってきた。よろしいですか?

 因みに、彼も私も異世界人の称号を持っています。そして、それはこの国では広く認知されています」


 えっ? じゃあ、この2人は結婚してないんだ。


「当て女って何?」


 私はわからない単語があったので聞いてみた。


「あぁ、貴族に良くある話しで成人前の男に経験のある女を宛がう事だ。

 要は筆下ろしだな。貴族は子供を作って何程だからな。最初に失敗してEDにならないようにするってのが建前だ。

 一応ユウナの事は認知してる事になっている。故にお前は帝国の第3位王位継承権を持ってるぞ。因みに俺は結婚してないから子供がいない。だから王位継承権第2位はユリアナだ」


 第3位王位継承権? あっ、彼が死なないなら代が移ることないから別に良いのか。

 でも、もしもがあるかも知れないからヤだなぁ。


「言っときますけど、本当に宛がわれた訳じゃないですからね! そういう事にしておくと言うことですよ。私は女神ファミレス様をお慕いしていますから」


 って言いつつ、さっき私にしたのは何だったの? って声を大にして言いたい! 彼の前だから言わないけど……。


 そして、そのエロ駄女神は……。


「ユウナが羨ましく思いますわ! 私なんかもう100年程相手されていません。

 久し振りに逢えたと思ったら、この無茶振りでしたし……。

 でも、この放置プレイもファミレス様の愛情と想えば耐えられますわ!」


 あぁ、この人ダメだわ。私はこんなはならないように気を付けよう。


「はぁぁ、俺が付け入る隙は無さそうだよな……。

 ユウナも良く考えて恋愛しろよ! 俺達異世界人はあの変態女神によってアンチエイジングが掛かっている。

 この世界の人間と付き合ったり、結婚したらどうなるか。相手はどんどん年老いて行くのに自分は今のままだ。

 そして、間違いなく相手は先に死ぬ。強いては子供を作ったとしても先に死なれる。俺達はほぼ死なないからな」

「えっ!? ユリアナさん達って不老不死じゃないの?」

「違うわよ。私は不老長寿のユニークスキル持ちでステータスが異様に高くなってるの。

 私はこの世界の魔王を討伐する為に呼ばれたから」


 似て異なる物だよね、不老不死と不老長寿って。


「あれっ? でも魔王を討伐したのはガイアナじゃなかったっけ?」

「物語ではね。女性より男性の方が英雄って感じがするでしょ? だから物語では、ガイアナ・イミューズって男性になってるの。

 因みにその物語を書いたのは私よ。本当は私1人で倒したんだけど、それじゃ面白くないから恋愛観も入れて男女2人のパーティーにしたのよ」


 物語は物語って事よね。図書館で読んだけど確かにラノベぽッかたもんね。







 

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