第3話
「冗談はこれぐらいして~、何か聞きに来たんでしょ~?」
冗談だったんだ……。……ホントに?
「ホントだよ~。あたしは結構偉い女神なんだよぉ」
「……心の声を拾わないでくれるかな! 自分で偉いって言うのがヤバそう」
「そう言うのは本人の前で言わないのもんだよ~」
「心で思っても聞かれるなら一緒でしょ!」
「あっ、そ~だねぇ~」
諦めた! 考えるだけ無駄だわ。
ねえ、何で私はこの世界に来たの?
「声だそ~よ。他人が見たら、あたし1人で喋ってるみたいじゃん」
「他に誰もいないでしょ」
「そ~ゆ~問題じゃないよ?」
何故疑問系? てか、足を広げるな! マジで丸見えだから……。変な気分になるでしょ!
「ウェルカムだよ~。いつもの日課でユウナを覗いてたら、あんな事になってたからね~。
因みに、あたしが夜行性になったのも裸族になったのもユウナの夜の生活を覗く為だよ! 寝てる間に悪戯も出来るし」
「悪戯って何? ってか、私を覗いてたって何なの?」
「ん~、ユウナの事が好きだからだよ~。特に終わった時のあの顔……」
ちょっと待って、ちょっと待って! もしかしてあれを見られてたの?
「そ~だよ~。毎日見たいから、ユウナが寝てから毎回欲求不満になる魔法掛けに行ってたもん」
「嘘……でしょ……」
あれはこのエロ駄女神作られた性癖だったの?
「誰がエロ駄女神よぉ~! そのエロ駄女神にユウナは助けられて此処で生きてるんだからね。
言っとくけどぉ、そっちの世界の運命列には関与出来ないからね。ユウナが彼処で死んだのはあたしのせいじゃないから。
事後報告でそっちの神にユウナを貰った事説明しに行ったら思ったより時間が掛かって、転移の説明が出来なかったんだよ~」
あ、今私が此処で生きてるのは───
「そんなに思い詰めなくても良いよぉ~。あたしがユウナを手元に置いときたかっただけだから」
この後、私はこの女神に色々とこの世界での私の立ち位置や疑問を聞いた。
取り敢えず、私は王女様が推理した通り、別の大陸の超大国ユー帝国のイミューズ公爵令嬢らしい。
しかし、ユウナ・イミューズは11歳の時に誘拐されて行方不明になっている。
それが今からほぼ10年前、私は自力で誘拐犯から逃げ出して、自分の意思で家には帰らず10歳の誕生日に作っていた冒険者カードで冒険者として生きて来たという風になっているらしい。
帝国のダンジョンはマルコフが言った通りだが、貴族に関してはダンジョン内で取れたアイテムを全て自分の物に出来るらしく、私は帝国内でSランクに自力で上がっている設定である。
当然、私が冒険者をしているという事はイミューズ公爵家に伝わっているが、放置されている。
そして今に至ると言う事だ。彼処で倒れていたのはエロ駄女神の気紛れらしい。
更に、このエロ駄女神にこっちの世界で生きて行けるように身体を作り替えられている。
こっちの世界には大気の成分にマナという魔力の素が在る為に異世界人は早死にするらしい。なのでそれに対応出来る身体にしてくれているらしいが、そこがエロ駄女神といった処か……。
私が死に際に言った願いを叶えようとエロ駄女神と同じ身体にしたと言う。
その結果が【全属性ダメージ無効】と【物理ダメージ無効】、そしてもれなく付いてくる不老不死という神のみが持つ性質も付いてきている。
その他にも超吸収と言って口にした食べ物は余すことなく栄養に変える事が出来るらしく、排泄物がないという便利な体質。
因みにそれらがステータスに表示されないのはそういうスキルが存在しないせいだ。
後はエロ駄女神の趣味で、私の身体は頭髪と眉毛、睫毛以外は無毛。スリーサイズもエロ駄女神の好みに造られていて、排卵は任意で行えるらしい。
私としては助けられた命に恩を感じるが、不老不死というのが……。エロ駄女神が言うには、いずれ私に天界に来てもらうと言っている。
この世界に来て、まだ2日目。私もこの世界を楽しみたいという願望もある。今はこのエロ駄女神の言葉に乗っておこうと思う。
この後、エロ駄女神に襲われた。……襲われたと思いたい。
キスは間違いなく不意打ちの無理矢理だったもん!
その後は……一応抵抗したから、襲われた事にしとく! 自分の心の安定の為に……。
「どうかしましたか? 少し顔が赤い様ですが……」
おぅ、まだ少しエロ駄女神との余韻が残ってるのよ。戻すの早いわ、エロ駄女神め……!
「だ、大丈夫です。記憶を思い出したので……」
「──! それは良かったです。ファミレス様のお導きですね」
まぁ、確かにファミレス・エロ駄女神のお導きですね。
一応王女様に私が帝国のイミューズ公爵令嬢だと話した。誘拐の話しは飛ばして、公爵家に10年戻っていないと伝えている。
そして、今は王城の謁見の間でエンジ色のドレスを身に纏い、カーテシーの礼をしている。
「陛下には私の様な者にお時間を作って頂き恐悦至極でございます。帝国イミューズ公爵家、長女ユウナ・イミューズが挨拶させて頂きます」
一応これであってると思う。ソースは乙女ゲームだけど……。
「顔を上げよ。イミューズ嬢からの礼は受け取った。堅苦しい挨拶は此処までにしよう。
第3王女から話しは聞いている。災難であったな」
「ご心配のお言葉有り難く。記憶を失くした理由だけが思い出せずに詳細を説明できないことをお許し願います」
「構わんよ。して、我が国に何用で参られた」
「冒険者としての入国でございます。これに帝国の意思はございません」
「ふむ、そうであるなら王女の友人として歓迎しよう。ゆっくりとするが良い。
王女よ、場内を案内するなり部屋に呼ぶなりして接待せよ。夕食は共に取ろう」
陛下はそこで立ち上がり部屋から出ていった。陛下の隣に立っていたアイス王女が私に近付いてきた。
「ごめんなさいね、よく考えれば記憶が戻っていたなら陛下に会う必要なかったですよね」
「あっ、そう言えばそうですね」
私は客室を与えられ今日はそこで泊まる事になっている。
この後の陛下と王妃様、アイス王女との夕食はアイス王女のお転婆振りを聞かされ、笑いを堪えるのに必死だった。
次の日からは王城を出て王都のホテルに泊まっている。ストレージボックスの中には豊富にお金が入っていて、正直今泊まっているホテルに100年は泊まっていられる。
私が思っていた通り、この世界のインフラは私の前世の世界と変わりがない。違いを言うなら石油と電気、ガスがないことだろう。
電気の替わりは魔物から取れる魔石で補っている。電子レンジは無いが、冷蔵庫やコンロはある。コンロはいわばIH式で魔石を利用している。
一般家庭ではコンロはあまり使用されておらず、釜戸になっている。冷蔵庫はほぼ各家庭にあるらしい。
石油が無いのでガソリンが存在せず、車は無い。代わりに馬車と魔獣車が王都内を走っている。
上下水道は完備されていて、お風呂という習慣もある。各家庭とはいかないが、大衆浴場が存在していた。
ただ、マルコフが言っていた犬獣人や猫獣人はいるのに犬や猫はいない。
なのに狼は存在する。不思議だ……。
私は王都と言うより異世界観光をしながら、時折門を出て魔法を試したりしている。
この世界に来て1週間程経った今、私は初日に覚えた火属性の他にも水、氷、風、土属性の魔法もスキルとして覚えていた。
全て無詠唱なのは言うまでもない。
後、気配探知とクリーンの魔法はアイス王女から教わった。クリーンは冒険中にダンジョンに籠る時、女性には欠かせないスキルだと言われて覚えた。
身体や服を綺麗にする魔法なのは言うまでもないだろう。
貴族女性は他の魔法が使えなくても覚える魔法なのに私が覚えていない事を不思議がられた。どうやらトイレの後に使う為らしい。私はトイレに行かないけどね、お風呂の代わりになるのはありがたいよね。
その他にも避妊や生理の時に使われる。これも何となくわかるが、これも私には必要なかった。
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