第4話
「んふふ……、来ちゃったぁ」
ホテルのシャワールームから出てくるとエロ駄女神がベッドに座っていた。
この世界に来て約1ヶ月、5回目だった。前回、エロ駄女神が来た時に初めて私のステータスの称号のところに【女神の寵愛】がある事に気付いて赤面したのは内緒の話しだ。
通常見せることのないステータスボードだが絶対に誰にも見せないと誓った。
因みにエロ駄女神が私の前に現れている時は周りの時間は止まっている。エロ駄女神が私との行為の為に私しか入れない平行時列の同じ世界を造ったらしい。
その世界に移動している間はこの世界の時間は止まっている。
従ってどれだけ大きな声で助けを呼んでも誰も来ない。しかも間違ってエロ駄女神の機嫌を損ねると、この世界に戻してもらえない可能性もある。
異空間監禁だけは勘弁願いたい。
エロ駄女神曰く、そんな事する訳ないでしょ~。とは言っているが100%信用出来るかと言えばNOだろう。
ハッキリ言ってエロ駄女神はドエスだった。
ヤバい具合に調教されてる様な気もするが、心の平穏の為に考えないようにしている。
毎回エロ駄女神が帰って行ったのを知らない。私が意識を失ってから帰っているみたいだ。
私は朝、目が覚めるとちゃんとホテルのベッドの上で寝ている。
エロ駄女神相手でも、相手がいるなら温もりを感じて寝たいと言う願望が最近芽生えて来ている。
でも、正直に言うのは恥ずかしい。
「別にあたしだけじゃなくても良いよぉ~。この世界の男相手でも女相手にでも恋愛してくれたって構わない。
ユウナが天界に来るまでは自由にしてくれても良いよぉ。ぶっちゃけ、この世界にユウナの子孫を残してくれた方が面白いし……」
今回エロ駄女神に言われた言葉だった。
「恋愛かぁ……」
前世で真面な恋愛はしていない。16歳の時に両親が事故死んでから1人で生きて来た。
親戚もいなかったから親の残した家と保険金だけで高校を卒業して就職していた。
両親が死んで間もない頃に生活が乱れ始めて遊びまくって、別に好きでもない男友達に処女を捧げた。
就職と言っても正社員のキャバ嬢だったしね。
考えてもどうなる訳でもないので、気分転換に冒険者ギルドへと出向いた。
今までも何回も来ているので何ら問題もなく依頼を受けて、南門から外へ出て第6ダンジョンへと向かった。
第6ダンジョンは王都付近で1番難易度の高いダンジョンで、未だ完全攻略はされていない。
しかし、ダンジョンボスはウロボロスと言う、ずんぐりむっくりの蛇の様な魔物だと判明している。
ダンジョンボスに挑んで撤退したパーティーがいるからわかっている。それがどうやらアイス王女とマルコフのパーティーらしい。
そして、私はそのダンジョンボスの部屋の前に立っていた。此処まで私1人で攻略してきたからだ。
どんな攻撃を喰らってもダメージは受けない私にとってダンジョン攻略は簡単な事だった。
オマケに最近覚えた魔法で攻撃の種類はとことん増えている。
別に疲れなど無かったが、ダンジョンボスに挑む前に軽く何か食べようかと思い、ストレージボックスから乾パンとオーク肉の焼き串を取り出して頬張っていた。
「おいおい、1週間振りだな」
そこに現れたのはマルコフだ。マルコフも1人だった。1週間前にアイス王女達と一緒に依頼を受けていた。それ以来だった。
「久しぶりだね。あれっ、王女様は?」
「ん、今日は俺1人だ。前回のリベンジと思ってな。しかし、やたら魔物に遇わねぇと思っていたが先行者がいるとは思わなかったぜ。しかも、姫さんと来たもんだ!」
「だから姫さんは止めてって言ってるでしょ。もう! あっ、マルコフも食べる?」
私はそう言ってストレージボックスからオーク肉の焼き串を取り出した。
「お、貰う貰う」
マルコフは私から焼き串を受け取ると隣に腰を降ろして食べ始めた。
「姫さんよぉ、ソロでウロボロス狩るつもりか?」
「そのつもりだったけど、……臨パ組む? 前衛2人の無鉄砲コンビになるけどね」
「お、良いじゃん! パーティー名無鉄砲。でもよぉ、単独討伐の名誉は要らねぇのか? 姫さんだったら余裕だろ?」
「私は別にそんなの要らないから構わないよ。ただの気分転換だから。……そっちこそどうなの?」
マルコフは少し考えて、焼き串を食べ終えると立ち上がった。
「多分、俺1人だとギリギリか途中撤退だと思う。前回はアイスを守りながらだったから即撤退にしたんだけどな。組んで貰えるとありがたい」
「じゃ、決まりだね。行こうか!」
「おうよ」
2人で拳をぶつけ合って部屋の扉を開けた。
マルコフが1歩先に部屋に足を踏み入れた瞬間に、マルコフの姿が消えて側面の壁に埋まっていた。
ウロボロスがいきなり横からマルコフに体当たりしてきたのだ。これにはマルコフも私も反応出来なかった。
見たところマルコフの左腕が変な方向に曲がっている。ウロボロスは更に追い討ちを掛ける様にマルコフに迫っていた。
「くそっっ!!」
私は縮地でウロボロスに詰め寄り、おもいっきり蹴りを入れて蹴り飛ばすと、マルコフを壁の中から助け出す。
どれだけ激しいタックルだったんだろう。マルコフが着ていたジーンズジャンパーは切れ端すら残っていなかった。
「姫……さん、悪い。──姫さん、ヤバい! 逃げろ!」
気付いてるよ。ただマルコフを抱いて避けるには間に合わないタイミングなんだよね。
────バァァン!!!
と激しい音が私の真後ろで聞こえる。私の背中にウロボロスが放った風属性の魔法が当たった音だった。
「姫さん、何で……。───何だよ、あれ……」
私は無詠唱でファイヤーランスを30本程後ろに発現させていた。
「終わりだよ」
後ろを見ることなく、それらをウロボロスに向けて発射させる。
「今、ポーション出すから」
私がストレージボックスを操作して出したのは2級ポーション。普通に使うポーションはせいぜい5級から4級ポーション。
2級ポーションはお腹に大きな穴が空いていも治せる希少なポーションだ。
私は蓋を開けてマルコフに飲ませようとしたが、彼はそれを拒んだ。
「んな高いポーション飲ませようとすんな! それより姫さんが飲め! 背中の傷ヤバいだろうが!
頼むから姫さんが飲んでくれ。俺のせいで姫さんに怪我の痕を残させたくない」
そんな事言われても……。私の身体にはダメージは通っていないんだよ。傷も付いていないと思うよ。
確かに着ていた服はボロボロになったけどね。
今の私の上半身は殆ど裸になっている。ウロボロスの魔法が私の服を切り裂いていた。
胸が見えているのは知っていたが、別に見られて減るもんでもないし、気にも止めてはいなかった。
「わかったわよ。後でマルコフにも飲んでもらうかね」
私はそう言ってポーションを口に含んだ。
マルコフはそれを見て私から目を反らす。多分私の裸体を見ないようにしているのだろう。
変にマルコフは紳士的なんだから……。
私は横を向いたマルコフの頬を両手で挟むと正面を向けさせて口移しでマルコフにポーションを飲ませた。
口に含んだポーションを完全に送り込む為に舌も使う。それは間違いなくディープなキスになってしまう。
マルコフは目を大きく見開いてポーションを飲み込んでいた。
「ひ、姫さん。……勘弁して……くれよ。我慢出来なるだろ……。
──姫さんも飲んだんだよな、背中見せてみろ!」
マルコフは私の両肩を掴んで無理矢理後ろを向けた。
「良かったぁぁ」
そう言いながらマルコフは抱き付いてきた。肌と肌が重なりあっている背中が温かい。物凄く心が安らいでいる。
あぁ、これはダメだ! 私はマルコフの事を……。
「なぁ、姫さん。もう1回……、いや、何でもねぇ」
マルコフのヘタレ!
仕方ないなぁ。これは私からの慈悲だぞ。
「まだ何か背中が痛い気がするの。マルコフ、飲ませてくれる?」
私はストレージボックスから4級ポーションを取り出してマルコフの右手に握らせた。
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